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神は存在するのか?

 前々回から引き続き、今回もまた、知り合いのオカルトライターであるナナシから聞いた話を紹介する。

 といっても、今回は私の方から「神は存在するのか?」という質問をしてみた際、聞いた話になる。


 前回ナナシがしてくれた洗脳の話を受けて、私は宗教を連想していた。

 こういった言い方をすると反感を買うかもしれないけど、宗教というのも一種の洗脳といった話がある。

 実際、信仰心の強い信者が、宗教から離れようとしている他の者を無茶な手段で妨害したり、他の者を無理やり宗教に入れさせようとしたりといったことが事件として扱われるケースもある。

 それだけでなく、以前も雑話で書いた通り、サリン事件を起こした宗教団体の話など、一部とはいえ過激な思想から大きな事件を起こす者もいる。


 これらの事件は、信仰心が強く、いわゆる神と呼ばれるような存在を信じている人によって起こされている場合がある。

 この時、洗脳されていたなんて話も聞いた記憶があるし、前回ナナシが話した通り、信じることで洗脳されやすくなるケースの一つなのかもしれない。

 ただ、この場合は絶対的な存在である神を信じているわけで、相当深い洗脳状態に陥る危険がある。

 例えば、日本だとあまり馴染みがないけど、神のために生贄を捧げろなんて洗脳されて、自爆テロのようなことを起こしてしまった人の話などは世界中で実際にあることだ。

 そうしたことを思い返していた時、冒頭に書いた「神は存在するのか?」という疑問が浮かんだ。


 私は無宗教だし、基本的に神というものは信じていない。

 でも、「嘘が作り出した怪異」という雑話で書いた通り、実際には嘘であっても、多くの人が存在すると信じた時、怪異が生まれてしまうといった説は知っている。

 それを踏まえると、多くの人が信じている神というのは、何かしらかの形で存在していると考えることもできる。

 ただ、それは絶対的な存在であり、時には自らの願いを何でもかなえてくれる存在でもあるので、影響力はとんでもないことになってしまう。

 そうした考えもあるので、私はやはり神が存在するのかどうかというと、否定的な考えになってしまう。


 そんな話をしたうえで、ナナシの意見を聞いてみた。

 ナナシも無宗教みたいだし、恐らく私と同じような考えだろうと思うけど……というのは、もうやめよう。

 ナナシが私と違う視点や考えを持っているということを私は十分理解した。

 だから、ナナシは私と同じ考えじゃないだろうし、またどんな変わった話が聞けるだろうかといった方向に頭を切り替えた。

 そうしたのは、結果的に正解だったようで、ナナシの考えは、やはり私と違った。


 まず、私や多くの人が考えている神とは違うけど、神は存在するというのがナナシの考えらしい。

 この時点で、私はナナシが何を言っているのか、まったく理解できず、何のリアクションも取れなかった。

 そんな私を見て、ナナシは笑った後、順に説明してくれた。


 ナナシが小説も書いているという話は、前々回の雑話で伝えたことだ。

 小説家というのは、基本的に現実とは違う世界を想像して、それを物語にしたうえで読者に届けるという仕事だ。一応、事実をそのまま小説にしたり、事実を基にしたフィクションというのもあったりするので、「基本的に」と書いたけど、実際はほとんどの小説が現実と違う世界を舞台にしている。

 そして、小説を読む人も、小説に書かれていないことを想像したり、もしもあの時こうなっていたらといったifの世界を想像したりする。


 こうして人が何か世界を想像する時、その人の中で世界は創造される。

 それは空想の世界というものだけど、その世界に生きる人にとってそれが自分の世界なわけで、その人達にとって神というのは、その世界を想像=創造した人ということになる。

 ナナシ曰く、「想像」と「創造」は、どちらも「そうぞう」と読めるけど、そのことを単なる偶然と思えないそうだ。

 日本語だからこその話だけど、ナナシは「想像」しただけで「創造」できるといったことを冗談のように言った。


 そこで、ナナシは真面目な態度でこんな話をした。

 神なんていないと言う人は、不幸な人が多い。

 もしも神がいるなら、世界中の人を幸せにするはずなのに、自分は不幸だ。だから、神なんていない。

 こんなことを言う人を私も見たし、もしかしたらこれを読んでいる人の中にもこんな考えを持つ人がいるかもしれない。

 ただ、ナナシは今現在、全員が幸福になれていないことが、神がいるかもしれないと思う根拠だと言った。

 それは、ナナシが小説を書く時、全員が幸福になる話を書いても絶対につまらないから、そんな世界を想像するわけがないと言ったのだ。


 言われた瞬間、私はナナシの言葉をまったく理解できなかった。

 でも、ナナシが何を言っているのかと冷静に整理していった時、私にも理解できた。

 そして、やはりナナシは私と違う視点や考えを持っていると改めて認識した。


 ナナシは、私達がいるこの世界が、誰かの想像=創造した世界じゃないかと考えているそうだ。

 厳密に言うと、その可能性もあるといったぐらいのニュアンスらしいけど、そんな発想が一切なかった私としては、相変わらず理解に苦しむ話だった。

 ただ、こうした話を受けて、ナナシが私と違った視点や考えを持っている理由については、何となく理解できた。

 ナナシの視点や考えは、いわゆる神の視点や考えと言われるものに近いのだろう。

 ナナシは、この世界から一歩引いて、それこそ自分自身すら登場人物の一人であるかのように物事を見ているようだ。


 ちなみに、ナナシによると、この世界はどういったものかという仮説の中に「世界五分前仮説」というものがあるらしい。

 それは、哲学的な思考実験の一つとして提唱された、以下のようなものだ。


 この世界が五分前に始まると同時に、生物や無生物、さらには記憶など、あらゆるものが突然出現した。このことを否定することは誰もできない。たとえ五分以上前の記憶を持っていたとしても、それは五分前に植え付けられた偽りの記憶かもしれないからだ。


 何とも突拍子もない説だけど、小説や漫画、アニメやドラマにゲームまで、すべてこの世界五分前仮説そのものだとナナシは言った。

 それは確かにその通りで、小説を読み始めた瞬間、そこから物語=世界は始まるわけで、それこそ世界一瞬前仮説ということすらできる。

 そして、この世界が、例えば小説として書かれたものだと言われたところで、それを否定することは難しい。

 ただ、肯定する気もまったくなく、あくまでこんな話があるといったぐらいにしか受け取ることができなかった。


 実際のところ、ナナシ自身も私と同じで、先述した通り、その可能性もあるといった程度の考えらしい。

 ただ、頭の片隅にこうした考えを置いておくと、物事を違った視点で捉えられるようになるといった、軽い助言をもらった。

 それは確かにそうかもしれないと感じたし、私なりに実践してみてもいいかもしれない。


 そこで、ナナシはもう一つ神に関する話として、こんなことを言ってきた。

 それは、カメオ出演といった形で、作者が作品の中に登場することがあるけど、この時、作品の中の世界としては、神が降臨している状態と捉えることができるというものだ。

 ただ、こうした作品の中で神が何か大きなことをしたら、作品自体がメチャクチャになってしまうので、神はどこにでもいる一般人と同じく、ただいるだけで終わるのがほとんどだ。


 これを踏まえて、たとえ神に出会ったとしても、一般人のようにただいるだけだろうから、恐らく気付かないだろうなんてことを冗談っぽくナナシは言った。

 私もその通りだと思うし、同時にどこかで会話でもしてくれていたとしたら、それはそれで何だか面白いというか、急に神というものが身近な存在であるかのように感じてしまった。

 ただ、同時にナナシは少し怖い部分もあると、妙な脅し口調で言った。


 例えば、ナナシは様々な小説を書いていく中で、当然ボツにしたものもあるそうだ。

 その作品を一つの世界と捉えた時、ある日突然時間が止まったかのようになるわけだ。

 あるいは、どうにか形だけでも終わらせようとするなら、神を降臨させて世界を消滅するなんてことも簡単にできるわけで、実際にそんな結末を最後に付け加えてからボツにした作品もあるそうだ。

 そういった形で、その世界にとっての作者は何でもできる絶対的な存在であり、神そのものだ。

 だから、もしもこの世界が誰かの創造した世界だとしたら、神が飽きずに世界を創造し続けてくれることを願いたいと、ナナシは言った。


 とりあえず、私は相変わらず、そんな話もあるという程度にしか考えていないので、ナナシの言うことは話半分で受け止めた。

 一つ思ったことといえば、みんなが幸福だと絶対つまらないから不幸にするとか、ボツにするから世界を消滅させるとか、そんなことをするナナシみたいなのが、この世界の神じゃないことを願いたい。


 さて、数回にわたり、ナナシと会って話したことを紹介させてもらったけど、今回で終わりになる。

 正直言って、理解に苦しむ話ばかりだったけど、逆にそんな話を聞いたからか、今調べている「名前を付けられた怪異」に関する情報などは私なりに整理できてきた。

 またわかったこともあるし、引き続き、そちらの方を調べていきたいと思う。


 そんな雑話でした。

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