第七話 喧嘩の末
実際に五歳児は何をやっているのかを調べた……。
あとママとお父さんでわかれているのは私の癖だったりします。
家が半壊した日からまたまた数か月。
私は五歳になり、すでに歩くことは完ぺきになった。
いやあ、やっぱり赤ちゃんの体は慣れないもんだよね! あの地獄から脱出できてよかった。
で、そんな今日。
リビングではピリピリした空気が漂っていた。
私から見て左側にママが座っている。机をこつこつと叩いて言った。
「ねえ、急にそんなこと言わないでよ。どうしてこのタイミングで引越ししないといけないの?」
イライラした声を誰に向かって行っているかと言えば、それは私のお父さん。
なんと! 私にはちゃんとお父さんがいたのだ。シングルマザーじゃなかったんかい。
「だから言っただろう。これは仕事なんだ」
パピーことファザリスはそうイライラしながら言っている。
私のお父さんはファザリスという名前らしく、これまた私は当時「お父さん(ファザー)だからファザリスか、なんつって。ぶふっ!」と笑ってしまったのは事実だ。
お父さんもやはりストレスが溜まっているのか、足で床を鳴らしている。
……似た者同士だね! と考えてしまうのは私の緊張が足りないからか。
ママは自分の自慢の金髪を触りながら口をとがらせた。
「大体ねえ、まだカナが小さいでしょう? この森の方が、治安が悪い街よりかは断然安全よ」
そう断然の部分を強調して言う。
「はあ、全く。分からないのか? ふつうこの年ではほかの子と遊ぶのが普通なんだ。出ないとこの子は人見知りになるかもしれない」
お父さんは最もな正論を言ってママを退ける。
全く、いつまで言い合いしているんだ。子供の前で。
どうしてこんな言い合いをしているかというと、どうやらこの森を引っ越すらしいからだ。
引っ越すのは治安がそこそこ悪い隣町。
何でも、おとんの仕事の都合だとか。
ママに聞いても笑顔ではぐらかされたため、詳しくは分からない。
でも会話から推測すると多分、私が原因なんだと思う。
私がまだ小さいから、という理由で引っ越したく無いママ。
だが今は友達を作ることが大事だ、と言って引かないお父さん。
白熱してまんなぁ。
でも、このままだと私の望みはかなえられない。
それはなぜか。正解は……。
「ねえ、ママ、お父さん。私、外に行きたい」
外を見に行きたいことが望みだから、でしたー!!
だってさ、いい加減この森も見飽きた。
ここは田舎だから仕方ないかもしれないけど、人も通りかからない。
挙句の果てまでは、そこそこ強い魔物が出てくる始末。お父さんが倒してくれていたらしいけど。
だから、文化が垣間見える町の方に行ってみたいのだ。
「はぁ、カナまで……。でもカナ、街の方は怖い人たちがいっぱいいるのよ?」
そう赤ちゃんに言い聞かせるような口調で私に問いかけてくる。
でも、私には魔法があるから怖くない。そこらの人よりかは強いだろう。
「私には魔法がある。外に出るために練習したんだから」
そう真顔で言ってのけると、ママは顔を少し緩め、お父さんは驚いた表情になった。
「そうねえ、そこまで言うなら……」
やはりママは私にデレデレだ。どんだけやし。
これで私の望みが通る、と思っていたらお父さんの様子がおかしかった。
「……この年で魔法?しかも、アンナからはすでに中級には達していると言っていた。いや、でも魔力量がおかしい。だがそうはいっても……」
とぶつぶつ言っている。はあ、中級に魔力量?
何が問題なのかは分からないけど、私はちゃんと魔法は扱えていると思う。
このお父さんの尋常じゃない感じからすると、他の人に魔法を見せるのはやめた方がいいかもしれない。
それで無双してみようと思ったのに……。
「……はあ、きりがない。全く、これだから子供は……」
頭を抱えて溜息を吐くお父さん。
なになに? そんなに子供が厄介かって?
そんなあ、これでももう20越えですよ。通算だけど。
「で、あなた。町に行くの? それともいかないの?」
ママがお父さんにせっついてる。お父さんお疲れです。
「……そうだな、そんなに言うなら俺も許さないはずがない。いいだろう」
やったー! 私の望みが通ったー!
お父さんはまたため息をついている。
私はついに、この森からおさらばすることになったのだ。
この家には、いろいろな思い出があるなあ。
最初に転生してきたのが私の部屋で、それから魔法で半壊して。
半壊したのを直させられたのも、よくはないけど思い出だなあ。
とりあえずお別れになる日程は明日らしい。
それまでに荷物をまとめないといけない。
あー、憂鬱だなあ……。
私が原因のケンカは収まり、結局そのあとは荷物の片づけに追われることとなった。
翌日早朝。
最後に振り返って私の家を見つめる。
もうここもおさらばだ。
最後に、昨日猛練習をして使えるようになった魔法をかける。
「……保存」
これで、この家はこれから一生古くなる心配はない。魔力ってすごいな。
あ、ネーミングがダサいとかそういうことは言っちゃいけない。
英語は苦手なのだ!
そうして私は自分の家を、この世界で初めて降り立った思い出の場所を去った。
町に着くのが楽しみだ!
毎日更新きついんじゃ……。