説明
あと数話で去年の10月から見始めたアニメが終わってしまいます。やはり終わるとなるとちょっと寂しいですね。出会いがあれば別れもあるということでしょうか。
僕はシャロナを部屋へ招き入れた。話を聞くためには、出来るだけ母さんに聞かれない必要がある。無用な心配はかけさせないほうが良いだろう。まぁ別に聞かれても何の話なのか分からないと思うが。
「……汚い部屋ね」
シャロナはシャロナはそこらに転がっている本や雑誌を見て言った。率直にほっとけと思う。辺りを見回すシャロナの目は鋭く、重要な事実を一ミリたりとも漏らさぬような雰囲気を出していた。変わった子だなと僕は薄汚れた皺くちゃの座布団を押し入れから引っ張り出しながら思った。
「い、いつもは綺麗だけどね。 今日はたまたま」
「ふん、どうだか」
シャロナは差し出された座布団に礼一つすることなく、堂々と胡坐を組んで座った。随分偉そうな態度である。そして単刀直入に口を開いた。
「……純、まず初めにお前は宝玉をかけて戦うことになった……いや、自分の命をかけてといったほうがいいかもしれないわね」
……は?あなたは何を言っている?言っている意味を咀嚼するのに僕はしばらく時間を有した。その間、シャロナは部屋中を隈なく見回していた。何も見つかってまずい本とかなかったよな?
「ど、どういうことっすか?」
「そのまま。 お前は戦わなければいけないってことよ」
シャロナは平然と言ってのけた。降りしきる雨は部屋の窓に雫となって張り付いている。時折吹く風が窓硝子を嘲るように揺らした。いや今はそれよりも僕に降りかかっている事態について考えないといけない。
「いやいや、出来るわけないって!だって僕はまだ子供だし」
「悪いけど、これは強制よ。 放棄するとどうなるか……聞きたい?」
意地悪くほほ笑むシャロナに、僕は思わず口を噤んだ。押し黙る僕を尻目にシャロナは言葉を繋いだ。
「そもそもこの戦いは五つの宝玉を獲得し、己の願いを叶えるためのもの」
五つの宝玉?僕が持っているものとギラファと呼ばれる男が持っている以外にあと三つも?
「あと三つもあるのか?あと願いって何だよ?そもそもあの世界は?」
「落ち着いて。 まず宝玉は、お前が持っている炎帝玉。 ギラファが持っている蒼玉。 そして翠玉、紫玉、黒曜玉がある」
随分と安直な名前だなと感じる。その名称を作った人にぜひお会いしたいものだ。
「宝玉のネーミング結構適当だな!」
「うるさい!で、宝玉は序列がある。黒曜玉、炎帝玉、翠玉、紫玉、蒼玉の順にね」
序列?持っている力に違いがあるってことかな?
「つまり、僕のこのペンダントは二番目に強いってことなのか?」
僕はペンダントを掲げた。虚空にペンダントは揺れて、わずかに共鳴した。
「……まぁ、そうね。 そう解釈してもらって構わないわ」
「じゃあ、次の願いについての話に移るわね。 あの世界では参加している者全ては願望を叶えるために戦っている。 そしてその願いは統制者によって叶えられるの」
「どうやったら叶えられるの?」
率直な僕の疑問にシャロナは即答した。
「それは全ての宝玉を得ること」
「全ての宝玉を?そんなことできるのか……?」
「みながみな、それを目指している。 お前以外のね。 そして、私も会ったことはない全知全能の統制者が願いを叶えてくれる」
ん?シャロナもそうってことだよな?でも見たとこ宝玉を持っていそうではない。なぜだろう。
「シャロナもそうってことだよな?でもあれ宝玉は持っていないの?」
彼女は名前を呼ばれ、頬を赤らめぶっきらぼうに言いのけた。
「私は特別。 私はこの戦いにおける特別枠での参加なの」
特別枠……?確かにこの口の悪さは特別に珍しいものがあるけど。
「何か失礼なこと考えてない?……私は特別に宝玉を持っていない。 だけど、他の参加者と願いを叶える条件は同じ」
「え?それじゃあ不利じゃない?」
脳裏には宝玉を用いた先ほどの技というか必殺技を想像していた。
「ええ。 宝玉がなければ物体形成も防御双璧も使えないわ」
ああ、ちゃんとした名前があるんだ。
「でもね、私には二刀の刀がある」
そうシャロナは力強く呟き、立膝を突いた。スカートがずり上がり、白く張りのある太ももが露出する。僕は思わず目をそらす。
「え、ええと最後にあの世界は何なの?」
「それはね……」
その時、階下から母さんの声が聞こえた。僕らは顔を見合わせ、階下に向かう。母さんは上機嫌な様を存分に見せていた。
「あ!そうそう名前を聞いていなかったわね。 お名前はなんていうの?」
母さんの問いかけにおずおずとシャロナは答えた。
「……シャロナです」
「そう!じゃあシャーちゃんね。 今ね、お寿司屋さんに行こうと思っていたの。 良ければどう?」
「「え!?」」
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