自分と同じ顔を持つ存在
前々回からの流れで、今回は自分と同じ顔を持つ存在に関する話をする。
世界には自分と同じ顔を持つ人物が三人いるだなんて話を聞いたことがある人は多いんじゃないだろうか。
これは怪異などではなく、普通に生きた人で、双子でもないのに瓜二つというほどそっくりな容姿の人がいるという話だ。
世の中、容姿の似た人が他にいるのは当たり前の話だし、これ自体は不思議な話でもない。
実際、テレビなどで芸能人のそっくりさんが紹介されるとか、そういった番組を見たことがある人も多いだろう。
また、こちらは真偽不明の話になるけど、何かしらか大きな権力を持った人には、影武者がいるといった話は昔からある。
これは権力者のそっくりさんを用意することで、暗殺などの被害を受けないよう、対策しているとされている。
様々なフィクション作品などで影武者というのは出てくるので、何となくどういったものかわかる人も多いだろう。
もしかしたら、フィクションの話ではなく、現実でも影武者というのは存在しているのかもしれない。
ここまでは、現実にあってもおかしくないような話ばかりだけど、さらに追及していくと、科学的な説明がつかないオカルトに繋がっている。
例えば、前回紹介したドッペルゲンガーと似たような話で、自分と同じ顔を持つ人物に会った後、少しして命を落としてしまうなんて噂がある。
これは単純にドッペルゲンガー=自分と同じ顔を持つ人物と解釈されて、誤った形で噂になったものだろうと私は考えている。
一応、自分と同じ顔を持つ人物に会った後、お互いにすぐ亡くなってしまったといった話はあるそうだ。
でも、これには別の解釈を持っている。それは、前々回紹介した双子に関する話になる。
同じ顔を持つということは、どこか魂を共有しているかのような繋がりがあるんじゃないかと私は考えている。
実際、同じ顔を持つ二人は名前が同じだとか、趣味や特技が同じだとか、さらには好きになった人の名前や飼っているペットの名前など、様々なところで共通点があるといったケースもあるそうだ。
これを踏まえると、自分と同じ顔を持つ人物に会った後、お互いに亡くなるというのも、死の運命すら共有していたということになるのかと思う。
魂を共有しているとしたら、片方が命を落とした後、もう片方もすぐに命を落とすというのは、むしろ自然なことじゃないだろうか。
とはいえ、そんな運命共同体みたいなものを勝手に用意されるというのは、なかなか迷惑な話だ。
また、実体化したドッペルゲンガーとでも思えるような存在の話もある。
こちらは怪異と呼んでいいのかわからない、正体不明の不気味な存在だ。
この存在について、サラリーマンのEが体験した話を紹介しよう。
それがいつから始まっていたかはわからないものの、最初に気付いたきっかけは、仕事帰りに居酒屋へ寄った時だ。
その店は自営業でやっている小さな居酒屋で、以前から入ってみたいとEは思っていた。ただ、なかなかタイミングが合わなくて、その日になってやっと入れた形だ。
Eは一人だからとカウンター席に座った。
すると、店長らしき人がEを見て、
「いらっしゃい、今日も来てくれたんだね!」
と挨拶してきたのだ。
Eがこの店に入るのは初めてで、当然この店長らしき人とも顔見知りじゃない。
Eが戸惑いつつも人違いであることを伝えると、相手はどこか納得のいかない様子だった。
話によると、昨夜Eとそっくりな人がこの店に来て、長い時間様々な話をしたそうだ。
それで、昨日の今日なのにまた来てくれたと思ったようだけど、Eが違うと言うので、不思議そうに首を傾げていた。
おそらく、店長はEが嘘をついていると思っている様子だったけど、お互いに諦めてそこまで追及はしなかった。
ただ、Eの注文する酒や料理が、昨夜と一緒だったようで、店長はますますEに疑念を持っているようだった。
それから数日後、珍しく友人から連絡があり、Eは何だろうかと出てみた。
すると、先日会った時、近いうちに遊ぼうといった話をしたから、具体的に予定を決めようと電話してきたと言われた。
でも、Eにそんな覚えはなく、友人の勘違いじゃないかと言ったけど、友人は確かにEと会って約束をしたと主張した。
その後、母親から連絡があり、急に姿を消したけど、どうしたのかと訳のわからないことを言われた。
母親の話だと、Eが突然実家に帰ってきて、軽く雑談した後、Eの部屋に行ったそうだ。
それから少しして、夕飯はどうするのか聞こうと思ったら、いつの間にかいなくなっていて、それで心配して連絡してきたとのことだった。
ここで、Eは何か自分とそっくりの存在がいると確信した。
とはいえ、どうすればいいかはわからず、悩んでしまった。
Eは一人じゃどうにもできないと考え、彼女に相談した。すると、彼女はある提案をした。
それは、二人だけの合言葉を作って、会った時はその合言葉を確認するというものだった。
そうすれば、Eとそっくりな何かが彼女の前に現れたとしても、すぐにわかるというものだ。
そこまでする必要があるのかと思いつつ、やらない理由もなかったので、彼女の言う通り、Eは二人だけの合言葉を決めた。
ただ、結果的にこの行動は正解だった。
彼女と二人だけの合言葉を決めてから少しして、慌てた様子の彼女から連絡があった。
彼女によると、Eと偶然街で出会い、早速合言葉を聞いてみたそうだ。
でも、Eが合言葉を言わなくて、おかしいと思ったところ、突然目の前からEが消えてしまったそうだ。
それで、慌ててEに連絡してきたというわけだ。
彼女が嘘をついているんじゃないかという疑いもあったけど、Eは彼女の話を信じた。
そして、彼女以外の自分と関わりのある人との間にも合言葉のようなものを決めた。
さすがに自分と同じ顔を持つ何かがいると言っても信じてもらえそうにないので、オレオレ詐欺の対策ということにしたけど、合言葉を決めることはできた。
でも、こちらの合言葉は活用されることがなかった。
というのも、Eと同じ顔を持つ存在が、それ以降誰の前にも現れなくなったからだ。
結局、Eと同じ顔を持つ存在が何をしようとしていたのか、Eにはわからなかった。
ただ、理由はわからないものの消えてくれたのなら良かったと、深く追及することもなかった。
私はこの話を聞いて、こんな推測を立ててみた。
Eと同じ顔を持った存在は、Eと成り代わる目的を持っていたのかと思われる。
少しずつEの周りに侵食していって、何かしらかの手段でEを消した後は、Eとして生きるつもりだったのではないだろうか。
でも、Eの彼女によってEじゃないことが判明して、その存在は目的を達成できずに消滅したように思われる。
自分と同じ顔を持った人物が、いつの間にか自分に成り代わってしまう。
それが怪異であっても、実在する人であっても、大変怖ろしいものだ。
自分だけでなく、周りの大切な人が別の存在に成り代わる。
そんな体験は絶対にしたくないと心から願う。
そんな雑話でした。




