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贈り物

 少し日が過ぎたけど、バレンタインにチョコレートをあげた、あるいはもらった人はいるだろうか。

 私はすっかりこうしたイベントから離れてしまい、今年も誰かにチョコレートをあげるといったことはしなかった。


 バレンタインのチョコレートなど、好意を込めた贈り物の中には、思いが深いからこそ恐ろしいものもある。

 中には、心霊関係の話じゃなくて、単純に生きた人による怖い話も多い。

 例えば、手作りチョコレートに自らの血や髪の毛を入れる人がいるなんて話は、都市伝説のようなものとして何度か聞いたことがある。

 私自身、もらったプレゼントに盗聴器が仕掛けられていたことがあり、その時のことは今でも怖い体験として記憶している。


 心霊関係の話としては、思いの強さがそのまま呪いになってしまったというケースが多いように感じる。

 その中で今回は、ある男子高校生Aの話を紹介しよう。


 Aは中学校を卒業する少し前に、後輩の女子Iから告白され、AもIに好意を持っていたことから付き合うようになった。

 すぐにAは高校、Iは中学校と別々の学校になってしまったものの、休日になると二人で遊びに行くようにしていた。

 しかし、Aは高校の友人との付き合いも大事にしたいと思うようになり、Iと遊びに行く頻度が少なくなっていった。


 そんなある日、久しぶりにIと会った時、Aはプレゼントをもらった。

 それはぬいぐるみで、何でもIがこれまで大切にしていたものだということだった。

 Iの考えとしては、最近会う機会が減ってしまっているけど、Aの高校生活も大切に思っている。

 だから、ちょっとした時にIのことを思い出してくれるよう、このぬいぐるみを持っていてほしいというものだった。

 正直なところ、AはIの気持ちが重いと感じたものの、うまく断れないままぬいぐるみを受け取った。


 それからも、AとIが会う頻度は減り、反対にAは高校の友人との仲がどんどんと深まっていった。

 その中には当然女子もいて、自然と恋愛感情に近い思いを持つようにもなっていった。

 ただ、そうして高校生活が充実していくに連れ、Aの周りで妙なことが起こるようになっていった。


 最初の異変は、よく一緒に遊んでいる男子が交通事故にあったことだ。

 命に別状はなかったものの、足を骨折するなどして、少しの間、入院することになってしまった。

 ただ、A達がお見舞いに行くと、思ったより元気で、しばらく遊びに行けないのが嫌だといったことを冗談交じりに言っていた。

 心配していたA達は拍子抜けしつつ、早く治せと無茶なお願いをするなど、お互いに明るく話した。


 それから少しして、男子の一人が持病の喘息を悪化させてしまい、休みがちになった。

 一応、入院にはならず、自宅療養という形になったけど、時々学校に来ても、体調を崩して早退するという日が多くなった。


 こうしたことがきっかけというわけじゃないけど、みんなで遊びに行くのが難しくなったところで、Aは仲の良い女子と放課後に二人で遊びに行くことが次第に増えていった。

 Iのことを気にしつつも、学校帰りにそのまま近くのデパートを回るというのは楽しく、ますますIと疎遠になりつつあった。

 しかし、そうして二人で遊びに行くのは、急に終わった。

 相手の女子が体調を崩し、それがいつまでも治ることなく、何日も学校を休んでしまったからだ。


 こんなことが続いた週末、Aは久しぶりに誰とも予定がなかった。

 ふと、棚の上に飾っていたIからの贈り物であるぬいぐるみを見て、AはIと出かけることにした。

 久しぶりに会ったこともあり、お互いに話したいことがたくさんあり、その日は充実した一日になった。

 そして、Aはしばらく疎遠になっていたことを謝り、それをIは嬉しそうに許した。


 その後、事故や病気で休みがちだった友人達が学校に来るようになり、また遊びに行くようになったけど、週末はIと出かけることを優先するようになった。

 そんなある日、Aは部屋の片付けをしていた時、何かの拍子にIにもらったぬいぐるみが棚から落ちた。

 それを拾った時、手にトゲか何かが刺さる感覚があり、Aはすぐにぬいぐるみを離した。

 何が刺さったのだろうかと、恐る恐るぬいぐるみを拾い、よく確認してみたところで、Aは気付いた。


 ぬいぐるみの背中に、人の手で縫い合わせたような箇所があった。

 Aは何だか嫌なものを感じて、ハサミを使ってそこを切り開いてみた。

 そして、ぬいぐるみの中に入っていた、髪の毛や爪の存在を目の当たりにした。

 どうやら、先ほど何かが刺さったように感じたのは、爪の尖った部分によるものだったようだ。


 Aは気持ち悪いと思いつつ、ぬいぐるみの中身を机の上に出してみた。

 そこに入っていた髪の毛や爪は少なかったけど、妙なことにどちらも異常に長かった。

 それはまるで、ぬいぐるみの中で成長していたかのようで、そう考えるとますます嫌な気分になっていった。

 さすがにこれをそのままにしようという気になれず、AはIからもらったぬいぐるみを捨てた。


 その後、AはIに事情を聞こうと連絡したものの、なぜか連絡がつかなかった。

 それだけでなく、夜逃げするかのように、誰にも何も言わずにIの家族は引っ越してしまい、完全にAの前から姿を消してしまった。

 Iがいなくなった後、Aはそのことを少しだけ気にしていたけど、楽しい高校生活を送っていくうちに、自然とIのことは思い出になってしまった。

 ただ、Iからもらったぬいぐるみに入っていた髪の毛や爪については、今も何だったのかと引っかかっているようだ。


 私はこの話を聞いて、呪いというものについて改めて調べてみた。

 呪いというと、対象を不幸にするものといった印象を持つけど、それだけじゃなかった。

 恋愛成就の呪いというものもあり、それは対象の周りを不幸にしてでも、対象との仲を良くするための呪いだそうだ。


 IがAに贈ったぬいぐるみは、そうした呪いそのものだったのだろう。

 I自身には、呪いをかけようといった考えがなかったかもしれない。

 自分が大事にしているぬいぐるみに、自らの髪の毛や爪を入れることで、自分の分身としたものを愛するAの部屋に置きたい。

 そんな歪んだ愛情が、結果として呪いになってしまったわけだ。


 ただ、呪いには共通のルールみたいなものがある。

 それは、呪いをかけていることが知られたり、呪いに使われるアイテムが破棄された時、呪いが自らに返ってきてしまうというものだ。

 もしかしたら、AがIから贈られたぬいぐるみの秘密に気付いた時点で呪いは解け、それがIに返ってしまった結果、Aの前から姿を消してしまったのかもしれない。


 恋愛感情というものは大事なものだ。

 でも、それも行き過ぎたり、誤った方向に行ってしまったりすると、危険なものになってしまう。

 もし、大切な人から贈り物をもらった時、それが純粋な気持ちによるものかどうかと勘ぐるのは良くないことかもしれない。

 ただ、誤った方向へ気持ちが行ってしまっていることに、すぐ気付くのも大切なことだと思う。

 好きだからこそ、大切な人だからこそ、信じるだけでなく、本当の意味で相手を理解してほしいと私は願いたい。


 そんな雑話でした。

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