豆まき
節分に豆まきをした経験は誰しもあるだろう。
大人になり、さすがにやらなくなってしまったけど、私も幼い頃は毎年やっていた。
昔は立春が新年の始まりで、節分が年越しのように扱われていたそうだ。
そして、豆まきというのは、年越しにあたる節分の日に、鬼――不幸や災難を追い払い、代わりに幸運などを迎え入れる儀式のようなものらしい。
まあ、調べてみると、様々な由来が紹介されているので、ここは諸説あるという言い方が無難だろう。
豆まきのやり方として、正しい方法というものもある。
ただ、それを知る人がそもそも少ないだろうし、ほとんどの人は適当にやっているかと思う。
私がやっていた時も、玄関で豆を外へまきながら「鬼は外」と言い、反対に家の中へ豆をまきながら「福は内」と言うといった、シンプルなものだった。
とはいえ、ここで出てくる「鬼」という単語の解釈は、結構重要かと思う。
鬼というと、角を生やした真っ赤な妖怪の姿を想像する人が多いと思う。
ただ、豆まきにおいては不幸や災難といった、何か悪いものを指して、鬼といっているように感じられる。
さらに解釈によっては妖怪全般、それこそ怪異そのものを指す言葉として、鬼という場合もある。
こう考えると、豆まきというものは、何か不幸を招く恐れのある「悪い怪異」を外へ追いやる、除霊に近いものなのかもしれない。
これは私個人の勝手な解釈だけど、それを肯定するような話も存在している。
これから紹介するのは、節分の日、祖父母の家を訪れていた少年Uの体験談だ。
ある日の週末、Uは両親と一緒に祖父母の家へ泊りにいった。
祖父母は農家で、昔ながらの日本家屋といった感じの家に住んでいる。
だから、都会暮らしのUとしては、そこを訪れるたび、昔話の世界に飛び込んだような感覚を持っていた。
その日は丁度節分だったから、豆を用意して、夜には豆まきをすることになった。
祖父母はもう豆まきなどをすることもなくなっていたから、Uが豆まきをしてくれるということを大変喜んでいた。
せっかくだから、この際、家中の鬼を退治してほしいなんて祖父母が言って、Uはそれを元気な返事で引き受けた。
最初は玄関で豆まきをやった。その後部屋を順に回っていき、最後は普段あまり行かない家の奥にある倉庫部屋まで来た。
そこは明かりがあっても薄暗く、何だか本当に鬼が出そうだとUは怖くなってしまった。
その時、ガタガタと何かが音を立てた。
よく見ると、倉庫の扉が揺れていて、それが大きな音を立てていた。
Uは怖くなり、急いで両親と祖父母がいる部屋に戻った。
Uから話を聞いても、両親などは冗談だろうと深く考えなかった。
ただ、祖父は何か思うところがあったようで、Uの代わりに倉庫へ行ってくれた。
それから少しして祖父が戻ると、今度はUと祖父の二人で豆まきを再開した。
その際、祖父は奥の部屋から順に玄関へ向かうように豆まきをするといいと教えてくれた。
それに従い、祖父と二人で豆まきをやった時には、特に不思議な現象などは起こらなかった。
当時、何があったのか、幼いUにしてみれば見当も付かなかった。
そして、しばらくして祖父が亡くなり、確認する術もなくなってしまった。
でも、今でもUは、祖父に習った通り、節分になると奥の部屋から玄関へ向かう形で豆まきをするようにしているそうだ。
さて、今回の雑話を書くうえで、豆まきの手順について少し調べてみた。
すると、この話にあった通り、奥の部屋から玄関へ向かう形で、順に行っていくのがいいといったことが書かれていた。
それを見て、私はある推測を立てた。
繰り返しになるけど、豆まきは除霊と似たような効果があるんじゃないかと考えられる。
その場合、玄関から奥の部屋へ向かうように豆まきをしていった場合、追いやられた怪異が奥の部屋に集まる危険がある。
Uが見た不思議な現象は、そうして集まった怪異によって引き起こされたのかもしれない。
もしかしたら、もう終えてしまったかもしれないけど、豆まきをする際は、奥の部屋から玄関へ向かって行うことをおすすめする。
これから豆まきをする人は、是非そうしてほしい。
そんな雑話でした。




