狐の霊
またちょっとしたネタに戻ろうということで、今回から数回に分けて、動物霊の話をしたいと思う。
動物霊というのは字のごとく、動物が霊体化したものだ。
まず、ペットを飼っている人は特にわかると思うけど、人と動物は違うものだ。
多少の意思疎通はできるけど、言葉を交わせないから、お互いに相手が何を考えているかというのを完全に理解するのは困難だ。
だからこそ、動物が霊体化した動物霊というのも、人の幽霊とは違った危険があると言われている。
人の幽霊であれば、多少の意思疎通ができたり、それこそ会話もできたりするそうだ。
もっとも、これについては人によるというか幽霊によって違うので、中にはまったく意思疎通ができないものもいるらしい。
とはいえ、割合としては何かしらかの意思疎通ができるものが多いと言われている。
でも、動物霊が相手だとそうもいかない。
まともな会話すらできないまま、霊障にあってしまう可能性が高く、場合によっては人の幽霊よりも危険だと言われているのだ。
さて、様々な動物霊がいる中で、今回は「狐の霊」というタイトルにさせてもらった。
狐という動物は珍しく、もしかしたら見たことがないという人もいるかもしれない。
でも、怪異やオカルトという部分だと、意外と皆さんの身近に色々と存在している。
例えば、狐の石像が置かれた神社に行った経験はないだろうか。
その神社は稲荷神社という、稲荷神を祀る神社だ。
稲荷神は、元々農業の神とされていたのが、後に産業全体の神ともされているものだ。
ちなみに、狐が神の使いだとされているので、稲荷神社には狐の石像が置かれているというわけだ。
神の使いとされている動物は狐だけじゃないけど、稲荷神の使いは狐とされるのが一般的なようだ。
また、最近はご時世的に厳しいかと思うけど、多くの人が行く祭りというのは、元々神を祭る儀式のようなものとされている。
無宗教の人からすれば、ただ屋台の食べ物を食べたり、お酒を飲んだりするものが祭りと思っているかもしれないけど、実は違うというわけだ。ちなみに、私は屋台の食べ物が衛生的にあまり良くないという話も知りつつ、とにかく食べ歩きすることに全力を注ぐ罰当たりだということを一応言っておく。
話が逸れたけど、神を祭るものが祭りなので、気を向けてみると様々な形で神の使いである狐を見ることができる。
わかりやすい例として、狐のお面と言えば、どんなものか想像できる人は多いかと思う。
時には神楽という、神を奉る儀式のようなもので狐のお面を被った人の姿を見たという経験もあるんじゃないだろうか。
狐のお面――狐面は一部に人気なのか、通販サイトなどでも販売されている。
購入する人は、単にデザインが気に入ってということだと思うけど、元々狐面は稲荷神などを象徴するものだ。
なので、狐面に魅力を感じて購入した人は、知らず知らずのうちに稲荷神を信仰したということになるわけだ。
こうした形で、狐は神の使いとして、特別な扱いを受けている。
一方、昔話などだと、狐は危険な怪異の一つとして描かれている。
ことわざで「狐につままれる」なんてものがあるけど、これは昔話などにある、狐が人を化かすといった言い伝えが基になっている。
それだけでなく、狐の霊に憑かれることを「狐憑き」というけど、これは他の動物だとあまり聞かない言い方だ。少なくとも、私は「猫憑き」とか「犬憑き」なんて言葉を聞いた記憶がない。
海外でいうところの「悪魔憑き」が、日本だと「狐憑き」と表現されることもあり、これは悪魔と狐を同等のものとして扱っていることになる。
つまり、こちらの解釈だと、狐は危険な怪異ということになるわけだ。
ちなみに、以前「コックリさん」という雑話の中で、催眠状態の危険性を中心にコックリさんにまつわる話を紹介させてもらった。
実はこのコックリさんは、動物霊を呼び出す可能性があるとされていて、特に狐の霊を呼び出すことが多いといった話がある。
これについては様々な話があり、まず「コックリ」を漢字に変換すると「狐狗狸」になるのだ。
あまり馴染みのない漢字もあるので、読み仮名を付けると、狐と狗と狸を併せて、狐狗狸としている形だ。
狐狗狸という字は当て字のようだけど、様々な動物の漢字を併せたのは、コックリさんが動物霊を呼び出す可能性があるということを示唆してのことかもしれない。
ただ、それならどうして狗や狸ではなく、狐の霊を呼び出すことが多いのかという話になる。これについては、私の個人的な見解になるけど、コックリさんに対して人が持っているイメージが関係していると考えられる。
こちらについては、具体的な話があるので、そちらを紹介しよう。
これは、当時女子高生だったFが、友人達とコックリさんを行った時のことだ。
Fは事前にコックリさんについて色々と調べていて、動物霊を呼び出す可能性があるといったことを知っていた。
それだけでなく、何となくコックリさんの姿として、狐の姿をイメージしていたようだ。
コックリさんを始めた直後、Fは何だか気分が悪くなり、思わず目を閉じた。
その直後、何だか頭の中に狐の姿が思い浮かび、そこでFの記憶は途絶えたそうだ。
それからどれぐらいの時間が過ぎたのか、Fは保健室のベッドで目を覚ました。
友人によると、コックリさんを始めた直後、Fは錯乱した様子で暴れ回ったそうだ。
同級生の男子達が止めてくれたのと、霊感の強い女子がすぐに除霊してくれたおかげで、幸い怪我人などはいなかったそうだけど、そうじゃなかったらもっと大事になっていただろう。
これに懲りて、Fだけでなく周りの人もコックリさんをやることはなくなったそうだ。
以前、「スクエア」や「生き人形遊び」といった降霊術を紹介した際にも話したけど、コックリさんを含め、未完成な降霊術はどんな怪異を呼び出すかわからないという危険がある。
そんな中、Fはコックリさんのイメージをある程度強く持っていたので、そのイメージのまま怪異を呼び出し、自らに憑かせてしまったのかもしれない。
そのイメージというのが、狐の姿をした怪異だったわけだ。
恐らく、コックリさんの姿をイメージする際、狐の姿を思い浮かべる人は多いと思う。
ホラー作品などでコックリさんを描く際も、狐の姿がよく使われているし、尚更その傾向は強いだろう。
だからこそ、コックリさんは動物霊の中でも、特に狐の霊を呼び出しやすいというわけだ。
さて、今回紹介したとおり、狐というのは普段あまり馴染みがない、珍しい動物だ。
でも、怪異やオカルトでは時に神の使いとして扱われ、またある時には人を化かす危険な怪異として扱われるなど、様々な形でかかわっている。
そうした他の動物霊とは異なる扱いがされているあたり、狐は特別な存在だということを表しているのだろう。
今後、神社やお祭りに行った際、狐にまつわる何かを見つけた時は、それなりの敬意を持ってもらえたらと思う。
そんな雑話でした。




