コックリさん
コックリさんというのは、ご存じだろうか。
いわゆる降霊術の一つで、多少やり方が異なるものもあるけど、エンジェル様やウィジャ盤なども同じと解釈していい。
簡単な手順として、まず用意するのは十円玉と紙だ。紙には五十音と鳥居、あとは「はい」「いいえ」など(数字や「男」「女」などを書く場合もある)をあらかじめ書いておく。
机などに紙を置き、紙に書いた鳥居の上に十円玉を置いたら、参加者は十円玉に人差し指を乗せる。
そして、
「コックリさん、コックリさん、おいでください」
と言うと、勝手に十円玉が動き出す。
その後、質問をすると、十円玉が特定の文字や語句のところまで移動して止まる。それが質問に対するコックリさんの答えということだ。
コックリさんを終える時は、
「コックリさん、コックリさん、お帰りください」
と言った後、十円玉が鳥居のところで止まるを待つ。
これで終了だけど、時々、十円玉が止まらずに動き続けることがある。その際は、何度も帰ってくれるよう、お願いしないといけない。
なお、正しい手順で終わらせる前に十円玉から指を離してしまった場合、コックリさんに呪われると言われている。
コックリさんを行った後、使った紙は捨て、十円玉もどこかで使わないといけないといった話もある。
ただ、この辺りは少しローカルルールに近いというか、そこまで徹底されていないように感じる。
色々とリスクもあるので、本来は気軽に行うべきものではない。
でも、手順が簡単ということもあり、学校の休み時間などを利用して、コックリさんを行う人達は時々現れる。
その結果、ちょっとした騒動に発展するケースもある。
私が通っていた中学校でも、コックリさんによる騒動が発生した。
隣のクラスでの出来事だったので、詳しい事情は知らないものの、複数人でコックリさんを行ったところ、体調不良を訴える生徒が大勢現れた。
結局、その生徒達は早退することになり、そのことが学年中の話題になった。
その後、先生が各教室でコックリさんを禁止することを怒りながら伝え、一先ず騒動は納まったといった形だ。
ちなみに、ご存知の方も多いと思うけど、コックリさんは自己暗示によって、自分達が無意識に十円玉を動かしているに過ぎないという説が一般的だ。
当時、先生が説明したのも、自己暗示――いわゆる催眠状態になることが危険で、現にそれで体調不良になっている。だから、コックリさんは禁止するといった内容だった。
霊が十円玉を動かしているとか、霊に憑りつかれて体調不良になったとか、そういった説は完全に否定していて、むしろ中学生にもなってそんなものを信じるなというほどだった。
さて、あれから長い年月が過ぎて、オカルトライターとなった私から当時のことを振り返ってみて、先生の対処は完璧なものと思える。
それは、コックリさんという怪異が実際に存在していたとしても、完璧な対処という意味だ。
前々回などで、信じることで怪異を作り出し、反対に信じないことで怪異を消す。そんな話を紹介した。
つまり、怪異を信じやすい生徒達に対して、それを信じなくさせることが一番の対処法になるわけだ。
もし、怪異が原因と信じて、それこそお祓いを頼むとか、問答無用でコックリさんを禁止するとか、そういった対処をすれば学校中の騒ぎになり、新たな怪異が生まれたかもしれない。
そうはせず、単なる自己暗示だと一蹴したうえで、催眠状態の危険性を理由にコックリさんは禁止する。
実際、コックリさんが単なる自己暗示という理由だけで片付けられる場合でも、この対処でいいわけだし、本当に感心したくなるほど、完璧な対処だ。
そのうえで、オカルト的な見解も付け加えておく。
降霊術は様々な方法があるけど、その中には催眠状態を利用するものが結構ある。
それこそ、自分の体や意識を霊に貸そうとする際は、意識がはっきりしていると難しく、深い催眠状態に入る必要があるそうだ。
それを踏まえると、コックリさんはこうした降霊術を簡略化して、十円玉を動かす程度の力を持った弱い霊を自らの体に降霊させる行為。そんな解釈はできないだろうか。
十円玉が勝手に動くのが怪異ではなく、無意識のうちに自らが十円玉を動かしてしまうのが怪異というわけだ。
まあ、当時先生の対処が完璧だったという考えは変わらない。
もしも今の記憶を持ったまま、当時の教室に私が戻ったとして、怪異じゃないかと反論する気もない。
というか、そんな反論をしたら、ただでは済まないだろう。
そして、そうした反論を持ちつつも、コックリさんを行うこと自体は、私もおすすめしない。
自らに暗示をかけ、ちょっとした催眠状態にしたうえで、霊を呼ぶなんて危険極まりない行為だ。
どうしてもコックリさんを行いたいというなら止めないけど、その際はくれぐれもご注意を。
そんな雑話でした。




