呪いは存在するか?
先日、他のオカルトライターと会う機会があり、様々な話をした。
その中で、「呪いは存在するか?」という話題になり、相手のオカルトライターから興味深い話を聞いた。
こちらに掲載していいとの許可も頂いたので、今回はそちらを紹介する。
ある男性(以下、Nとする)は、営業職に就くサラリーマンだった。
営業成績は良く、上司やお客さんからは高く評価されていた。
まだ子供はいないものの結婚していて、一軒家のマイホームも手に入れていた。
そんな順風満帆といった感じのNに、呪いがかけられた。
とはいえ、呪いをかけられた当初、Nには何の異変もなかった。
最初の異変は、ある朝のことだった。
Nが朝食を取っていると、妻が何かを気にした様子で、
「あなた、最近体調は崩していない?」
と聞いてきた。
「急に何だ?」
「いえ、その……何だか元気がないように見えたから……」
「俺は別に何ともない」
Nは特に体調を崩しているわけでもなかったから、妻の言葉に不機嫌な態度を示した。
「……そう、ごめんなさい」
妻がすぐに謝って、その時はそれで済んだ。でも、そもそもで妻が体調を心配するなんて珍しいなとNの中で何か引っかかった。
ある日、Nが会社に着くと、同僚が近付いてきた。
「Nさん、お疲れですか? 何だか元気がないようですけど?」
同僚は心配した様子でそんなことを言ってきた。
「急にどうしたんだ? 別にいつも通りだ」
「すいません、ちょっと気になったんですけど、それなら良かったです」
同僚はそれだけ言うと、自分の席に戻った。
何だか気持ち悪いなと思いつつ、妻の件もあったし、自覚していないだけで、仕事の疲れなどが残っているのかもしれない。
その時のNはそう考える程度だった。
その後、連休を利用して、Nは古い友人と会うことにした。
Nと友人は昔話でもしようと居酒屋に入り、色々と懐かしい話をして楽しんでいた。
そうしたら、不意に友人から
「何だか調子が悪いみたいだけど、大丈夫か?」
と質問された。
「まあ、仕事の疲れはあるけど、大したことない」
「それならいいけど、あまり無理はするなよ」
久しぶりに会う友人にまで体調を心配された。そのことがNの中で引っかかりつつ、その日は友人との時間を楽しんだ。
それから数日が過ぎた頃、Nは自覚できる形で体調を崩し始めていた。
風邪を引いているわけではないのに、どこか体が怠いと感じることが多くなっていった。
それだけでなく、たとえ疲れていてもなかなか眠れない日が続き、ドンドンと疲れがたまっていった。
さすがに病院へ行ったものの、これといった原因はわからず、次第に自らの体調不良をストレスに感じるようにもなった。
ある日、Nは仕事で大きなミスをしてしまった。それは体調不良やストレスが原因だったけど、自分がそんなミスをするなんてありえないと、Nは大きく落ち込んだ。
そして、そうした落ち込んだ気持ちを少しでも落ち着かせようと、酒に溺れるようになっていった。
そんなことをすれば、ますます体調を悪くしてしまうのに、Nは仕事を終えると居酒屋へ行き、浴びるように酒を飲んでから帰るという日々を続けた。
そうして泥酔した帰り道、Nはふらついた拍子に車道へ飛び出て、トラックにひかれてしまった。
一命は取り留めたものの、身体に障害が残り、仕事を辞めただけでなく、妻とも離婚することになった。
こうして、Nにかけられた呪いは成就されたというわけだ。
さて、私はある重要な情報を隠してここまで話してきた。
それは、「誰がNを呪ったか」という部分だ。
ここから、その部分を話していこう。
Nを呪ったのは、ある「呪い代行サイト」を利用する人々だった。
そこは、呪ってほしい人の簡単なプロフィールや写真を投稿できるようになっていて、それを見た人がそれぞれ思い思いのやり方で呪いを実行する形になっていた。
特に組織的なものなどではなく、この人を呪ってほしいといった不満を投稿することで、日々のストレス発散になればといった程度のサイトだ。
ただ、中には呪いは成就するものだと強く信じている人もいるそうだ。
そこにNを呪ってほしいと投稿したのは、Nの妻だった。
表にはあまり出さなかったものの、妻はNの横暴な態度に参っていた。なかなか子供ができないことをネチネチと言われたり、料理がまずいとケチをつけられたり、不満ばかりの毎日だった。
そんな毎日が嫌になり、妻はNを呪ってほしいと投稿した。
それから、妻はいつNに呪いがかかるだろうかと常に気にしていた。だから、あの日の朝、
「あなた、最近体調は崩していない?」
といった体調を気にする質問をしたわけだ。
Nの同僚も呪い代行サイトを利用していた。
同僚は営業成績の良いNを密かに妬んでいたから、Nを呪ってほしいという投稿を見た時、呪いが成就してほしいと心から願った。
少し時間が過ぎたある日、呪いの影響が何かしらか出ているのではないかといった期待から、同僚は、
「Nさん、お疲れですか? 何だか元気がないようですけど?」
といった質問をした。
Nの古い友人も呪い代行サイトの利用者だ。
周りからは親友のように思われていたけど、この友人もNの横暴な態度に不満を持っていた。
Nから久しぶりに会わないかと誘いがあった時、友人の興味はNに呪いがかかっているかどうかということだけだった。そうした目で見ると、久しぶりに会うNは体調を悪くしているように見えた。
Nに呪いがかかっているようだと感じて、友人は嬉しいと思う気持ちを隠しながら、
「何だか調子が悪いみたいだけど、大丈夫か?」
と言った。
Nは様々な人から体調を心配され、当初は何の自覚もなかったものの、次第にどこか悪いのかもしれないと思い始めた。
そうした気持ちの落ち込みから少しずつ体調を崩していき、最終的にNは破滅の道を進んでしまった。
ここまでの話に、霊的な部分は一切ない。
でも、私はここまで話を聞いて、こう思った。
呪いは存在する。
そんな雑話でした。




