年越しの瞬間
年末年始、皆さんはどう過ごしているだろうか。
私は特にすることもなく、家でのんびり過ごす予定だ。
さて、大晦日から元日にかけての年越しは、起きている人が多いと思う。
それこそ、普段は夜更かしを禁じられている子供ですら夜更かしを許される、特別な時間と言えるだろう。
ただ、日時というのは単に人が決めた基準のようなものであり、一年の終わりと始まりの境界がどこかということは、そこまで重要じゃないように思える。
実際、一年を三百六十五日とすると、四年ほどで一日ずれてしまうということで、閏年がある。
さらには、微妙なずれを秒単位で調整する、閏秒なんてものも存在しているわけで、本当の意味での年越しは、少し……あるいは大幅にずれているのかもしれない。
今と比べて、旧暦だと一ヶ月以上ずれていたなんて話も聞くと、尚更年越しの時間が特別なものとは思えなくなってしまう。
とはいえ、多くの人が認識している年越しの時間は決まっていて、そこに合わせてテレビなどではカウントダウンもする。
それだけで、その瞬間は十分特別なものになるのだろう。
だからなのか、年越しの瞬間に「あること」をしてはいけないといった都市伝説も存在する。
それは、鏡や自撮りカメラなどで、自分の姿を見てはいけないというものだ。
見てしまうと、自分が死んだ時の姿を見てしまったり、何か不幸にあったりするなどと言われている。
この話は、某掲示板の書き込みが発端のようで、それからまとめサイトやツイッターなどを通じて広がったものだと私は認識している。
ちなみに、特定の時間に鏡を見たり、合わせ鏡をしたりすることで、何かが見えるという話は昔からたくさんある。
見える内容としては、未来の結婚相手、未来の自分の姿といった、未来に関することが多い。
中にはこれが降霊術の一種で、霊の姿が見えるという話もある。
特定の時間というのは、三時三十三分や、四時四十四分といったゾロ目の時間を指定されることが多い。
こう考えると、年越しも零時丁度ということで、ゾロ目の時間という条件を満たしていることになる。
内容的にも似ているし、年越しの瞬間に自分の姿を見てはいけないという話は、これらの元々あった話が発展、あるいは変化したものと考えられる。
元々の話は、時間の指定だけで日の指定はなかったから、時間さえ合えば一年中どの日でもできた。
でも、それが年越しの瞬間という一年に一度しかできないものに変わった。
こうした、まじないのようなものを行う際は、それを行うのが困難なほど大きな力を発揮すると言われている。だから、毎日できたものが、一年に一回だけになったという困難が加わった結果、何か危険なものになっている可能性は十分ある。
実は、一年前の年越しで、私の知り合い(以下、Cとする)が不思議な体験をしている。
Cはネット配信というものを趣味にしていて、年越しの瞬間も配信をしていた。
いわゆる顔出し配信というもので、Cは自らの顔を配信に映しながら、適当に雑談をしたり、視聴者のコメントに答えたりしていた。
そうしている間に、年越しまで後少しになり、Cは時計を見ながらカウントダウンを始めた。
そして、年越しの瞬間、Cはパソコンの画面に目をやった。
画面には、配信で映すために取り込んだ自分の顔が映っている。
でも、Cは年越しの瞬間に自分の顔を見てはいけないなんて噂を知らなくて、普通に見てしまった。
次の瞬間、画面に映る自分の顔が真っ黒になり、それが画面全体に少しずつ広がっていった。
突然の現象にCはパニックになりつつ、何とかしようとマウスやキーボードを操作した。でも、そうした操作は一切受け付けず、ついに画面全体が真っ黒になってしまった。
結局、Cはパソコンの電源を強制的に落としてから、再起動させた。
そして、放送を再開した時、視聴者からのコメントでさらに不思議なことに気付いた。
年越しの瞬間からCがパニックになっている様子は、パソコンを強制終了するまで、ずっと配信されていたらしい。
つまり、自分の顔が真っ黒になり、それが画面全体に広がっていく様子は、Cしか見ていなかったということだ。
それに、フリーズといったパソコンの不具合が発生した場合、普通はすぐに配信が止まるはずだ。でも、この時はあれだけおかしなことが起こったにもかかわらず、配信自体は正常だったそうだ。
後日、Cからこの話を聞いた時、私は例の噂を思い出して、すぐに伝えた。
だから、今後は年越しの瞬間に自分の姿を見ないよう、注意してくれると思う。
自分の姿を見るための手段というと、昔は鏡を見るというのが普通だった。
でも、今は配信だけでなく、自撮りなどもしやすい環境になっているので、図らずも自分の姿を見てしまう機会が多くなったように感じる。
ただ、年越しの瞬間だけは、自分の姿を見ないように注意してほしい。
そんな雑話でした。




