同じ女の幽霊
複数の者が様々な場所で、同じ怪異に遭遇する。こうしたことは珍しくない。
有名なところとしては、全国的に広まった、口裂け女や人面犬があげられる。
これらの共通点としては、誰もが認識しやすい特徴を持っているところだ。
口が裂けた女、人の顔をした犬、こうした特徴を持っているから、目撃者達は「自分も同じものを見た」と主張できるわけだ。
ただ、時にはこれに該当しない話もあるようだ。
これは、既に何度か紹介している心霊好きな男友達Sの体験談だ。
Sは心霊ものの投稿映像を扱った作品が好きといった話を前にしたけど、その好き度はなかなかのものだ。
なんと、その映像作品をみんなで見ようというオフ会に参加したことがあるそうだ。
オカルトライターの私でも、さすがにそこには参加できない……うん、多分できない。
そのオフ会で、お互いに怖い話をする機会があり、その中でこんな話をした人がいた。
ある日、電車に乗っていた時のことだ。車内は空いていたので、座席に座って目的地を目指していた。
ふと向かいの窓に目をやると、窓枠のところに何かがあった。
パッと見た時は、何か豆みたいなものがいくつかあるなと感じるだけだった。
それは縦に四つ並んでいて、何かの拍子に付いたものだろうかと思ったけど、何なのかはわからなかった。
それから、ふと下へ視線を移動させると、少し離れたところにまた同じものが四つ並んでいた。
そこまで気付いたところで、それが何なのかわかった。
ありえないことだけど、それは人の指だった。何かが真横になって、窓枠のところにしがみついているのだ。
次の瞬間、こちらが気付いたことをきっかけにしたのか、両手の間からゆっくりと頭が見え始めた。それから少しして顔が見えたところで、それが女だとわかった。
さすがに恐怖を感じて、一瞬目をそらした。ただ、もしかしたら女が中に入ってくるんじゃないかと思って、すぐにまた女の方を見た。すると、そこにもう女の姿はなかった。
話は、これで終わりじゃなかった。
この話を友人にしたところ、一人が「自分も同じ女の幽霊を見た」といった話を始めた。
こちらは、電車に乗っている時ではなく、駅のホームにいる時だった。
何か気配を感じて、そちらに目をやったら、向かいのホームに立つ女に気付いた。
その瞬間、その女が生きた人間じゃないと直感でわかり、すぐに目をそらした。
そして、小さな声でお経を唱え、その女がどこかへ行ってくれるのを祈った。
それから少しして、さすがにいなくなっただろうと視線を戻すと、すぐ目の前に先ほどの女が立っていた。
さすがにまずいと、すぐその場を離れたところ、それ以上は特に何も起こらなかった。
この話を聞いて、Sはある疑問を持った。
二人の見た女は、出現場所や行動も違うのに、なぜ「同じ女の幽霊」という認識になったのか。
普通なら関係のない別の幽霊と考えそうなものなのに、どうしてだろうか。
そうしたことがSの中で引っかかった。
それからしばらくして、Sは夜勤の帰り、始発電車で帰宅しようとしていた。
Sは丁度止まっていた電車に入った後、乗り換えのことを考えて、最後尾の車両へ向かって歩いていた。
その時、一つ隣――今自分が向かっている先の車両に、女が立っているのが見えた。座席はいくらでも空いているのに、座る様子がなく、何だかおかしいなと、女のことを少し不気味に思った。
電車の出発まではまだ時間もあるし、Sは一旦電車を降りると、駅のホームを一両分歩いて、それからまた電車に戻った。
考え過ぎだというのは理解しつつ、これで避けられるならいいだろうとSは思っていたけど、少しして足を止めた。
前を見ると、また先ほどの女が立っていたのだ。
向こうが移動しようとしている様子はなかったのに、なぜか先回りされている。そのことが急に怖くなるのと同時に、Sは気付いた。
なぜかといった理由はうまく説明できないけど、あの女は話に聞いていたものと同じ女の幽霊だ。そんな確信がSの中にあった。
結局、Sは電車を一本見送ることにして、一旦ホームから離れた。
後で戻った時には、もう女の姿もなく、Sは安心して帰宅した。
この話をSから聞いた時、どうして「同じ女の幽霊」だと思ったのか、しつこく質問した。
でも、Sから納得のできる答えはなく、ただSは確信していると話していた。
もしも、この話を聞いて、自分も同じ女の幽霊を見たという方、あるいは今後同じ女の幽霊を見た際には是非私に知らせてほしい。
そんな雑話でした。




