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突如現れる霊能力者

 前回まで、ナナシと会った際に聞いた話を中心に紹介したけど、「噂はどうやって広まるのか?」という雑話の中で、全国各地で突如現れる霊能力者に関する噂があった。

 今回は、その噂について私なりに調べてわかったことを中心に紹介する。


 この霊能力者について調べてみると、案外身近なところに様々な情報があった。

 一応、こちらの雑話とは切り離す形で伝えていなかったけど、私は他に個人ブログのようなところでもコラムを書いていて、そちらに読者が体験談などを投稿できるよう、掲示板がある。

 そちらの掲示板に、ナナシが話していたことと同じような内容の投稿がいくつもあったのだ。

 まず、その中から、五つの投稿を紹介したいと思う。


 一つ目は、IT企業で働くSの投稿だ。

 Sは昼食休憩の時、机に顔を伏せて昼寝をすることが多いそうだ。

 ただ、何がきっかけかわからないものの、目を閉じているにもかかわらず、突然目の前が真っ白になり、そのまま金縛りになることが増えたらしい。

 時には昼食休憩が終わっても金縛りが解けず、心配した同僚が無理やり体を揺すってくれたことで、何とか金縛りが解けたこともあった。

 そんな金縛りに悩まされていたSの前に、霊能力者を名乗る女性が現れ、背中をはらってくれたそうだ。

 その後、Sは金縛りになることがなくなったとのことだ。


 二つ目は、OLをしているHの投稿だ。

 Hは仕事から帰る度、嫌な思いをしていた。

 それは、家に帰ると、ドアに付けられた無数の真っ白な手形を見ることになるからだ。

 ストーカーや近隣住人の嫌がらせかと思い、警察に相談したものの、原因がわからず、Hの不安は大きくなっていった。

 でも、Hの前に霊能力者を名乗る女性が現れた後、そうした被害はパッタリ止まったそうだ。


 三つ目は、女子大生Iの投稿だ。

 講義を受ける時、Iはある女子生徒のことが気になっていた。

 その生徒は真っ白な服を着ていて、いつも一人だった。

 女目線でもキレイな人なのに、何で一人でいるのだろうかとIは疑問を持っていた。

 ある日の昼食時、友人にその女子生徒のことを聞いたけど、誰もそんな人など知らないという答えが返ってきてしまい、Iはおかしいなと不思議に思っていた。

 それから少しして、Iの前に霊能力者を名乗る女性が現れ、解決すると言ったそうだ。

 その後、例の女子生徒は消えてしまい、今も見ていないとのことだ。


 四つ目は、男子高校生Rの投稿だ。

 ある日の夕方、塾の帰りで自転車を走らせていると、電柱の陰に何やら白いもやみたいなものが見えた。

 最初はそこまで気にすることなく、横を通り抜けたけど、煙にしてはおかしいなと感じ、少しして振り返った。

 すると、白いもやはRを追いかけるように移動してきた。

 どうにか逃げようと、Rは自転車を加速させたけど、その途中で女性とすれ違った。

 もしかしたら、白いもやが女性に何か影響を与えるかもしれない。

 そう思い、Rが振り返ると、女性は白いもやに向けて手をかざした。それから少しして、白いもやは消えてしまった。

 何をしたのかと聞くと、その女性は自らを霊能力者だと言ったそうだ。


 五つ目は、女子中学生Oの投稿だ。

 学校の帰り、Oは白猫の遺体を見つけた。

 Oはかわいそうに思い、白猫の遺体を近くに埋めてあげた。

 しかし、それ以降、Oはどこからともなく聞こえる猫の鳴き声に悩まされることになってしまった。

 猫の鳴き声が聞こえているのはOだけのようで、周りの友人や家族に相談しても気のせいだと言われ、どうすればいいのかと途方に暮れてしまった。

 そんな時、学校の帰り道に霊能力者を名乗る女性が現れ、その女性がOの頭の上に手を置いた。

 それ以降、猫の鳴き声が聞こえることはなくなったそうだ。


 五つともよく聞くような話で、一見何の関係もないように感じるけど、これらには共通点がある。

 まず、怪異と思われるものがすべて白だということ。この白というのは、もはや「名前を付けられた怪異」を連想させる色だ。

 そして、霊能力者を名乗る女性が現れ、解決してくれること。また、霊能力者を名乗る女性は礼を求めることなく、代わりに「名前を付けられた怪異」に関する話をしてくるというのは、「噂はどうやって広まるのか?」という雑話でも書いたことだ。

 さらに言うと、全員がこの雑話を読んでいるという共通点もある。


 彼らは遭遇した怪異のことを、私が調べている「名前を付けられた怪異」に関係するものじゃないかと考え、投稿してくれたようだ。

 それと、霊能力者を名乗る女性についても「本物の霊能力者」と紹介している彼女なんじゃないかと考えているようだった。


 投稿を見た時、私も一瞬、彼女かもしれないと考えたけど、色々と調べてみて、それは違うんじゃないかといった方向に考えを改めた。

 というのも、時系列にまとめつつ、これらが起こった場所を調べてみると、東西南北メチャクチャな移動をしていることがわかったからだ。

 この時点で、彼女じゃないというより、一人の人によるものじゃないだろうと考えられるわけだ。

 ただ、特徴などがあまりにも一致しているので、まったくの別人と考えるのも不自然だ。

 もしかしたら、共通の目的を持った霊能力者の集団が全国に散らばっていて、今何かを解決しようとしている最中なのかもしれない。

 その霊能力者の集団の中に、彼女がいるかもしれないといった仮説は立てられるので、詳しく分析するのも大事だろう。


 私はこの件について、二通りの視点で考えてみた。

 一つは私の雑話が原因で、読んだ人が怪異にあっているかもしれないというものだ。

 これは以前「妙な音の正体」という雑話で紹介したけど、怪談を話したり、読んだりした時に怪異が引き寄せられ、何か不思議なことが起こるといった話がある。

 いわゆる、怪談が怪異を引き寄せるというもので、百物語などは、そのいい例かと思う。

 このことは本物の霊能力者と紹介している彼女も指摘したことで、だからこそ雑話に彼女のことを書き、対策してもらっていた形だ。

 でも、考えてみれば今は彼女と連絡が取れない状態が続いているわけで、果たしてどうなっているのかわからないともいえる。

 もし、彼女が指摘したようなことが改めて起こっているとしたら、その影響と考えるのは自然かもしれない。

 ただ、それを踏まえると、霊能力者を名乗る女性が現れて解決してくれるというのは、また何か別の考えを持たせる。

 それこそ、雑話を読んだことが原因で、怪異が生まれてしまった時、霊能力者を名乗る女性の怪異が現れて、解決してくれているかのようだ。

 怪異が怪異を除霊するなんて話を聞いたことはないけど、そんなことありえないという根拠もないし、一考の余地はあるかもしれない。


 もう一つの視点は、そもそもの話として、すべて関係のない事象であるにもかかわらず、何かかかわりがあると勘違いしているというものだ。

 これだけ共通点があるのに、何を言っているのかと思われそうだけど、実際のところ、今回紹介した五つの投稿は、異なる点も多い。

 先述した通り、日時と場所はバラバラだし、体験者の年齢や職業も異なる。

 怪異そのものも白という色の共通点があるけど、姿に関しては、人や猫、もやといった形で、これまた異なる。

 ただ、体験者はみんな私の雑話を読んでいたので、この雑話で繰り返し話題にあがる「名前を付けられた怪異」と関連付けてしまった可能性があるわけだ。

 こちらの説だと、そもそもで怪異は存在したのかという疑問も生まれてくる。

 例えば、自分も「名前を付けられた怪異」に遭遇するんじゃないかといった考えから、何か別のものを怪異だと錯覚したのかもしれない。

 金縛りは以前も書いたけど、科学的根拠として夢のようなものとされているから、目の前が真っ白になるというのはそこまで不思議じゃない。

 ドアに付けられた真っ白な手形や、大学で見かけた女子生徒の話などは、詳しいことを調べてみないとわからないけど、これらは現実に存在する怪異と別の何かだった可能性がある。

 白いもやとか、猫の鳴き声などは、気にし過ぎたことによる幻覚というと、少々乱暴だけど、実際のところ変なものが見えたり聞こえたりする際は、多くが幻覚や錯覚とされている。

 幻覚や錯覚だとすると、そうした問題を解決してほしいといった願いから、霊能力者を名乗る女性という幻覚も生み出した可能性がある。

 何でもかんでも幻覚といってしまうと、もはやすべての怪異が否定されてしまうわけで、かなり邪道だけど、一応こんな説も立てられるということで書かせてもらった。

 ただ、あまりにも乱暴なので、霊能力者については先述した通り、全国各地に散らばる共通の目的を持った集団という説を推したい。


 今までは、点と点を線で繋げるように、これらの話を関連付けて考えることしかしなかった。

 でも、ナナシから別の視点を持つように言われたこともあり、あえて関連付けない説も書いてみた。

 元々意識していたつもりだけど、様々な視点を持つというのを改めて意識するのは確かに重要だと感じた。


 一応、私は今回紹介した五つの投稿と「名前を付けられた怪異」は関連があると考えている。

 でも、その考えだけでなく、別の考えも持つことで、より冷静に分析しやすくなった気がする。

 最近の私はどうも視野が狭くなっていたのか、それこそナナシの言葉を借りれば、洗脳されていたということかもしれない。

 私自身、混乱するようなことも起こっていたし、ここで一息落ち着きたいと思う。


 そんな雑話でした。

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