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雛人形

 皆さんの中で、雛人形を飾った経験がある人は、どれだけいるだろうか。

 私は幼い頃に飾った記憶があるけど、そこまで雛人形に思い入れがなかったので、そんなことがあったなといった程度の思い出しかない。

 ただ、中には拘りを持っている人もいるようで、私の同級生でも豪華な雛人形を飾っているなんて話している女子がいたかと思う。


 雛祭りや雛人形に関する歴史を調べてみると、いつ頃から始まったものか不明なようで、起源なども様々な説があるようだ。なので、これから紹介するのは、いくつかある説の一つとして受け取ってほしい。

 元々の雛人形は紙や土で作られた、簡素なものだったそうだ。

 そして、娘に起こりうる様々な災いを雛人形に移した後、川や海に雛人形を流すことで、娘が災いを受けないようにする。

 そういったことをする流し雛と呼ばれる行事が、雛祭りの基になったのではないかとのことだ。


 人形に災いを移す、別の言い方をすれば身代わりになってもらうというのは、雛人形に限らず、様々な形でよく言われる話だ。

 これらは形代かたしろなんて呼ばれることもあるので、聞いたことがあるという人も多いだろう。

 反対に、人形の身代わりとして標的に災いを与えようとするのが、呪いといった形だ。


 雛祭りが終わった後、なるべくすぐに雛人形を片付けないといけないといった注意があるけど、これも災いを受け止めた雛人形をそのままにするのは良くないといった考えから生まれたものじゃないかと言われている。

 雛人形をそのままにしたら婚期が遅れるなんて話を聞くと、そもそもで飾らない方がいいじゃないかなんて考えを幼い私は持っていた。現に、二回ほど飾ったぐらいで、それ以降は一切雛人形を飾らなかったような気もする。

 でも、雛人形を飾ることで、災いを雛人形が受け止めてくれるとなれば、話は別だ。

 私も、もっと雛人形を敬い、大切にするべきだったなと今更ながら後悔している。


 ただ、災いを受け止めてくれる存在というのは、時として怪異を招き寄せることがある。なので、その扱いに関して、注意しないといけないこともある。

 例えば、飾ることのなくなった雛人形を処分しようと思った時、どうすればいいかなんて疑問を持つ人は結構いるそうだ。

 単に粗大ゴミとして処分することもできるけど、そんな雑な処分の仕方をしていいのかと悩む人も多いようだ。

 先に答えを言ってしまうと、雛人形を処分する際は、供養という手段を選んだ方がいいと私は考えている。

 様々な災いを受け止めるという大きな役割を終えたわけだから、粗末にしないで供養という形で、最後まで雛人形を大切にしてほしい。


 やってはいけないこととしてよく言われているのは、他人に譲ったり、売ったりすることだ。

 飾ることがなくなったとはいえ、雛人形を処分するのは抵抗があるなんて人が、知り合いに譲るなんて選択をするらしい。

 この時、親戚といった深い関係がある知り合いならまだいいものの、ただ近所に住んでいるだけとか、そんな理由で譲るのは、おすすめされないようだ。

 また、最近はインターネットを利用して、個人が様々なものを売ることができる。これを利用して、どこの誰かもわからない人に雛人形を売るといった選択をする人もいる。

 はっきり言って、これは絶対にやらない方がいいと私は思う。場合によっては、雛人形が受け止めてくれた災いが自分に返ってくる可能性もあるので、やるならそれ相応の覚悟を持ってからやってほしい。


 反対に雛人形が欲しいと思った時は、ちょっとした知り合いからもらったり、ネットオークションで買ったり、そういった既に誰かの所にあったものを手に入れるのではなく、新品を購入してほしい。

 災いなどを受け止めてくれる存在ということを考えると、何の災いも受け止めていない新品の雛人形の方がいいというのは、自然な考えだろう。

 それを守らなかった結果、怪異に見舞われてしまった人の話もあるので、そちらを紹介しよう。


 仲の良い夫婦に、幼い一人娘。そんな家庭を築きながら、専業主婦のHは質素ながらも幸せな毎日を送っていた。

 Hは近所で暮らす人とも話す機会が多く、特に隣の家で暮らす老夫婦には様々な面でお世話になっていた。

 余ったからと定期的に料理や食材をもらったり、使わなくなった物をもらったり、Hの一家はこの老夫婦に助けてもらってばかりだった。


 そんなある日、老夫婦が倉庫を整理していたところ、キレイな状態で保管されていた雛人形が見つかった。

 そして、処分するしかないものだから、是非もらってほしいなんて申し出を老夫婦から受け、丁度娘のために雛人形を購入しようと思っていたHは、それを快く受け入れた。

 こうして、老夫婦が所持していた雛人形がHの家に渡ることになった。


 それから数日後、老夫婦の妻が亡くなり、そのすぐ後を追うかのように夫も亡くなってしまった。

 それまで様々な面でお世話になっていた老夫婦が亡くなり、Hの一家は大変悲しんだ。

 同時に、これまで老夫婦から頂いた様々な物を大事にしようと話し、その中には例の雛人形もあった。


 雛人形をもらってから、初めての三月三日――雛祭りの日に、Hは老夫婦からもらった雛人形を飾った。

 それは精巧な作りで、かなり高級なものだろうということはすぐにわかった。

 こんな素敵な雛人形をくれて、改めて老夫婦に感謝の気持ちを持ちつつ、喜ぶ娘の姿をHは嬉しく見ていた。


 ただ、それから少しして不思議なことが起こった。

 Hは掃除や洗濯を終えて、ふと雛人形の方を見た。すると、男雛おびな女雛めびなの向きが変わり、お互いに向き合うような形になっていた。

 それなりに高い位置に飾っているから、娘が悪戯したというのも考えづらいし、おかしいなと思いつつ、Hは男雛と女雛の向きを戻した。

 でも、それからまた少しして雛人形を確認すると、やはり男雛と女雛は向き合っていた。


 Hは多少不気味に感じたものの、人形が勝手に動くわけがないとまた向きを戻した。

 ただ、さすがに気になって、ちょっとした合間に雛人形を確認するようにしていた。

 そして、Hは決定的な瞬間を見てしまった。

 突然、男雛と女雛がぎこちない動きでゆっくりと向きを変えると、お互いに向き合ったところで止まったのだ。


 さすがに気持ち悪くなり、Hは夫に相談した。

 そして、もしかしたら老夫婦の魂や思いといったものが人形に宿っているのかもしれないと話し、供養をお願いすることにした。

 とはいえ、供養は翌日にならないとできず、その晩は雛人形が動いているのか、カタカタといった音に悩まされることになった。


 翌日になり、娘が少し残念そうだったけど、Hは近くのお寺に雛人形を供養してもらった。

 その際、今回私が紹介したような雛人形に関する話を聞いたそうで、後日、Hは娘のために新しい雛人形を購入したそうだ。

 繰り返しになるけど、皆さんも雛人形が欲しいと思った時は、新品の雛人形を購入することをおすすめする。


 そんな雑話でした。

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