どうして幽霊は服を着られるのか?
前回に続き、先日会った他のオカルトライターに聞いた話を紹介する。
今回は「なぜ、幽霊は服を着られるのか?」という話題になった時、聞いた話だ。
これまで、私の中でも色々と考えを持っていたけど、今回聞いた話は私の考えを変えるものだった。
少し間延びするかもしれないけど、これまでの私の考えも含めて、話したいと思う。
幽霊は科学的に存在を証明されていないけど、こういうものだろうといった考えはある程度一般化されている。
簡単に言うと、肉体を失って魂だけ、言い方を変えると精神だけの状態になった存在が幽霊というものだ。
この前提で考えた時、どうして精神だけの状態になった幽霊が、精神など持たないはずの服を着られるのだろうかといった疑問を持つ人が一定数いる。
幽霊の目撃談は様々あるけど、全裸の幽霊を見たという話はあまり聞かない。写真や映像で幽霊の姿が映っている場合でも、大抵は服を着ている。
コンプライアンスの問題でテレビなどでは紹介できないけど、実は全裸の幽霊を目撃したという人はたくさんいる……なんて情報は、少なくともオカルトライター達の間に入ってきていない。なので、本当に全裸の幽霊というのは珍しいもので、大抵の幽霊は服を着ていると考えられる。
昔話に出てくる幽霊というと、白装束を着て、頭に白い三角巾を着けた格好をしているというのが有名だろう。様々な形で絵にもなっているし、どういった姿か想像できる人は多いと思う。
これはいわゆる死に装束で、亡くなった人に着せるものだ。亡くなった人が着る=幽霊も着るということなのか、昔話の幽霊は死に装束で姿を見せるものが多いようだ。
最近の幽霊目撃談だと、その人の生前の恰好で現れるといった話をよく聞く。
学生の幽霊であれば制服、サラリーマンの幽霊ならスーツといった、一般的な話だけではない。その人のお気に入りの恰好で現れるという話も多くある。
中には帽子を被っていたり、アクセサリーを着けていたり、随分とお洒落な幽霊もいるそうだ。
こうした形で、幽霊は服を着ているのが一般的だ。
でも、最初に話した通り、幽霊が服を着ているのはおかしいという意見もある。
どうして幽霊は服を着られるのかという話については、これまでも色々と聞いていて、私の中では大きく二つの説に分けられた。
とはいえ、これまで私が聞いた説はどれも納得できるかというと難しかった。
一つ目は、幽霊など存在しない説だ。まあ、いわゆる幽霊否定派の人達の意見というやつだ。
彼らに言わせると、すべての幽霊は単なる幻覚だそうだ。
幽霊の目撃者は、初めから幽霊はこんな姿だろうと想像していて、実際にその通りの姿をした幽霊を目撃している。
亡くなった後に着せられた服で現れるのだろう。生前よく着ていた服で現れるのだろう。
そんな風に思いつつ、その人に会いたいという願いなどから幻覚を見て、それを幽霊と勘違いしているとのことだ。
ついでに心霊写真や心霊映像は、すべてトリックか撮影時のミスということに彼らの中ではなっているそうだ。
幽霊は全裸のはずなのに、服を着ているなんておかしい。だから、服を着た幽霊を見たなんて話は信用できない。こんな理論は乱暴だけど、一応筋は通っている。
でも、私は幽霊の存在を信じたい人なので、この説は全力で否定させてもらう。
二つ目は、服なども幽霊になっているという説だ。
前提として、精神だけの状態になったのが幽霊と考えると、服などにも精神があるのかという疑問が出る。
ただ、物に魂が宿り、妖怪化するといった昔話は多くある。古い傘のお化けなんて言って、その姿を想像できる人もいるだろう。
大切にしている物に魂が宿るなんて考えは、今でも一般的なものとして知られている。人形に魂が宿ったなんて話も時々聞くし、精神を持たないはずの物が幽霊になるというのは、そこまでありえない話というわけじゃない。
生前よく着ていた服や、自らの死後着ることになる服に何かしらかの思いを持ち、それが一緒に幽霊化していてもおかしくない。幽霊は、そうして幽霊化した服を着ているのだ。
これまで、私はこの説を信じていた。とはいえ、納得できない部分は多々あった。
お気に入りの服ならまだしも、死に装束に思い入れを持つ人なんてあまりいないだろうし、そもそも服を幽霊化させるのは誰かって疑問もある。
亡くなった人がやっているとして、全員に物を幽霊化させる能力があるのか。その能力を持たない人は、服を幽霊化できずに全裸で過ごさないといけないのか。
色々とツッコミどころ満載だ。
でも、今回聞いた説は、上の二つと違って、しっくりきた。
随分と遠回りしたけど、やっと本題ということで、その説を紹介しよう。
突然だけど、自分自身の姿を想像してみてほしい。
注文を付けるとしたら、いつか自分が死んで幽霊になった後、誰かに会いに行くという前提で自分自身の姿を想像してほしい。
試しに目を閉じて、頭の中に幽霊になった自分自身の姿を想像してみるのもいいだろう。
さて、これで自分自身の全裸を想像した人は、どれだけいるだろうか?
幽霊は、肉体を失って精神だけになった存在だ。
だから、自らが想像した自分自身の姿が、幽霊となった自分自身の姿になるはずだ。
自分が亡くなった後、葬式などで着ることになる死に装束。自分のお気に入りで、いつも着ていた服。
考え方は人それぞれ違うだろうけど、そうして想像した姿が、幽霊になった後の自分の姿ということだ。
これが、今回聞いた説だ。
考えてみれば、幽霊は様々な姿に変化するといった話もよく聞く。
精神そのものなんだとしたら、好きな時に好きな格好になるといったことも自由自在なのかもしれない。
誰かを恨んで亡くなった人が悪霊になった場合、その姿は恐ろしい姿になるというのも、その人がそうした姿になることを望んだからと考えると納得できる。
むしろ、精神そのものだからこそ、人に見せたくないはずの全裸で現れたらおかしいのだ。
私も含め、すべての人、生物はいつか死ぬ。
オカルトライターとしては、幽霊として人前に現れて、少しでも幽霊の存在を多くの人に証明したいなんて願いを密かに持っている。
その時、自らはどんな姿になりたいかなんて考えは馬鹿げているだろうか?
皆さんは死後、幽霊になるならどんな姿になりたいかなんて、考えたことすらないかもしれない。
でも、これを機にほんの少しでも考えてみてほしい。
死後、生前お世話になった人に幽霊として会える機会をもらえた時、みすぼらしい恰好ではなくて、それなりにお洒落をしたいって気持ちは、生前も死後も変わらないはずだと私は思う。
とりあえず、全裸の幽霊として人前に現れることだけは、おすすめしないと言っておく。
そんな雑話でした。




