第10話
放課後。
明は帰り支度をしていると、美咲が近寄ってきた。
「今日は、私、テニス部の見学していくから、先帰ってて~」
「あぁ」
「なんか言い方が淡白だね~。他に言うことないの??“待っててあげるよ”とかさ~」
美咲が睨んできた。返事が不満なようだ。
「別に中学の時一緒に帰ってたわけじゃないだろ~??それに、帰れって言ったの美咲じゃん」
「そうだけどさぁー……。もっと……こう、紳士的に」
「んなもん知るか。ほらほら、さっさと見学行った行った」
そう言って、手で追い払う仕草をすると、美咲は頬を膨らませた。
「いいよーだ!!今度明のお母さんに言っちゃうもん!!」
「それは卑怯だろ!!」
「何て言おっかな~♪」
「う………」
美咲はにやにやしている。勝ち目はなさそうだ。
「ほら、なんか言うことあるじゃないの、明君?」
「………テニス部の見学にいってらっしゃいませ。ここでお待ちしましょうか、美咲様?」
悔しそうに明が言うと、美咲の顔が勝利で笑顔になった。
「よろしいっ!!先に帰ってよし!!」
そう言って、美咲は荷物を持って、教室を後にした。
「はぁーー」
「明と松井さんって仲良いねー」
真平が話しかけてきた。前の席だから、一部始終聞いていたのだ。ただ、真平だけでなく、多くのクラスメートも二人のやり取りを見ていた。みんなまだ知り合いが少なく、教室は比較的静かなので、いやでも目についたのだろう。
「カップルみたいだよね」
由美も今の会話を聞いていて、真平と似たようなことを言った。
「ただの幼馴染みなんだけどなぁ、あいつは」
こう言ってみたものの、明は内心ではショックを受けていた。自分の好きな人に平然とそう言われたのだ。由美に間接的に、好意はない、と言われたようなものだ。
客観的に見れば、由美とはまだ知り合ったばかりだから当たり前ではあった。
気を取り直して、明は言った。
「真平ってどこ住んでるの?」
「俺?俺は大沢駅からバスに乗るんだ。ドアトゥドアで約30分くらいかな」
大沢っていうのは、ここら辺で一番発展しているところであり、学校から4駅で着く。ただし、明や美咲の最寄り駅である久住公園や、由美の最寄り駅である東久住とは、逆方向にあたる。
ちなみに、学校の最寄り駅は、風華駅であり、学校の名前の“風華学園”と一致している。
「え~、お前、大沢なんかに住んでるの!?いいな~」
「別にいいことなんかねぇって」
「そんなことないだろ~。・・・まぁいいや。俺は逆方向だけど、駅までは一緒だし。帰ろうぜ」
「おぅ」
明は真平と帰ろうとしたが、横に立っていた由美に気付いた。
明は迷った。昨日、一緒に帰ったのだから、今日も一緒に帰っても不思議ではない。むしろ、ここで由美を無視して帰る方が不自然だ。
だが、由美に話しかけるのは緊張するし、そもそも男二人と帰るのなんて、嫌がるのではないか。明はそう思っていた。
迷うこと約5秒。
真平に“どうした?”と声をかけられ、つい流れで口に出していた。
「白井さん、一緒に帰らない?」
由美は一瞬驚くような表情を見せたが、すぐに、うんっ!、と笑顔で答えた。
明はほっと胸を撫で下ろした。
寒いっ。
寒いっ。
外に出ると、必ず歯がガチガチなります。
春来ないかなぁ




