猫の怪異
前々回から動物霊の話を書かせてもらっている。
なので、今回は「猫の霊」……としようとしたけど、「猫の怪異」というタイトルにさせてもらった。
統一しろと言われそうだけど、ご了承願いたい。
これまでは、狐や蛇といった、あまり馴染みのない動物に関する怪異的な話をしてきた。
それらと比べると、猫というのは多くの人にとって馴染みのある動物かと思う。
ペットとして飼う人がいるのもそうだけど、外へ出かけた時に野良猫を見かけるといったことも多いし、それだけ身近な動物といえる。
そんな猫に関する言い伝えのようなものは、たくさんある。
有名なところだと、黒猫が目の前を横切ると不吉だといった迷信だ。
この迷信は多くの人が知っていて、黒猫を見かける度に何か嫌な気分になったり、黒猫を避けたりする人もいるかと思う。
中には、不吉だからという理由で黒猫をいじめる者もいるそうだ。
でも、日本で黒猫を不吉なものだというようになったのは、比較的最近のことだというのはご存じだろうか。
それどころか、昔は黒猫のことを縁起の良いものとしていて、「福猫」だなんて呼ぶ人もたくさんいたのだ。
これは昔だけの話というわけじゃなく、現在でも言われていて、こちらを信じている人からすると、黒猫が横切ったり、近付いてきたりするのは幸運の兆候だなんて思われているそうだ。
何でこんな真逆の迷信が混在しているかというと、ヨーロッパなどを中心に広まった魔女伝説が影響しているとされている。
中世のヨーロッパでは、魔女が恐れられていた。そして、魔女狩りという、魔女に対する処刑がたくさん行われた。
ご存知の方もいるかと思うけど、魔女狩りは何の罪もない普通の女性を魔女として処刑していたという、決して許されない行為だ。
でも、当時は何か災いがあった際に魔女の仕業だと考える人が多く、恐怖や疑心暗鬼から普通の女性を魔女と決め付け、処刑していたわけだ。
それも一人や二人とかでなく、数万人もの人が犠牲になったというから、信じられないという人も多いだろう。
この魔女狩りが行われていた際、女性だけでなく多くの黒猫も処刑されている。
これは、黒猫が魔女の使い魔、あるいは魔女が化けた姿だとされたからだ。
魔女と黒猫が一緒にいるといったイメージは、某映画などを中心に日本でも広がったので、多くの人が持っているかと思う。
こうしたことから黒猫が不吉なものといった迷信がヨーロッパ中で広まり、それが日本にも伝わった結果、今の状態になっているわけだ。
でも、現在では魔女狩りが誤りだったと判明しているわけだし、そうなると昔から日本で言われていた黒猫は縁起の良いものだという考えの方が、むしろ正しいんじゃないかと思えてくる。
だからというわけじゃないけど、私の家には最近よく黒猫が遊びに来るので、その度に餌をあげたり、時々体を洗ってあげたりしている。
ある日、窓を開けていた時に勝手に入ってきて、何となく餌をあげたら懐いてしまい、そんな状態になっているわけだけど、元々黒猫が不吉だなんて迷信を信じていなかったし、ちょっとした癒しの時間として大切にしている。
私は取材などで家を空ける日も多いし、ペットを飼いたいと思っても飼えない人だから、気ままに遊びに来てくれる黒猫の存在は嬉しい。
それに黒猫は魔除けになるなんて話もあるそうで、関係ないかもしれないけど、ちょっとした効果のようなものを実は感じているところだ。
雑話では書いていなかったけど、部屋で妙な物音が鳴るといったことが少し前まで頻発していた。
以前「妙な音」という雑話で話したのと同じような音だけど、その時以上に大きな音が頻発していて、時には寝ていても起こされてしまうほどだった。
こういった現象が起こり始めたのは「真っ白な顔」という雑話を書いた後ぐらいからで、本物の霊能力者と紹介している彼女とも連絡が取れない状態が続いているので、どうしたものかと悩んでいた。
そんな時、黒猫が遊びに来るようになり、何となく相手をしていたらピタリと音が鳴らなくなったのだ。
単なる偶然かもしれないけど、おかげでぐっすり眠れるようになり、大変助かっている。
ちなみに、猫というのは昔から人々に馴染みのある動物で、だからこそ様々な怪異的な話がある。
これは猫の特徴も関係している。
例えば、猫は夜になると目が光るというのはご存知だろう。
夜、真っ暗な道を歩いていると、ギラリと目を光らせた猫がいた。
これだけで、怖いと思う人が一定数いるかと思う。
時には落とした小銭を拾おうと車の下を覗き込んだ時、そこに目を光らせた猫がいたなんて話もあり、もはやホラーそのものだ。
そうしたことから、猫には何か不思議な力があるんじゃないかといった考えを昔から多くの人が持っていて、それが今も残っているのかと思う。
前述したとおり、ヨーロッパで黒猫が不吉な存在だとされたのも同じことだろう。
日本では、そうした不思議な力があるといった考えから、「猫又」と呼ばれる怪異の話がある。
猫又というのも諸説色々とあるけど、今回は長く生きたことで猫が妖怪化したものについて話したいと思う。
長く生きた人を敬うべきだといった考えが基かと思うけど、長く生きた人は時に不思議な力を得ているんじゃないかといった考えを持つ人は結構いるかと思う。長老や仙人と呼んで、どこか特別感を出すなんていうのも似たようなものだろう。
それが猫に対しても同じように考えられていて、長く生きた猫は何か不思議な力を得ているだろうといった言い伝えが古くからある。
そうして不思議な力を得た猫というのは、もはや妖怪なわけで、それが猫又と呼ばれる存在になっている。
猫又の特徴としては、尾が二股になると言われている。
いわゆる化け猫と呼ばれるものと同一視されることもあり、人を食らうことがあるといった話も存在する。
また、猫は亡くなる直前に見た人を呪うといった話もある。
車にひかれて亡くなってしまった猫の姿を見たことがあるという人は多いだろう。
あれだけ素早く動ける猫が、何故車にひかれてしまうのかといった話も諸説あるけど、身近な猫の死体を見て、いい気分になる人は恐らくいないだろう。
そうして亡くなってしまった猫が、霊となって最期に見た人を呪うといった話があり、この話を信じる人からしてみれば、猫は怖い存在なんだろうと思う。
ただ、私は動物好きで、猫や犬を飼いたいと思っている人間なので、猫に対して恐怖とか否定的な考えを持ちたくないとも思っている。
これは人それぞれで違うことなので、あくまで私の考えとして受け取ってほしい。
それこそ極端に表現すると、猫の霊には殺されてもいいとか、そう思えるぐらい好きなので、猫を危険な怪異だなんて書けるわけがないのだ。
だから、今回はかなり猫に良心的な話しか書いていないわけだ。
そういえば、先述した私の家に遊びに来る黒猫は結構な歳みたいで、それこそ猫又になっていてもおかしくないぐらいの年寄りみたいだ。
でも、私にとっては恐怖の対象になるわけがなく、癒しそのものでしかない。
ちなみに、飼っているわけじゃないから、名前を付けるのはどうかなと思いつつ、この黒猫に「クロ」って安直な名前を付けた。
実はこの雑話を書いている時、クロが遊びに来ていて、今なんて体をすりすりとしてきてくれているところだ。
動物に関する怪異を三回にわたり書いてきたけど、私が最後に言いたいことは一つだけだ。
皆さん、動物を大切にしてほしい。
そんな雑話でした。




