自殺の名所と呼ばれた団地
自殺者が多い場所は、「自殺の名所」だなんて不名誉な呼ばれ方をすることがある。
そう呼ばれた団地というと、特定できてしまう方もいると思うけど、具体的にどこを指しているかは明言しないでおく。
この団地にまつわる話は色々あるけど、今回紹介するのは、ある男性(以下Aとする)が20年ほど前に体験した話だ。
元々、Aは団地の近くに住んでいて、行先によっては団地の近くを通る道をよく利用していた。
その団地では飛び降り自殺をする者が多くいたという噂があったものの、今も住んでいる人がたくさんいるし、特に恐怖などを感じることなく夜でもその道を利用していた。
ある日、彼は友人(以下Bとする)と夜にその道を歩いていた。
Bは霊感があり、これまでも夜のプール(学校に忍び込んだらしい)で少年の幽霊を見たり、夜道で大きな人影を見たりといったことを話していた。
ただ、Bにとって幽霊を見るというのは日常茶飯事のようで、実際に見ても騒いだりせず、
「あそこに少年がいるんだけど、おまえには見えてる?」
なんて落ち着いた様子で話す感じだった。
ただ、この夜のBは今までと違う反応だった。
道を歩いていると、Bが急に足を止めた。
「どうした?」
Aが聞いてもBは答えることなく、何かを確かめるように辺りを見回した。そして、顔を上に向けた瞬間、
「逃げろー!」
と叫んで走り出した。
Bの様子に驚きつつ、Aは何があったのかもわからないままBを追いかけた。
団地から離れて、Bは落ち着きを取り戻すと話を始めた。
道を歩いていると、どこからか大きな音が聞こえた。それも一回ではなく、何度も繰り返し聞こえてきた。それは何かが落下したような音で、Bは何だろうかと辺りを見回した。
そして、団地の方へ目をやった時、何が起きているか理解した。
団地の屋上や上層階から人が落ちてきて、それが地面に当たると鈍い音が響いた。
それも一回ではなく、次から次へと色々な場所から人が落ちてきて、その度に何度も何度も鈍い音が響いた。
幽霊をよく見るBでもそんな光景は見たことがなく、たまらずその場から逃げ出したらしい。
その話を聞いてから、Aはその道を通るのを避けるようになった。
その団地であった飛び降り自殺の数は、100を超えているそうだ。
今では飛び降り自殺ができないように対策されているし、この出来事があってからも20年という年月が過ぎている。
安い言葉になってしまうけど、そこで自殺した方々が安らかに成仏していることを心からお祈りする。
そんな雑話でした。