石と命 ⑧
「そんな簡単で良いのかよ…」
こんなところに置いてけぼりにされては出られないので、慌ててついて行く。
「ええ、分かっていたことですから。私もあの日から何も考えずに過ごしてきたわけではありません」
「は、はあ…」
信用して良いのだろうか、心配である。少なくとも彼は全ての因果が見えているから、今後どのような結果になるのかもしっかり分かっている。その上で彼は敢えて足掻く。なぜわざわざそんな行動を取るのか理解ができないが、彼も彼で未来が視えることで散々悩んだのだろうから誰もそれには触れない。どんな行動を取ったとしても結果は変わらないのだから、どんな過程を辿ろうとも、所詮結局は道草を食いながら一本道を進んでいるようなものである。
「未来は変えることができるなんて言いますが、あれは限られた時間しか生きることができない人間が、そういう風に捉えて有意義な人生を送ろうと現実逃避をするためにひねり出した世迷言です。一度暦に記された事柄からは決して逃れることはできない」
「あ?うん、お前と初めて会った時から聞いてるけど…」
「…言わなければいけないのです。ただの戒めです」
「でも何があったのかは誰にも教えないんだもんな」
「いつか死ぬものに永遠に生きる者の話をして何になりましょう。どうせいつかは朽ちる話です」
「お前そういうところだぞ」
まともに街灯も役に立っていない田舎の住宅街。あまり明かりを好かないヨミのためにわざと暗がりを選んで進む。普通の人間なら目の前もほとんど見えなくて怖がるところだが、魔女と神は平気な顔をしてずんずん歩いていく。神様の方は時々何もないところに小さく手を振る姿も見える。
「決められた予定の中にも、寄り道は必要です。寄り道をして、時間を稼ぐ事くらいは許されるでしょう」
「つまり、それをしようって事か?」
「ええ」
ヨミはゆっくりと頷いた。
相変わらず、何を考えているのか理解ができなかった。
「その石の命にもっと興味が湧きました」




