第五話 魔法の訓練 その2
「えーと、こう……。ぎゅっとなったのをそろそろ~って動かして、一気にばひゅーん! って感じ」
「……」
よし、率直に言おう。
ママの説明下手すぎ!
いやねえ? ママの魔法の使い方、教えてもらおうとは思ったんだよ。
だがしかし! ここで問題が。
実はママの魔法の才能はほぼなしらしいこと。
それはそれで大問題だ。教師が技を身につけてないなんて。
さらにさらに、ママは世間でいう感覚派だから説明もあやふや。
これじゃ流石に分かりっこない。前世の知識を駆使しても無理なものは無理なのだ。
「ママ、もう少し具体的な言葉ないの?」
つい突っ込んでしまった。四歳児がこんなこと言うのか!?
急いでママの方を確認する。だが、水球の制御に夢中で聞いていなかった。
そう、ママが今やっているのは8つある属性のうちの一つ、水属性の初級魔法『水球』だ。
その名の通り、何もない空間に水でできた球を浮かべ、発射するものである。
これ、初級だから結構簡単だと思うのに……。
ママは原理がどうしてもわからないらしく、普通やるらしい詠唱もしていない。
だから操作が難しいわけだ。
というかそれならどうして治癒魔法を使えたんだ? 詠唱もバッチリして。
聞いてみたところ、
「ああ、私は治癒魔法が一番最初に覚えた魔法なのよ。確か、6歳ぐらいだったかなー」
と、延々自慢話を聞かされた。もういいと言って遮ったけど。
これは詠唱をしないと危ないって言われたからやっているらしいけど、たぶんそれ他のやつでも一緒だからね?
話を戻すけど、詠唱は普通魔法の補助のようなものらしく、ママはそれがめんどくさくてすっ飛ばした。
で、そんな補助輪なし状態の才能がない人がやると……。
当然、ママのようになる。
カナシーナー……。アア、ママカワイソウ。
助けはしないけどさ。てか才能ないって言っているくせによく幼いころに治癒魔法覚えられえたな。
多分詠唱で補っている、その魔法を実際に具現化するためのイメージの強さが足りていないんだろう。
あとろくに練習していないから操作もあやふやで。
……多分それが原因だ。
私はそんな水球の制御に夢中になっているままを横目に、自分で理解しようとしてみた。
流石に高度な技とかは分からないだろうけど、まあ基本ぐらいは分かるっしょ。
まず、ママの説明を思い出す。ホントかどうかは分からないけど、とにかく真似をしてみよう。
「えーとね、カナ。まずはいろんなところにあるエネルギーを感じるの」
これは他で言う魔力のようなものを指す。
ママの言うとおり空気中にはそこそこ濃い、何かがゆったりと流れているのが分かった。
まあスライムよりちょっとサラサラのやつと思ってもらえればいい。
で、次は確か……。
「そのエネルギーを、自分の体に流し込む。……って書いてあったわよね?」
本を片手に見ながら言っていたな。もしかして知らないのかな? と思ったけど、それは違った。
「ああ、ごめんね。本に書いてあるのが私のやり方と違ったのよ。私は、直接そのエネルギーを操る。なかなかうまくできないけど、それで強く念じればその魔法になるわ」
と、どや顔で言っていたママ。それ自慢することじゃないから、と今更だけどツッコむ。
ママ情報からすると、その空気中にある魔力は動かせるらしい。
『魔力操作』ってやつかな? まあいいか。
で、それを操って念じると、魔法の出来上がりってわけだ。
……ちょっとよく分からない。
けど、まあ一応やってみるか。まずはママがやっている水球から。
まずは魔力を動かしてみる。
うん。ゆっくりだけど動かせるね。
で、次はそれを丸い形にする。水球の大体の形やね。
そこまで言ってようやく安定してから、強く念じる。魔力が水になる感じで!
「パチャ」
水が落ちる音がした。
目を開けて下を見ると、そこには私の手の真下に水たまりが。
……なんか超あっさりだな! こんなんで出来るの!?
す、すげー……。異世界の魔法すげー……。
と思ったが仕方ない。できるものはできるのだ。
そう納得しないと理解できない。やっぱりここは異世界だと再認識する。
とりあえず水は出せたし、前世の理論もまあ間違っていない。
これからはそれをうまく操作することを目標にしよう。
私はしばらくその感動に浸って、のちにママに家へ連れ戻されたことを記す。
こうして初の魔法の訓練は無事(?)に終了した。
魔法の表現迷った~!!
でもまあ、一応理論は通っているからいいよね!
あ、魔力が念じるとそれに変わるっていう謎理論はスルーの方向で。