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蛇の霊

 前回から引き続き、今回も動物霊の話をしたいと思う。

 今回紹介するのは、「蛇の霊」に関する話だ。


 蛇というか、爬虫類が嫌いだという人は一定数いるようで、私もできれば避けたいと思う一人だ。

 見た目が怖いとか、表面のヌメヌメした感じが気持ち悪いとか、そんな嫌悪感を持ってしまい、どうも蛇は好きになれない。

 ただ、嫌いだからといって蛇を粗末に扱ってはいけないそうだ。

 特に日本では、蛇を大切にするべきだといった言い伝えが遥か昔からあるらしい。

 具体的にいうと、例えば家の庭で蛇を見つけた時、気持ち悪いからと殺してしまった場合、不幸になるといった話は有名だ。


 こうした話は多くあるけど、その原因に関しては、異なる見解が語られることがある。

 一つは、蛇の霊が恨みを持ち、一種の呪いのような形で自らを殺した人を不幸にするというものだ。

 蛇は元々生命力が強く、そのことから執念深いとも言われている。

 そんな蛇が殺されたことで恨みを持ち、呪いをかけるとなれば、それはそう簡単に解けない危険な呪いになってしまう。

 時には標的が死ぬまで、執念深く呪い続ける場合もあり、そうなると死の運命から決して逃れられないそうだ。

 これが蛇を殺したら不幸になると言われる原因の一つだ。


 その一方で、蛇を守り神の一種と捉えた説も存在する。

 前回話した狐同様、蛇も神の使いとされていて、それが蛇を粗末に扱ってはいけない理由とのことだ。

 また、蛇が家の庭などに現れた場合、それは幸運をもたらすとされ、時には強い生命力によって周りからくる不幸を退けてくれるとも言われている。

 こうした話を踏まえると、蛇を殺してしまった後、不幸になるのは、殺した蛇が原因というわけじゃなくなる。

 守り神として不幸から守ってくれていた蛇を殺してしまったことで、様々な不幸に見舞われるようになってしまったという解釈になるわけだ。


 やってしまったことと、その後起こったことは同じなのに、まったく違う原因が考えられる。

 これは今回に限らず、オカルト全般でよくあることだ。

 ただ、蛇に関しては特に解釈の違いにより、異なる影響が出るといった話が多いように感じられる。


 例えば、昔話の「手負蛇ておいへび」という話がわかりやすいので、紹介しよう。

 遊んでいた時に蛇を見つけた子供達が、その蛇を細切れにして串刺しにするといったひどい殺し方をした。

 すると、丁度そこを村長が通りがかり、蛇を粗末に扱うなんて縁起が悪いといったことを思ったそうだ。

 その晩、村長の枕元に蛇の霊が現れ、それから村長は病気で苦しむことになった。

 その後、村長は何とか回復したそうだけど、随分と長い期間、病気で苦しんだそうだ。

 一方、蛇を殺した子供達は特に何の病気にもかかることなく、いつもどおり元気に過ごしていたらしい。


 村長は、蛇が殺されているところを見ただけで、直接蛇を殺したわけじゃない。ただ、蛇を粗末に扱ってはいけないという言い伝えをあらかじめ知っていたのだろう。

 子供達は、蛇をひどい手段で殺した。それは、蛇を粗末に扱ってはいけないという言い伝えを知らなかったからだろう。

 結果、呪いを受け、病気になったのは村長の方だったわけだ。

 つまり、この話は恐れることによって呪いを自ら呼んでしまう危険があるということを示していることになる。


 これまでも呪いに関する話を、いくつか紹介してきた。

 その中で、呪いというのは呪いをかけられることに本人が気付くことが重要だと話した。

 この手負蛇という話は、それをまた裏付ける話なのかもしれない。


 また、蛇は伝説の生物である龍をイメージさせる。

 これは元々蛇を基に龍の姿を創作したからじゃないかといった説もあれば、蛇が進化したものが龍だといった説もあり、実際のところ、どうかはわからない。

 ただ、姿形が似ているわけだし、何かしらか深い関連があるのだろうということは容易に想像できる。


 龍というのも神格化されているというか、神の一種とする考えが多いように感じる。

 龍神なんて言葉もあるし、それこそ某漫画だと願いをかなえてくれる存在として龍が出てくる。

 もしかしたら、何かしらか関連があると思われる龍が神格化されているから、それによって蛇も神格化されているという解釈もできるかもしれない。


 ただ、時には龍が退治するべき対象になっているという事実もある。

 例えば、RPGなどで龍――ドラゴンが敵モンスターとして登場して、退治するべき対象となることはある。

 日本神話でも、ヤマタノオロチという八つの頭と尾を持った怪物が登場して、それは蛇、あるいは龍の怪物とされている。そして、このヤマタノオロチはスサノオノミコトによって退治されたと伝えられているのだ。

 とはいえ、これは人の可能性に夢を持ってほしいと考えた人々によって作られたものと思われる。

 本来なら人が太刀打ちできない、神に近い存在を退治することができた。それを伝説として伝えることで、どんな困難にも立ち向かってほしいといった願いがあるんじゃないだろうか。

 そう考えると、その退治するべき対象が蛇や龍を基にした怪物というのは、これ以上ない敬意を持っているからこそというわけだ。


 前回、狐も神の使いとして、大切にされていると話した。

 でも、蛇はそれ以上に大切にされているというか、深い信仰が昔からあったんだろうといったことがよくわかる。

 これには、毒を持つ蛇の存在を恐れて、遠ざけようといった意図もあったかと思う。

 ただ、結果として蛇が時に神格化されるほど、大切にされているわけだ。

 そうした背景があるからこそ、悪意を持って蛇を扱う場合、それは危険なものになる。

 例えば、呪いの道具に蛇を用いた場合だ。


 繰り返しになるけど、本来蛇は大切にされるべき存在だ。

 それを知ったうえで、呪いの道具として蛇を用いる。

 この時点で、呪いをかけられた人じゃなくて、呪いをかけた人に何か災いがあると考えた方が自然だ。

 でも、それを承知のうえで、蛇を用いた呪いをかけようとする人が時々いるそうだ。


 これについて、具体的な手順はあまり関係ない。

 とにかく、標的にかける呪いに、生命力が強く、執念深く、時に神格化される蛇の力――むしろイメージを加えたいというだけだ。

 呪いをかける際に蛇の死体を一緒に置いておくとか、さらには標的にその蛇の死体を送りつけるとか、手段は様々で、私も正直まとめ切れなかった。

 ただ、蛇を用いた呪いを行ったことがあるという人物に会い、直接話を聞く機会が以前あったので、その時に聞いた話を紹介しよう。


 その人は元サラリーマンのWで、上司のパワハラに悩んでいた。

 普段から無能と罵倒されて、何の仕事も回されずに放置されていると思ったら、定時直前に資料作りの仕事を振られて残業させられてしまい、何とか完成させると、他の同僚があらかじめ作ってくれた資料を使うと一蹴されるなど、かなりひどいパワハラを受けていたらしい。

 さらには何かにつけて注文をして、休日出勤を強要されることも多かった。

 そんなにひどいなら、もっと上の人に相談するなり、仕事を変えるなりすればいいと思う人もいるだろう。

 ただ、人は追い詰められれば追い詰められるほど、正常な判断ができないものだ。

 Wは端から見たらひどい状況なのに、それを受け入れて何とか頑張ろうとしてしまった。


 そんなある日、Wの母親が病気になり、余命あとわずかだろうといった状態になってしまった。

 既に父親が亡くなっていたし、Wにとって母親は当然大切な人だ。

 でも、仕事に追い詰められたWは母親との最期の時間じゃなくて、パワハラを繰り返す上司との無駄な時間を優先してしまった。

 その結果、母親の死に目すらWは会えなかった。


 母親が亡くなれば、葬式などをする必要があるわけで、さすがに仕事優先にできないとWは数日だけ仕事を休んだ。

 休んだといっても、母親の葬式などをするために数日休んだというだけで、W自身は休むどころか多忙なままだった。

 でも、仕事に戻った時、上司からかけられたのは、無能なくせに休むなといった罵倒だった。


 これまで追い詰められても、Wが何の文句も言わずに従っていたのは、母親からの言葉のおかげだ。


「良いことをすれば、それは自分に返ってくる。努力や我慢はいつかきっと報われる。みんな悪いものじゃなくて、良いものと捉えるべきだ」


 そうした母親からの言葉をWは何よりも大切にしていた。

 だから、母親が亡くなった時点で、すべてが壊れてしまった。


 Wの母親は信仰心も強い人だった。

 その中で、蛇を大切にするべきという話は特にたくさん聞いてきた。

 というのも、Wは蛇が大の苦手で、なるべく近付かないようにしていたからだ。

 そうした話を思い出し、Wは蛇を用いて上司に呪いをかけてやろうと行動してしまった。


 話を聞く限り、呪いの手順はデタラメだった。

 ただ、何匹もの蛇を殺して、これは上司のせいだから上司を呪えと強く願ったそうだ。

 とはいえ、Wの念が強かったからか、呪いは成就してしまった。


 上司は家族旅行をした際、事故にあったそうだ。

 当時はバスを利用していて、両親に妻、娘と息子といった近い人だけでなく、親戚一同といった感じで移動していたらしい。

 それが事故にあい、生き残ったのは上司だけだったそうだ。


 死ぬよりも残される方が辛いという言葉はよく聞くけど、Wは母親が亡くなったことでそれを実感した。

 それ以上の悲しみを、上司は体験したわけだ。

 Wは上司が事故にあったという話を聞いただけで、そこまで詳しいことは聞かなかったそうだ。

 というのも、その後すぐに上司は会社を辞めて、それ以来会うことがなかったからだ。


 呪いが成就したわけだけど、Wは幸せそうじゃなかった。

 むしろ、不幸そのものといった感じだった。

 上司がいなくなったものの、Wは結局仕事を辞めてしまい、これまで貯めたお金と、母親の遺産を消費しながら、ただただ生きているといった状態だった。

 一応、今回の雑話を書く際、Wに連絡してみたけど、既に使われていない番号だと返ってきた。

 あれからそれなりに経ったけど、Wが今頃どうしているか、残念ながら一切見当がつかない。


 以前「恐怖と霊感」という雑話で、人は誰しも、自分に悪影響を与えるものを避ける性質があると話した。

 だから、何か嫌だと感じるものを避けるべきなわけだ。

 それなのに、Wは自分が嫌だと感じる蛇を用いた呪いを行ってしまい、その結果、自分も相手も不幸になった。

 ただ、それだけ追い詰められていたということもわかるし、私はWを責めることができない。


 前述したとおり、様々いる動物霊の中でも、蛇の霊というのは、特に神格化されているように感じる。

 昔から様々な言い伝えがあるわけだし、それだけ危険であり、できればかかわるべきじゃない怪異なのだろう。

 皆さんも蛇を見かけた際は、決して粗末に扱わないでほしい。


 そんな雑話でした。

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