攻防
ネット麻雀で国士に振り込んでしまいました。本当に目から火が出るかと思いました笑
思えば、少女の攻撃やギラファの攻撃をバリアで防いだあの時もそうだ。そして、ギラファの攻撃自体や同じくバリアで防いだ行為もそうだ。それはつまり、自分が望んだという事実だ。バリアもビームもこうなれば良いというような想像や意識下における願望。それがこの世界で現象となって現れている。でなければ余りにも都合が良すぎる。
「……頼む」
僕はペンダントを握りしめ、必死に頭の中で想像した。この状況を打破できるウェポンを。その時、ペンダントに再び輝きが満ちた。そして光粒子が虚空に実像を形成し始めた。僕はそのウェポン……一本の弓を手に取った。体のサイズにぴったり合い、弓全体が乱反射する海面のようにきらめている。
「バカ!早くしてよ!」
少女は苦痛で顔をゆがめていた。……別に忘れていたという訳ではない。
「ごめん、その刀を貸して!」
「はぁ!?……もうしょうがないわね!」
少女はビームを刀の切っ先を変えることで若干逸らし、自分自身は神がかりな回避を見せ、ものの見事にビームから身をよけた。そして焼け跡のついた緋刀をこちらへ投げた。それを右手で受け取った。ずっしりとした重量感が右手から伝わる。こんなに重たいものを投げていたのか。ひとしきり驚きながらそれを弓の弦に添わす。弓から発生する光粒子が刀を包み込んだ。僕は刀を矢のように引き、引いていた手を放した。放たれた刀、改め矢は猛スピードでギラファのビームと対峙した。両者は互いにぶつかり合い、矢はビームを真っ二つに切り裂いた。その勢いのまま、ギラファに突き刺さろうと襲い掛かる。反射的に掲げられたバリアもその勢いに飲まれるように突破され、矢はギラファの左腕を掠めた。
「ぐ……痛い」
ギラファの左腕からはおびただしい流血が流れ出した。流血は左腕を伝い、石畳に鮮血による市松模様を作り出した。ギラファは、口惜しい様子で踵を返し言った。
「ここは一旦引くけど……次こそは必ずそれを奪うからね」
そして両肩から生えている翼をはためかせ、上空へ舞い戻り、どこか彼方の方向へ向かう。しばらくするとギラファは視界から姿を消した。……助かったのか?ふっと力が抜け、その場で崩れ落ちる。砂の混じった風が顔を吹き抜けた。
「もう、大丈夫?」
少女がその様子に呆れながら、僕に手を差し伸べる。僕はその温もりのある少女の手をちょっとドキドキながら掴んだ。
「ありがとう……えっと」
「シャロナよ。 まぁ名前なんてこの世界ではどうでもいいのだけど」
「シャロナか。 僕は八橋純。 まぁ純とでも呼んでくれよ」
「……そう、八橋……純」
「……ああ、そういえばこのペンダントを渡さないといけないっけな」
僕は胸にかけてあるペンダント改め宝玉を手に取る。約束は約束だ。
「まだいいわよ。 お前……純が死んだときにもらい受けるわ」
シャロナがそうつぶやいた時、鐘をついたときのようなゴングのような音が辺りで響き渡った。それは地響きのように僕の体を揺らした。
「な、何だ?」
「そうか、もうこんな時間なのね」
シャロナは落ち着き払って言っているが、さっぱり意味が分からない。
「大丈夫よ。 もう元の世界に帰れるわ」
「え?ど、どういうことだよ」
次の瞬間、視界は白光に包まれた。
読んで頂きありがとうございました。