超能力者は手品師に劣る
以前も話した通り、オカルトとはいっても、基本的に心霊関係の話が中心になるものだ。
なので、こうした心霊以外のネタがあると、私としても珍しいなと思ってしまう。
そんなわけで、今回は超能力の話をする。
先日、超能力者というものに取材する機会があった。
とはいえ、私が持つ超能力に関する知識というと、心霊関係の知識に比べて全然ないので、かなり不安だった。
さらに言うと、私が持つ知識は、超能力に否定的なものばかりだ。
日本でも何度か超能力ブームなんてものがあり、かなり古い世代でスプーン曲げが流行ったなんて話は有名だろう。
中には本当にスプーンが曲がったなんて話もよく聞く。
ただ、そうした超能力が、実は手品だったとネタばらしされた例も多い。
スプーン曲げに関しても、てこの原理を利用したものだといった話を聞いたことがある。
海外で、超能力を証明できたら賞金を与えるなんて言った人がいた。
でも、彼のところに来た超能力者は、みんな自称超能力者だった。
現状、超能力を証明して、賞金を得た人は一人もいないとのことだ。
そんなわけで、私は超能力について否定的な考えを持ちながら、取材する形になった。
一応言っておくけど、さすがに失礼極まりないので、取材はできないと断りもした。
でも、こうした否定的な考えを持っている人にこそ取材してほしいなんていう、断りづらい返答をもらって、結局私が取材することになった。
その方は、三十代の男性で、どこにでもいる普通の人といった感じだった。
ライターとして、普通という表現は何も伝わらないから、避けるべきだと知っている。
とはいえ、本当に普通としか表現できなかった。何というか、特徴を伝えるのが難しい人だった。
軽く雑談をしてみたけど、気さくというわけじゃないし、だからといって全然話せないコミュ障な感じでもなく、本当に普通だった。
数え切れないほど取材をしているので、取材相手にどんな対応をすればいいのかは、何となくわかる。
まずは関係のない話で打ち解けた方がいいこともあれば、いきなり本題に入った方がいいこともある。
そのうえで、彼に対してはすぐ本題に入るべきだと判断した。
なので、私は彼の超能力を早速披露してもらうことにした。
事前に連絡を取って、彼から用意してほしいものを聞いた。それは、トランプだ。
どこのトランプがいいかということだけでなく、使い古したものでも、新品のものでも構わないとのことで、私は三種類のトランプを用意した。
新品の紙トランプに、同じく新品のプラスチックトランプ、それと家に丁度あった古いトランプという、かなり適当なラインナップだ。
そのラインナップを見せたうえで、彼はどれを使ってもいいし、何なら全部使ってもいいと余裕の表情を見せた。
彼ができる超能力は、いわゆるカード当てだ。
ただ、何のカードでも当てられるというわけではない。
エースのカード四枚の中にジョーカーを一枚加え、それをよく混ぜた後、ジョーカーを当てるというものだ。
早速、私はエース四枚とジョーカーを混ぜて、彼に差し出した。
すると、彼は特に考えたり、手をかざしたりなんてこともしないで、すぐに一枚のカードを表にした。
そのカードは、見事ジョーカーだった。
とはいえ、確率でいえば、五分の一という比較的当てやすいものだし、何度かやってみてほしいとお願いしてみた。
そうして、驚くべき結果が出た。
彼は、必ずジョーカーを当て続けた。
途中でトランプを変えて、私が持ってきた三種類のトランプは全部使った。
それでも、彼はジョーカーを当て続けた。
一回や二回ならまだしも、ここまで連続で成功するのは、さすがにおかしかった。
「どんなトリックなの?」
何かトリックがあるんじゃないかという疑惑が消えなくて、私はそんな質問をした。
そうしたら、彼は苦笑して、
「何もないんですよ」
と答えた。
しばらく、彼のカード当てを見せてもらったものの、私はトリックを見つけることができなかった。
でも、手品師なら、これぐらいのことはできるんじゃないかなという疑惑は残った。
そんな私の考えを察したのか、彼はこんなことを言ってきた。
「今から、手品をしてもいいですか?」
「え?」
「どのトランプでもいいので、よく混ぜてください」
そう言われて、私の中に天邪鬼な考えが生まれた。
そして、三種類のトランプをメチャクチャに混ぜてみた。
「これでやって!」
「アッキーさん、かなりSなんですね」
「一種類とは言っていないでしょ!」
かなり意地悪なことをして、彼を困らせようと思ったのに、彼は困った様子を見せることなく、私がメチャクチャに混ぜたトランプを近くに寄せた。
「じゃあ、やってみます。アッキーさんの好きなカードは何ですか?」
「好きなカード?」
「数字とマークを言ってください」
「……じゃあ、ハートのクイーンで」
私がそう言うと、彼は三枚のカードを差し出してきた。
三種類のトランプは裏がそれぞれ違うから、裏を見ただけで、彼が三種類のトランプから一枚ずつカードを選んだというのはすぐわかった。
「見てください」
彼に言われるまま、三枚のカードをめくると、全部ハートのクイーンだった。
「どうやったの?」
「今のは、手品ですよ」
彼が何を言ったのか、私は理解できなかった。
「え?」
「超能力よりもすごいことが、簡単にできるのが手品なんです。だから、超能力なんて持ってても、何の意味もないんですよ」
「どういうこと?」
「手品師は、こういった不思議なことで人を楽しませるエンターテイナーです。でも、僕はそんなことできません。人を楽しませられないという点で、僕は手品師に劣るんです」
この世に存在する超能力……少なくとも、彼の超能力は、大したことない能力だ。
手品師がトリックを駆使して人々を楽しませる中、彼の超能力は人を楽しませるものじゃない。
もっと見せ方を変えるとかすれば、エンターテイメントになりそうだけど、あいにく彼はそういったことが苦手だそうだ。
実際のところ、淡々とカード当てを見せられるだけでは、すぐに飽きてしまったというのが本音だ。
そんなわけで、こんな機会でもなければ、彼が超能力を披露することはないとのことだ。
「どんな超能力を見せてくれるかと、期待してたかもしれませんが、こんなのですいませんね」
「いえ……まあ、私はどちらも手品だと、まだ疑っているけどね」
「さすがに、こんなしょぼい手品を見せるために呼びませんよ」
「確かに、それもそうなんだよね」
言い方は悪いけど、あまり大したことないからこそ、彼の超能力は信憑性があった。
もしかしたら、彼以外の超能力者も、案外こんなものなのかもしれない。
事実は小説より奇なりなんて言葉があるけど、超能力については、残念ながらそうじゃないようだ。
ちなみに、取材が終わろうかというところで、私は最後の質問をした。
「最後にやってくれた、ハートのクイーンを全部当てたやつ……実は何のトリックもない、超能力だったりして?」
「あ、いや……」
肯定するにしても否定するにしても、何かうまい返しがありそうなのに、彼が困った顔を見せるだけなので、私は思わず笑ってしまった。
そうして、彼の取材は終わった。
そのうえで、私はこう言おうと思う。
超能力者は手品師に劣る。
そんな雑話でした。




