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誘い込まれたトンネル

 トンネルに対して、どこか不気味な印象を持ったり、時には恐怖感を覚えたりする人は多いのではないだろうか。

 密閉されているわけではないけど、何か嫌なものが中にとどまっているような印象を与え、昼間でも日の光はあまり中に入らない。そんな構造が霊を集めやすいのか、心霊スポットと呼ばれるトンネルも数多くある。

 今回はそんなトンネルでの体験談を紹介する。


 その日、社会人になったばかりのNは4人の友人と一緒に、Nの運転でドライブに出かけていた。

 目的地はあるものの、どちらかというとドライブそのものがメインといった感じで、何か気になるところがあれば寄りつつ、ゆっくりと移動していた。


 基本的に大通りを走らせていたけど、途中で車の通りが多くなり、自然とブレーキを踏む頻度が増えてきた。そんな時、ふと視線を移動させたら脇道を見つけた。

 方角としては目的地の方だし、迷ったら迷ったでそれも楽しいだろう。そんな軽い気持ちでNは脇道に入った。

 そこはしっかりと整備された大通りと違い、どこか古臭く細い道で、いかにも脇道といった感じだった。

 そして、ほぼ一本道で車を進めていくと、トンネルが見えてきた。


 そのトンネルもパッと見で古いものだと感じさせ、どこか不気味さもあった。

「トンネルには入らない方がいいよ」

 不意に友人の一人がそんなことを言ったので、トンネルの前で車を止めた。

「何で?」

「何か嫌な感じがするから……」

 この友人は霊感を持っていて、こんな風に言う時は霊的な意味でやばい場所を示しているというのは、彼らの間で知られていた。ただ、この時はそんな風に言うならむしろ行こうといった気持ちの方が強く、友人の静止を聞かずにNは車を発進させた。


 トンネルに入った時点で先にある出口は見えるし、そこまで長いトンネルじゃないというのはすぐわかった。それもあって、わざとゆっくり車を走らせた。

 外から見た時も古いトンネルだと感じたけど、中に入ってみると改めて古いなと感じた。壁はゴツゴツとしているし、明かりもそんなに強くないから昼間なのに薄暗い。今は車だからいいけど、歩いてここを通るとなると相当怖いだろう。


「確かに何か不気味だな」

「速く抜けてよ」

「大丈夫だって」


 そんな会話をしながら進んでいたら、突然車が停止した。

「おい、止めるなよ!」

「いや、エンジンがかからないんだよ!」

 この車はマニュアルではなくオートマだ。それにもかかわらず、トンネルを真ん中辺りまで進んだところでエンストしてしまったのだ。


 Nは何とかエンジンをかけようと何度も鍵を回し、霊感のある友人は必死にお経を唱えた。他の者は早くエンジンをかけろとNを急かし、車内はすっかりパニックになった。

 そうこうしているうちに何とかエンジンがかかり、今度は速い速度で車を走らせ、トンネルを出た。

 そのまま車を走らせると、また大通りに戻り、N達は改めて目的地を目指した。その間、先ほどのトンネルについての話はほとんどしなかった。


 この話にはちょっとした余談がある。

 後日、当時いた友人のうち2人を連れて、Nは問題のトンネルに改めて向かうことにした。

 トンネル内に入るかどうかは決めていないものの、あのトンネルが何だったのかという疑問と、怖いもの見たさがあったのだろう。

 でも、一日中いくら探しても、問題のトンネルを見つけることはできなかった。

 大通りから脇道に入って、後はそのまま進むだけという、比較的わかりやすい場所にあったはずなのに、その周辺をいくら探し回っても脇道すら見つけられなかった。


 もしかしたら、あの日彼らは存在しないはずのトンネルに誘い込まれてしまったのかもしれない。


 そんな雑話でした。

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