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気付いたらそこにいた

 これは、ある女子中学生Fが体験した話だ。


 Fは幼い頃から引っ越しなどすることなく、ずっと同じ家で暮らしている。

 そして、同じ小学校に通った同級生は、ほとんど同じ中学校へ入学したから、古くからの友人というのもたくさんいる。

 そんなFが中学二年生の時、不思議なことがあった。


 ある日突然、Fのクラスに、Nという男子が現れた。

 それは転校生とかじゃなく、気付いたらそこにいたといった感じで、クラスに溶け込んでいた。

 Nは人気者で、休み時間になると、多くの友人に囲まれて色々とおしゃべりをしていた。

 Fの古くからの友人達がそこに加わり、Fも話を合わせる形でそこに入った。

 でも、FはこのNという男子がどこの誰なのか、まったくわからなかった。

 Fとは違い、みんな古くからの友人といった感じでNと接していて、どうしてこんなことになっているのか、意味がわからなかった。


 何が起きているのか、友人に聞こうかと思ったけど、変だと思われるのが怖く、Fは誰にも相談できなかった。

 最初は何かドッキリでも仕掛けられているのかと思いつつ、次の日もNがいたから、それも違うようだった。

 Fの記憶がおかしくなってしまい、自分だけがNのことを忘れたのかと思ったけど、そうだとしてもおかしいわけで、納得できなかった。


 そんなモヤモヤを抱えたまま、一週間ほどが過ぎたある日の放課後。

 Fは忘れ物に気付き、教室に戻った。

 教室のドアを開けた時、一人だけ残っている生徒がいることにすぐ気付いた。

 それは、Nだった。


「あ、えっと、忘れ物しちゃって……」


 図らずも二人きりになり、Fは気まずくなってしまった。

 だから、忘れ物を取って、すぐに教室を出ようとした。

 でも、ある意味では自分のモヤモヤを解消するチャンスかもしれないと気付き、Fは勇気を出して言うことにした。


「あの、変なことを言うんだけど……私、Nのことを覚えていないというか、いきなり教室に現れたというか……みんなは普通にNと話しているし、本当に変なんだけど、私の記憶おかしくなっちゃったのかな?」


 Fはどう言えばいいかわからず、うまくまとまらないまま、メチャクチャなことを言ってしまった。

 そのことを自覚しつつも、改めてどう言えばいいかがわからず、黙ってしまった。

 ただ、Nは特に不快そうな顔を見せるわけでもなく、むしろ穏やかな表情だった。


「別におかしくなんかないよ」


 わけのわからないことを言ったはずなのに、NはFの言葉を理解している様子で、軽く微笑んだ。

 ただ、Fは返事もうまく思いつかないまま、頭を下げた。


「変なこと言ってごめんね。もう行くから」


 結局、そんな風に言って、Fは逃げるようにその場を後にした。


 次の日、FはNに何て謝ろうかと思いつつ、学校へ行った。

 でも、もうそこにNはいなかった。

 それだけでなく、他の友人達にNのことを聞いても、そんな男子は知らないと返されてしまった。


 Nがいたのは約一週間ほどで、その間、みんなはNのことを知っているのに、Fだけが知らないという状態だった。

 でも、それが今は逆で、みんなNのことを覚えていないのに、Fだけが覚えている状態になってしまった。

 結局、約一週間だけクラスにいたNが何者だったのか、Fにはわからなかった。


 私も学生時代、後輩から似たような話を聞いたことがある。

 自分一人がおかしいのか、それとも自分以外の全員がおかしいのか。

 そんな二択から答えを選ぶ場合、多くの人が前者を選ぶだろう。

 何となく少数派が間違いで、多数派が正しいなんて先入観もあるし、それは当然の考えだ。

 でも、後輩のケースでは、後輩一人だけが正しいことを言っていたと後ほどわかった。

 つまり、必ずしも多数派が正しいとは限らないのだ。


 怪異を相手にするとなると、多くの人がどう認識しているかという情報は、あまり役に立たないことも多い。

 だから、誰が何を言っているかじゃなく、私は私の認識を信じたい。

 皆さんも、そうしてもらえればと思う。


 そんな雑話でした。

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