邂逅
チリチリとした熱気が、眉目に降り注ぐのを感じる。それを知覚できる程度に僕の意識は回復した。仰向けになっている背面からは、石のような何か固い無骨な感触が感じられる。そして不明瞭であった僕の意識は、徐々に確かなものになった。
「うーん。 ここは?」
額から流れ出る汗を右腕で拭いながら、僕はゆっくりと起き上がる。眼前の景色は、一度真下の石畳に移ったのち、水平に帰した視線に伴い、雄大な景色へと移り変わった。それは、一つの巨大な街であった。一つ一つの石造りの家屋は、きれいに独立している。そのため、小ざっぱりとした印象を見るものに与えた。だが、その小ざっぱりとした印象は次に潔白とした清潔感を僕に与えた。そして、先ほどまでの天気とうって変わった雲一つない晴れ晴れとした空模様が、街と妙にその雰囲気を似せていて一種の絵画のような美しさを僕に連想させた。その時、僕は重要なことに気づいた。それは、ここはどこでなぜここにいるかということだ。先ほどまでに自部屋に居た僕だが、眼前にそびえる街並みは明らかに自部屋とは違う。頭の中で、自身の行動を振り返ってみるために僕は深く熟考した。僕は、趣味として将棋を嗜んでいるから考えるという行為自体はそれほど苦ではない。一手、一手読むようにして考える。不思議と頭が冴え、落ち着きを取り戻していく。そうして僕は、ペンダントを見つけてから意識を失うまでの過程をおぼろげに思い出した。点と点が線でつながるように、僕の意識は首元から下げているペンダントに集中した。
「これのせいか?」
ペンダントを改めて手で触ってみる。そして振ってみる。だが、僕の行為は徒労と化し、何の反応もペンダントは見せなかった。僕は、ため息をこぼし広大な街を見た。街に赴けば何かわかるかもしれない。そのような漠然とした期待が胸の内から沸き上がった。僕は、街に向かって歩き出した。刹那、あらぬ殺気を感じた僕は身をかがめた。その瞬間、ブンッと豪風をなびかせ、紅く染めた二刀と人物が僕の真上を通り抜けた。
「チッ!」
その人物はその長髪を携えたまま、空中で一回転し、僕の目前に着地した。
「お前が炎帝玉を受け継ぐし者ね!」
「……お、女の子?」
その少女は、刀を二刀携えている以外には、ごくごく一般的な美少女であった……。
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