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名前を付けられた怪異

 それが何であるかを示すもの。名前とはそういうものだ。

 物や生物に名前をつけることで、それが目の前になくても、名前を伝えることで情報を共有できる。

 誰か特定の人を呼ぶ時は、その人の名前を呼べばいい。まあ、これについては同姓同名といった問題が時々あるけど、それは置いておく。

 ただ、名前を付けられるものが何なのかというのは、注意しないといけない。


 ある少女は、霊の存在を認識できる、いわゆる霊感を生まれた時から持っていた。

 霊感があるからといって、霊の見え方は人それぞれだ。透けて見える人もいれば、生きた人と同じようにはっきり見える人もいる。中には、生きた人と霊の見分けが付かないなんて人もいるそうだ。

 彼女の場合は、生きた人と同じようにはっきり見えるけど、それが霊だということは、なぜか認識できるというものだった。

 そのうえで、彼女は幼いながらの好奇心から、霊と話したり、時には遊んだりといった日々を過ごしていた。


 生まれた時からとなると、彼女にとってのそれは普通だった。

 自分に霊感があるとか、他の人にはない能力があるとか、そんな自覚を彼女が持つことすらなかった。

 時々、何かが見えるということを、両親に話す機会はあった。でも、彼女の両親は、子供の言うことだからと、彼女の話を適当に聞き流していた。そうしたことを繰り返していくうちに、彼女はこうした話を人に言わなくなっていった。

 結果、彼女の能力に誰も気付かないまま、時間だけが流れていった。

 そして、友達になりたいと近付いてきた「それ」も、彼女は受け入れてしまった。


 彼女のところに「それ」がやってきたのは、彼女が家で一人留守番をしていた時だ。

 一人で暇していた彼女としては、遊び相手ができたというぐらいの認識だった。そもそも、こうしたことは日常茶飯事だし、彼女にしてみれば、いつも通りといった感じだった。

 ただ、「それ」はいつもと少し違う存在だった。

 それまで、彼女に近付く霊は一期一会で、また会うということはなかった。

 でも、「それ」は彼女を気に入ったのか、その日だけでなく、繰り返し彼女のところに来た。


 繰り返し遊ぶ中で、「それ」は彼女の名前を何度も呼んだ。

 でも、彼女は「それ」が何かわからないから、名前を呼ぶことができなかった。

 彼女が「それ」に名前を聞いても、名前はないと答えた。

 その答えを受けて、彼女は「それ」に名前を付けた。

 後で振り返ると、それが過ちだったようだ。


 それから少しして、彼女が家に帰ると、亡くなった両親の姿を見ることになってしまった。

 両親は全身を傷付けられ、それこそ血だらけといった状態だった。

 家の中は、いたるところが血で真っ赤になっていたけど、所々に不自然な光景ができていた。

 床や壁や天井、彼女が「それ」に付けた名前が血で無数に書かれていた。


 何が目的で「それ」がこんなことをしたのかはわからないものの、これを起こしたのは「それ」に間違いなかった。

 そして、まだ彼女は幼かったけど、「それ」に名前を付けたことで、これが起こってしまったというのは何となく理解できた。


 人は何にでも名前を付けたがる生物だ。

 でも、名前を付ける際には、一度気持ちを落ち着かせて考えてほしい。

 もしも、怪異に名前を付けようとしているなら、それは絶対にやめた方がいい。


 これまで、「口裂け女」や「人面犬」といった、名前を付けられた怪異は、全国的に広がってしまった。あそこまで噂が広まってしまったのは、特徴を示す名前を付けられたことが原因だと、私は考えている。

 本来は名前のない怪異にとって、名前を付けられるというのは、とても重要なことなのだろう。

 だから、怪異に名前を付けることは、絶対におすすめしない。


 そんな雑話でした。

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