嘘が消した怪異
前回、嘘が怪異を作り出すといった話をしたけど、今回はその続きというか、逆の話をしよう。
多くの人が知り、その存在を信じた結果、単なる嘘が現実に存在する怪異になってしまう。
もしそうなら、反対に多くの人がその存在を信じなくなった場合、怪異はどうなるだろうか。
恐らく、怪異は消えてしまうのではないかと私は考えている。
前回「口裂け女」の噂が広がっていった経緯を紹介したけど、この噂が収束した理由は単純なものだった。
最も噂を広げていた小中学生が夏休みに入り、口裂け女の話題を出す人が急激に減ったのだ。
話題に出ないということは、もう現れなくなったのだろうとみんなが考え、それに合わせて目撃者も現れなくなった。
そして、小中学生が言っていただけの単なる噂だったのだろうといった話が出回ると、誰も口裂け女を信じなくなり、そんな噂があったといった程度のものになった。
ここには、いくつか嘘が紛れ込んでいる。
まず、口裂け女の目撃者が現れなくなったということはなく、その後も定期的に目撃者はいる。
私が直接聞いた話も、ここ十年ほどの間にあった話だった。
また、目撃者は子供だけでなく大人もいるわけで、小中学生の間にだけあった単なる噂とするのも誤りだ。
とはいえ、口裂け女の出現頻度が明らかに減ったのは確かだ。
これは前述したとおり、多くの人がその存在を信じなくなったからだと考えられる。
信じなくなった理由の中に嘘が紛れ込んでいようが関係なく、ただ信じなくなった。
これだけのことで、口裂け女は姿を見せることが少なくなったわけだ。
こうした話は多くの怪異で起こっていることだ。
特に、お化けや妖怪と呼ばれるものは、昔存在していたものと考える人が多いのではないだろうか。
これらは、昔話などで紹介されることもあり、近代化が進んだ今は存在しないものといった印象が強い。
最初から信じられないものとなると、当然現実の怪異として存在するのは難しいだろう。
また、こうしたお化けや妖怪と呼ばれるものが消えていった過程には、多くの嘘も影響している。
それは、お化けや妖怪が起こしていると思われる現象について、現実的な答えが提示されたことだ。
例えば、家鳴という妖怪は、知っているだろうか。
家鳴は、悪戯で家や家具を揺らす妖怪と言われている。
でも、例えばあなたの周りで家や家具が揺れたら、どう思うだろうか。
恐らく、周りの部屋で何か騒がしくしているか、地震などを疑う人が多いだろう。
実際、家そのものの欠陥で振動が起こるケースも多く、すべてがそうだと認識する人も多い。
ただ、中には原因不明のものも存在しているのだ。
それにもかかわらず、何かしらか現実的な理由があるのだろうという嘘によって、怪異として話題にされることはほとんどない。
かまいたちという妖怪は、まさに嘘が消した怪異として有名だ。
刃物で切られたような傷ができるものの、痛みはなく、出血もしない。そうした傷は、かまいたちによってつけられた傷と言われていた。
これには、科学的な説がいくつかある。空気中に真空状態ができて、それによって傷がついたというもの。風に飛ばされた小石などで傷がついたというもの。いわゆる、寒さなどが原因で起こるあかぎれのようなもの。
一見、科学的に説明されているようだけど、実はそうじゃない。
これらが原因と考えると、説明できない事象が残っているのだ。それにもかかわらず、多くの人はこの説を信じて、反対にかまいたちの存在を信じなくなった。
その結果、かまいたちに傷をつけられたなんて話をする人は皆無になり、存在すら消えてしまった。
こうした嘘によって消された怪異。これから消されようとしている怪異。そうした怪異は、数知れない。
最近、CGの技術が進歩した影響か、明らかに合成とわかる心霊写真や心霊映像をよく見るようになった。
その結果、すべての心霊写真や心霊映像が作り物だと考える人も増えているように感じる。
こうしたことが進んでいけば、すべての怪異が信じられない存在として、消えてしまうかもしれない。
怪異=悪いものと考えている人にとっては、それでいいと感じるかもしれない。
でも、怪異すべてが悪いわけではなく、存在が消えることで悪影響が出る怪異もある。そんなことを、知り合いの霊能力者が話していた。
だから、すべての怪異が消えることが、必ずしも良いこととは限らない。
まあ、私はオカルトライターだから、完全に怪異が消えたらネタがなくなってしまうので困る。
そうした本音を言いつつ、良い影響を与える怪異はずっとみんなから信じられ、存在し続けてほしいと心から願う。
そんな雑話でした。




