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残されたメモ

 前回の続きということで、今回はDから託された、Dの兄が残したメモを中心に話をしていきたいと思う。


 今回の雑話を読む前に、できれば以前書いた「真っ白な顔」と「白い怪異」という雑話を先に読んでほしい。

 簡単にまとめようかと思ったけど、まとめ切れないほど情報量が多かったので、ここでは割愛させてもらうことにした。

 ライター失格なことをしているという自覚もあるけど、私自身、混乱している部分を残したまま、今回の雑話を書いている。

 雑話だとしても、本来はこんな状態で何かを書き、それを公開することはない。

 でも、ここは雑話だからということで、了承してもらいたい。


 Dの兄が残した手帳には、破られたページがいくつかあった。

 その部分をDから託されて、私は「名前を付けられた怪異」について、より知ることができた。

 ただ、先に言っておくと、Dから託されたメモは一部塗り潰されていて、全部が明らかになったというわけじゃない。

 前後の文脈から推測すると、怪異に名前を付けた少女がどこの誰なのか特定されないよう、少女に関する詳細な情報を塗り潰してわからないようにしたようだ。

 この点は、何故ここまで徹底するのだろうかという疑問も持ちつつ、それでも新たな手掛かりになりうる情報はたくさんあった。


 まず、私が注目したのは、十年周期の4月1日に起こっている出来事についてだ。


 1991年4月1日は、今も私が持っている写真の裏に書かれている日付だ。

 普通に考えれば、写真を撮った日を指しているのだろうと推測しているけど、実際のところは不明だし、確認のしようもないだろう。

 ただ、高校生か大学生ぐらいのカップルが春休みを利用して旅行した際に、こんな写真を撮ったと考えると自然だ。

 そして、単なる思い出の写真だったはずが、白いもやが写り込んだことで、今の事態を生むきっかけになったわけだ。


 2001年4月1日は、写真に写るカップルの間に、初めての子供が生まれた日だそうだ。

 これはDからもらったメモで明らかになったことで、私も驚いてしまった。

 その子供が、後に例の写真に写る白いもやに気付き、そして怪異に名前を付けた少女になるわけだ。


 2011年4月1日は、夫が妻を殺害した後、自らも自殺するという事件があった日とのことだった。

 この事件の前から、少女は写真に写る白いもやを怪異と捉え、それに名前を付けてしまった。

 その結果、危険な怪異が生まれてしまい、それによって事件が起こったというわけだ。

 この事件そのものは以前から紹介していたけど、まさか十年前の4月1日に起こっていたとは知らなかった。


 そして、2021年4月1日に何が起こっただろうかと考えてみた。

 答えは先述した「真っ白な顔」と「白い怪異」という雑話で書いたとおり、写真に変化があったというものだ。

 あの時、写真に書かれた日付の丁度三十年後と気付き、妙な感覚があったけど、実は十年周期で何かしらか起こっていたわけだ。

 ただ、それで今何が起こっているかという部分については、私自身答えを見つけられていないままだ。


 Dから託されたメモには、興味深いことが多く書かれていたけど、一部が塗り潰されているので、理解するのは困難だった。

 でも、Dの兄が特に何を調べていたのかはわかった。

 それは、怪異に名前を付けた少女に関することだ。


 元々、Dの兄が残した手帳だと、少女に関する情報が断片的になっていると感じていた。

 それは、途中で破られていたせいで、どこか少女に関する情報を隠そうとしている意図を感じていた。

 Dから託されたメモには、少女に関する情報が多く書かれているけど、塗り潰された部分が多く、やっぱり少女に関する情報を隠そうといった意図を感じるものだった。

 ただ、Dの兄が何故そんなことをしたのだろうかという疑問が残るわけで、私の中で情報を整理してみた。


 これまでわかっていることとして、怪異に名前を付けた少女は、元々霊感がないのに、霊感があるふりをしていた。

 そして、写真に写る白いもやを見つけた時、それが何なのかわからないにもかかわらず、怪異が写り込んだ心霊写真と決め付けた。

 その後、少女は怪異が存在するとして、その怪異に名前を付けたわけだ。

 結果、両親が亡くなり、それによって少女は怪異を本気で信じたことで、霊感を持つようになった。

 Dの兄と協力して、少女は怪異を除霊しようとしたそうだけど、現状解決されていないわけで、少女が無事かどうかも不明だ。


 こうまとめてみると、尚更Dの兄が少女の情報を隠した理由がわからなくなる。

 というより、Dの兄とは別の人物によって、情報が隠されているんじゃないかと思えてきた。

 そう考えた時、私の中でピースがはまっていくような感覚があった。


 この手帳は、元々Dの兄からエリさんに託されたものだ。

 その時点で、一部のページを破いたり、そもそもで一部を塗り潰していたりしていたというのが、もうおかしいのだ。

 ここで、私はエリさんから聞いた「自覚なき霊障」という話を思い出した。

 霊障にあっているにもかかわらず、本人がそれに気付かないというケースが時にあるらしい。

 その場合、本人に自覚がないまま、何かに操られたかのような行動を取ることもあるそうだ。

 つまり、Dの兄は自覚なき霊障にあっていて、その結果、少女に関する情報を一部隠すような行動を取っていたというわけだ。そう推測したところで、まだ疑問は残るけど、少女についてさらに調べてみる必要がありそうだと改めて思った。


 とりあえず、私は知り合いの刑事であるKさんに十年前の4月1日に起こった事件について話した。

 これでKさんが有力な独り言をしてくれる確率が上がるだろう。


 あと、知り合いのオカルトライターにも協力してもらうことにした。

 こちらについては、「名前を付けられた怪異」という噂が、どういった経緯で広がっているかを調査してほしいとお願いした。

 今、改めて見返してみると、「名前を付けられた怪異」の噂は、事実と異なる点がいくつもある。

 まず、少女に生まれつき霊感があることになっているし、怪異との出会いについても心霊写真の話がごっそり抜けている。

 また、少女が家に帰ると両親が亡くなっていたとなっているけど、当時の少女が十歳だったことを考えると、少々妙な話になってしまう。

 十年前の4月1日は金曜日で、両親のどちらか、あるいは両方が仕事だったはずだ。

 つまり、少女が家に帰った時、両親がいるというのがそもそも変な話になってしまう。

 少女の誕生日だからという理由で仕事を休んだと考えることもできるけど、それだと何で少女は出かけていたのかという別の疑問が生まれてしまうわけで、この辺りの話も事実と違うのかもしれない。


 この「名前を付けられた怪異」の噂は、どういうわけか多くの嘘が混じっている。

 そして、私やエリさんは、どこでこの噂を知ったのか、記憶にない。それもおかしな話だ。

 だから、まだ「名前を付けられた怪異」の噂を知らないことを確認したうえで、知り合いのオカルトライターに調査をお願いした形だ。

 彼なら一歩引いた形で噂がどう広がっているのか確認できるだろうし、もしかしたらそれが大きな手掛かりになるかもしれない。


 こうして「名前を付けられた怪異」に近付いていくことが危険なんじゃないかという考えがないわけじゃない。

 それこそ、先輩であり師匠でもあるエリさんには何度も注意されている。

 でも、やっぱり私は知りたいという気持ちを最優先にしたいと思う。


 そんな雑話でした。

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