信用できる霊能力者はいないのか?
前々回から引き続き、先日会った他のオカルトライターに聞いた話を紹介する。
とはいえ、さすがに頼り過ぎなので、一旦は今回で最後にする予定だ。
今回は「信用できる霊能力者はいないのか?」という話題だ。
皆さんの中には、霊障にあってしまい、それを解決してほしいと思ったこと、あるいは知り合いがそのような状況になってしまったことはあるだろうか? そうした時、神社などでお祓いをお願いするか、いわゆる霊能力者に除霊をお願いするかといった選択になるかと思う。
我々オカルトライターも、心霊という科学では説明できないことを扱い、それを仕事というか商売にしている。
そう考えると、除霊することを商売にしている霊能力者は、同業者と言えるかもしれない。
それを踏まえたうえで言うけど、そうした商売でやっている霊能力者は、ほとんど信用できないと断言しておく。少なくとも、私は信用できる霊能力者に会ったことがない。
一応の補足をしておくと、私の知り合いの霊能力者は本物で、信用できる人だと思っている。ただ、その人はその能力を商売にしていない。
ここで話題にするのは、霊能力者という商売をしている人についてだ。
いわゆる霊感商法といった、不安を煽って大金を要求する詐欺は昔からあり、問題になっている。
これに限らず、詐欺事件というのはなかなか難しく、犯人に騙す気があったことを証明しないといけない。
それが科学で証明されていない心霊関係となるとまた大変で、例えば勘違いだった場合は、騙す気がなかったということになってしまう。
実際、何の能力も持たないのに、自分には除霊ができると勘違いしている自称霊能力者などもいて、この場合はどういった罪になるのかというと、よくわからなくなる。
そもそも依頼する側に起こっている問題が、まったく霊と関係のない、単なる気持ちの問題などによって引き起こされていることもある。
その結果、偽物の霊能力者が来たことでも気持ちが晴れ、問題が解決してしまうことがあるのだ。
大金を払ったことも、あれだけのお金を払ったのだから、問題が解決されたはずと信じる理由になってしまう。そうして、霊感商法という詐欺にあっていながら、今もそれに気付いていない人も多いだろう。
先日会ったオカルトライターに至っては、本物と信用できる霊能力者に一度も会ったことがないと話していた。
その代わり、過去に霊感商法を行っていた人と会い、その人からある体験談を聞いたそうだ。
その話をここで紹介する。
彼(以下、Rとする)は役者を目指していて、舞台に出たり、オリジナルビデオ作品に出演したりはしているものの、収入は少なく、バイトしながらの生活をしていた。
そんな中、霊感商法を行っている小会社を見つけ、犯罪と知りつつも収入が良いという理由で何の気なしに入った。
演技ができるというのは、詐欺を行う際に案外活用でき、Rを偽物の霊能力者と見破る者はいなかった。それどころか、Rが来たことで依頼者の気持ちが晴れ、問題が解決することも多かった。
そんなことが続き、時には同僚から、本物の霊能力者なんじゃないかと言われるほどRは大活躍だった。
そんなある日、アパートの大家をしている人から除霊の依頼があり、Rが担当することになった。
そのアパートは一階と二階に二部屋ずつ、計四部屋だけの小さなアパートだった。
一階の一部屋は大家が住んでいて、その隣の部屋は一人暮らしをしているサラリーマンが借りていた。また、二階の一部屋、大家の部屋の真上にあたる部屋は女子大生が借りていて、こちらも一人暮らしをしているとのことだった。
問題は残った一部屋で、サラリーマンにとっては真上、女子大生にとっては隣の部屋だ。
ここは現在空き家で、誰も住んでいない。それにもかかわらず、昼夜問わず壁を叩く音や、足音が聞こえてくるとのことだった。
大家は多少部屋が離れているので、そうした音に悩まされることは少なかった。でも、二人から音が気になるから何とかしてほしいとお願いされたので、色々と調べたそうだ。
ただ、水道管なども含め床下や天井を調べても原因はわからず、それなのに音はひどくなる一方ということで、ついに幽霊が原因ではないかと考え、Rの会社に依頼したというわけだ。
Rがアパートに着いた時、辺りはすっかり暗くなっていた。
ちなみに遅く行ったのはわざとで、時間外料金を請求するためだ。
Rの会社では、こういったところでも少しずつ追加でお金を取るといった手段を定期的に使っていた。
Rを出迎えたのは、大家だけでなく、そこに住むサラリーマンや女子大生も一緒だった。そして、二人からこれまでの経緯を詳しく説明された。それを聞いたうえで、Rはなかなか厄介な依頼だなと感じたらしい。
まず、音の原因が業者などでもわからないんだとしたら、Rが調べたところでわかるわけがない。
気持ちの問題で幻聴を聞いているだけなら楽だけど、二人から話が出ている時点でそれは考えづらい。ということは、実際に音が鳴っていると考えるのが自然だ。
依頼としては音が鳴らないようにしてほしいって単純なものだけど、原因もわからないのにそんなこと不可能だ。
そこまで考えたところで、Rは適当に苦戦していることにしたうえで、それでも少しは解決に向かっているとか適当なことを言って終わりにする作戦でいくことにした。
それで、当初の金額よりも多少は少ない金額で今回はいいってことにして、逃げてしまえばいい。それでも、十分過ぎるほどのお金が手に入るし、Rは問題ないだろうと軽く考えていた。
一通り話をして、大家以外の二人は部屋に戻った。それから大家は問題の部屋の鍵をRに渡した。
「それじゃあ、お願いしますね」
結局、大家もそれだけ言うと、部屋に戻ってしまった。
Rは、誰も一緒じゃないのかと思いつつ、むしろ誰もいないなら、いつもみたいに適当なお経を唱える必要もなくて楽だなと気にしなかった。
そして、Rは二階にある問題の部屋へ行くと、大家から借りた鍵でドアを開けた。
ドアを開けた瞬間、何だか焦げ臭いなとRは感じた。
持ってきた懐中電灯で中を照らした瞬間、すぐにRは異変に気付いた。
どういうわけか、部屋の中は真っ黒に焼け焦げている様子だった。
それこそ、ここで火事があって、それをそのまま放置しているかのようだった。
「何だこれ?」
Rは恐怖というより、どうなっているんだという疑問の方が強く、部屋の奥へ進んでいった。
部屋の奥も玄関と同じで、天井も壁もボロボロだし、ただただ異様だった。
空き部屋とはいえ、人が住むアパートに、こんな部屋があっていいのか。大家はなぜ放置しているのだろうか。そもそも、部屋がこんな状態になっていることを、なぜ誰も教えてくれなかったのだろうか。
色々な疑問が生まれ、もう一度詳しい事情を聞こうと、Rは部屋を出ることにした。
その瞬間、床や壁、天井を激しく叩く音が突然鳴り出した。
当然、光を当ててもそこには何もない。それなのに、激しく振動するほど、目に見えない何かがそこら中を叩いているのだ。
「何なんだよ!?」
Rは慌てて、部屋を飛び出すと、すぐに大家の住む部屋へ行って、激しくドアを叩いた。
でも、大家は出てこなかった。
「すいません! ちょっといいですか!」
いくら叫んでも反応がなく、変だなと思いつつもRはドアを叩き続けた。
「何をしているんだ?」
不意に後ろから声をかけられ、Rは慌てて振り返った。
そこにいたのは、初老の男性だった。
「ああ、うるさくしてしまって、すいません。ここの大家さんに用事があって……」
「何を言っているんだ? こんなところに人が住んでいるわけないだろ」
「え?」
Rは意味がわからず、またアパートに目をやった。
そこにあったのは、全焼したアパートだった。
さっきまでは普通に人の住むアパートって感じだったのに、今はどう見ても人が住める状態じゃなかった。
「これ……何があったんですか?」
「ああ、この前火事があったんだよ」
「そうですか……」
Rはすべてを察した。
さっき会った大家も、サラリーマンも、女子大生も、みんな生きた人間ではない。
というか、さっき見たアパートすら、この世のものではない。
ふと、Rは大家に借りた鍵のことを思い出した。
ドアを開けた後、何の気なしにRは鍵をポケットに入れた。
Rは恐る恐るポケットに手を入れ、そこに入っていた鍵を取り出した。
その鍵はアパート同様、真っ黒に焦げていた。
「おまえ、何で俺の鍵を持っているんだ?」
「え?」
Rは何を言われたのか理解できないまま、反射的に振り返った。
すると、そこにはもう誰もいなかった。
Rは状況を理解するよりも早く鍵を地面に落とすと、その場から逃げ出した。
Rは小遣い欲しさに、少しの間は仕事を続けようとしたけど、さすがに長続きはせず、それからすぐに辞めたそうだ。
今は役者の夢も諦め、バイトしながらの生活を続けているらしい。
また、これが原因というわけではないようだけど、Rの勤めていた会社も少しして潰れたとのことだ。
自称霊能力者が本当の怪異に遭遇する。こんな自業自得としかいえない状況になるのは、珍しいケースだろう。
実際は、今も詐欺を働き続ける自称霊能力者が存在している。
皆さんは、くれぐれも騙されないよう、注意してほしい。
そんな雑話でした。




