会敵
すぐ後ろで着弾し、粉砕された石畳の欠片が僕たちに降りかかった。きわめてまずい。必死に両足を動かし走る。というかあんたが戦えよと思ったが、それを口にする余裕はなかった。
「あそこに隠れるわよ!」
少女が指示した方を見ると先ほどの街の家屋があった。その中で巨大な聖堂がある。僕は頷き、命からがら入り込んだ。少女が聖堂のドアを閉じた。数秒遅れて聖堂に衝撃がこだました。
「しばらくは大丈夫そうね」
「何なんだよあれは!?」
「……あれはおまえと同じ武具を持っている選ばれし者による攻撃」
「誰だよ!というか選ばれた者って何だよ!」
「ああもう、うるさいわね!斬り殺すわよ」
矢継ぎ早に尋ねる僕に少女はうっとおしそうに切っ先を向けた。切っ先が聖堂の薄暗い灯りに照らされて鈍く光った。
「ひぃ!ごめんなさい」
「……それよりこの場を何とかしないといけないわね」
「……あ、そうだ。 武器を持っているあなたが闘ってくださいよ!」
少女はバツが悪そうな顔をした。
「それはできない。 だってあいつは遠距離系のエイムを持っている。それに比べて私は近距離系のエイムだからとても太刀打ちできないわ」
「……無能」
「は?何よ!もとはお前がさっさとやられてたらこんなことになってなかったでしょうが!」
少女は顔を真っ赤にして激昂した。ちょっと反応が新鮮で面白い。その時、激しい地響きが聖堂上に伝わった。燭台が慣れぬ振動に耐え切れず、落下した。
「何だ!?」
声を上げる間もなく、片側の聖堂の壁が吹き飛んだ。そして両肩に翼を宿したハット帽を目深に被ったスーツ姿の男が頭上から颯爽と姿を現した。ゆっくりとその足を地面へと着ける。風圧で燭台の炎は消え去った。
「やあ久しぶり炎帝玉の持ち手……いやこれは初めましてかな」
男は顔をゆっくりとこちらへ向けた。ハット帽からこぼれている金髪に1つ1つのパーツがしっかりと存在感を持たせている端正なルックスが僕を見つめた。まるで美術画に出てくるような聡明で美しい美の象徴として描かれている天使。彼を形容するには最高級の賛辞が必要だろう。
「今は放っておいてくれない?……蒼玉の使い手ギラファ」
少女は虚勢を張ったような声色で言った。
読んで頂きありがとうございました。