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百物語

 以前、怪談が怪異を引き寄せる危険があるという話をした。

 今回は、まさに怪談で怪異を引き寄せようとする「百物語」について話をしたい。


 百物語というのは、様々なやり方があるみたいけど、一般的には以下の方法が有名だと思う。

 夜に複数の人が集まり、百本の蝋燭ろうそくに火をつけた後、順に怪談を語っていく。

 怪談を語った後は、蝋燭の火を一本消す。

 これを繰り返し、百話目を語った後、百本目の蝋燭の火を消した時、怪異が訪れ、不思議なことが起こるというものだ。


 こう書くと、どこか儀式のようなものにも感じられる。

 ただ、実際は百本の蝋燭を用意するなんて大変だし、一本で済ませるか、そもそも蝋燭を使わないケースも多いと聞く。

 火を扱うとなると、火事や酸欠の心配もあるので、私としても蝋燭の使用はおすすめしない。


 また、思った以上に時間がかかるというのも考慮する必要がある。

 例えば、一話を三分ほどで話していくとしよう。

 この場合、百話を終える頃には五時間もかかる計算になる。

 途中、長い話を入れたり、話が終わった後に感想を言い合ったりした場合、さらに時間がかかるわけで、始める時間によっては夜が明けてしまうだろう。

 そんなわけで、実際に行う際は比較的早い時間に始めるか、なるべく簡潔な話を中心にし、テキパキと進行していく必要がある。

 こう考えると、百物語をやるのは、少々現実的じゃないように思えてくる。


 とはいえ、こうした時間の問題も考慮したうえで、実際に百物語をやり遂げた人もいる。

 その人物は、これまで何度も紹介している心霊好きの男友達Sだ。

 Sは数人の友人に百物語をやりたいとお願いしたところ、興味を持ってくれた人がそれなりにいた。

 そうして、最終的には五人で百物語を行うことになった。


 参加者が決まったところで、Sはまず超短編の怪談を中心に用意するよう、友人達にお願いした。

 こうすることで、比較的短時間で百話まで終わらせてしまおうという計画だった。

 もはや、怪談を楽しむという目的ではなく、百物語を完遂したら何が起こるかの実験になっていたけど、友人達も乗り気で、ある日の晩に決行することになった。


 場所は一人暮らしをしている友人の部屋でやることになり、百物語が終わった後は、泊まりで宅飲みをする予定だった。

 また、やはり蝋燭は危険だという考えから、代わりに乾電池で使えるランタンを一つ用意するだけにした。

 それと、何話かわからなくなると困るので、カウント用にスマホも用意した。

 そうして、夜十時からS達は百物語を始めた。


 最初の話はSが話して、そこから時計回りで順に話をしていった。

 みんな短い話中心で集めたので、実体験の話などはほとんどなく、それこそ雑な話も多かった。

 とはいえ、一人あたり二十話も話さないといけないわけで、雑になるのは当然だった。

 ただ、あくまで百物語の完遂が目的なので、これで構わないと進めていった。


 スムーズに進めたつもりだったけど、百話目を話す頃には既に日が変わっていた。

 それでも一話を一分前後で話した計算になるので、かなり大急ぎで進めた形だ。

 そうして、いよいよ百話目になった。

 これまで五人が順に話していった結果、百話目はSが話すことになった。

 ただ、Sは用意してきた話を忘れてしまい、どうしたものかと考えた。

 そして、何となくその場で浮かんだ作り話を話した。


 これで百話の怪談を話し終わった。

 S達はドキドキしながらランタンやスマホの明かりを消した。

 噂が本当なら、これで怪異が訪れ、何か不思議なことが起こるはずだ。

 S達は音にも集中しようと、全員黙り込んだ。


 そうしてしばらく待ったけど、特に何も起こらなかった。

 ただ、百本の蝋燭を用意しなかったことや、そもそも雑な話が多かったという反省点ばかりだったので、むしろ何も起こらないに決まっているという感想を全員が持った。

 そんなわけで、若干拍子抜けしつつ、S達は明かりをつけると宅飲みに切り替えた。

 でも、そこで百物語の振り返りをしていた時、おかしな点に気付いた。


 百物語は、Sから話し始めて、時計回りに五人が話をしていった。

 そうなれば、最後に百話目の話をするのは、Sじゃなくて五番目に話をした、Sの右隣の友人になるはずだ。

 それなのに、百話目の話もSがすることになったのは、おかしいと気付いたのだ。

 時計回りに話をしていったから、誰かの順番を飛ばしたというのは考えづらかった。

 そうなると、カウントミスで、一話多く話したということになる。

 つまり、Sが最後の話をする前に百物語は完遂していたわけだ。

 ただ、だからどうという話でもなく、不思議なことは何も起こらなかったわけで、S達は特に気にしなかったそうだ。


 さて、Sが私にこの話をしてきたのは、つい最近のことだ。

 聞いた時、何でこんな話をしてきたのかと思ったけど、それにはある理由があった。

 最近、Sは空いた時間を利用して、これまで私が書いた雑話を読んだらしい。

 そして、あることに気付いたそうだ。


 百物語をした時、Sが最後に話したのは、即興で作った嘘の話だ。

 それなのに、私がここに雑話として載せた「名前を付けられた怪異」と、内容がよく似ているというのだ。

 それを聞いて、私も妙なことに気付いた。


 ここに載せている雑話は、人から聞いた話や、偶然知った話などを参考に書いたものが中心だ。

 その中で、「名前を付けられた怪異」という雑話は、何の話を参考にして書いたものなのか、どうも思い出せないのだ。

 というより、こんな雑話を書いたことすら忘れていたから、内容を見返してみて、わからない点があることに気付いた。

 それはSも同じで、この話の中に出てくる怪異に付けられた名前が何なのか、見当も付かないのだ。


 ちなみに、Sはもう一つ、こんな解釈をしていた。

 あの日、百物語を完遂したことで訪れた怪異は、この「名前を付けられた怪異」という話そのものではないかというものだ。

 とはいえ、Sもそう言うだけで、それが何を意味しているのかはわからないそうだ。


 とりあえず、現状は何が起こっているのか、そしてこれから何が起こるのか、私とSには見当も付かない。

 だから、これまでと変わらず、何かあったらまた報告する。

 そう伝えることしかできない。

 オカルトライターの私としては、続きが書けるような出来事があればと願うことにする。


 そんな雑話でした。

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