ドッペルゲンガー
前回、双子に関する話を紹介したけど、それに関連して、今回はドッペルゲンガーという、もう一人の自分と呼ばれる怪異の話をしたいと思う。
ドッペルゲンガーというのは、自分と同じ姿をした怪異だ。
ある日、何の前触れもなく目の前に現れ、ドッペルゲンガーを見た者は近いうちに命を落とすと言われている。
ドッペルゲンガーの正体に関しては諸説あるけど、何かしらかの理由で分裂してしまった魂じゃないかといった意見がよく言われている。
当然、魂が分裂することによる影響はあるわけで、そのままの状態が続くと、命にかかわるほどの問題になるだろう。
ドッペルゲンガーを見るということが、自分の魂が分裂しているということと同義だとすると、ドッペルゲンガーを見た後に命を落とすといった話も納得できる。
魂が分裂してしまう理由としては、何かしらか身の危険を感じた時、魂だけがその危険を避けようと分裂してしまうといった説がある。
事故にあいそうになったとか、怪談から落ちてしまったとか、そういった時に魂が分裂して、それがまた自らの前に現れた時、ドッペルゲンガーと呼ばれるわけだ。
ここまで言うと、ドッペルゲンガーを見る=絶望的な状況と感じるだろう。
ただ、ドッペルゲンガーを見たものの、今も無事に生きている人は存在している。
何かの参考になればと思うので、そちらの話を紹介しよう。
男子高校生のDは、野球部のピッチャーで、いわゆるエースとして活躍していた。
ある日、他校との練習試合をしていた時、ピッチャーライナーといった形でボールを頭に受けてしまった。
幸い、そこまでの大怪我を負うこともなく、頭にたんこぶができたぐらいだったものの、その日Dは大事をとって他のピッチャーに交代してもらった。
後で振り返ると、これが魂の分裂=ドッペルゲンガーを生み出したきっかけだと感じたそうだ。
それから数日後、野球部の練習を終えて帰ろうとしたところ、Dは自分そっくりの姿をした存在に遭遇した。
その存在は生気がなく、体もどこか透けていて、生きた人じゃないだろうというのはすぐにわかった。
その時、後ろから他の部員に呼ばれて、Dは少しだけその存在から目を離した。
それからすぐに目を戻したけど、もうその存在は消えていた。
Dは冗談を言うような形で、その体験を他の友人に話した。
すると、友人の一人がドッペルゲンガーの話をして、Dが危ない状態なのではないかと助言をした。
Dは半信半疑で聞いていたものの、あまりにも深刻に警告されたので、何か対策しようと心に決めた。
そして、自らの魂が分裂した結果、生まれたものがドッペルゲンガーだとか、そういった話を詳しく聞いた。
その後、Dがやったことは至って単純なものだった。
何となく声が響きそうだという理由で校舎の屋上へ行くと、
「ドッペルゲンガー! 俺は死なないからすぐに戻ってこい!」
と大声で叫んだそうだ。
命の危険を感じて魂が分裂したというなら、こう言えば戻ってくるだろうという安直な考えから、こうした行動に出た形だ。
ただ、こんな単純な対応が実は正解だったようだ。
ドッペルゲンガーは再びDの目の前に現れ、ゆっくりとDに近付くと、スッと消えてしまった。
それはまるで、分裂した魂がDに戻ったかのようだった。
そして、これによって問題が解決したようで、Dは今も元気に過ごしているそうだ。
ドッペルゲンガーという怪異に遭遇した時、Dのしたことが正しい対処法だとは断言できない。
ただ、一つの対処法として覚えておくべきものだとは思う。
もし、あなたがドッペルゲンガーに遭遇した時は、Dのしたことを参考にしてみてほしい。
そんな雑話でした。




