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子曰く  作者: 神秋路
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石と命 ①

「違う!風起こしの印はもっとこう…繊細に!」

「う…そんな曖昧な…」

「魔法の半分はニュアンスでできてるんだ。覚えておいて」

「…もう半分は?」

「本人の匙加減?」


 孔の魔法講座は長く続き、少々スパルタ気味ながらも命は必死に食らいついていた。まずは基本的な魔法を全て覚えさせ、彼女の能力と合致できるようにと準備した。元々の才能はあるのに、魔法を使えなくさせられているものだからどうしても制限は出てしまう。それでも彼女は、あっという間に多くの魔法を身に着け、簡単な魔法なら難なく使いこなせるようになった。


 魔女と言えば、怪しげな薬を作るイメージが世間では有名である。孔もその例に漏れない。世間のイメージ通りの魔女も存在する。命もそれに憧れたのか、薬を作ってみたいと駄々をこねたこともあったが、物体を別の物に変化させるだけの薬でさえ多くの魔法を必要とするのでまだ早い、と何とか諦めさせた。彼女ならばいずれは簡単なものでも薬も作れるようになれるだろう。


「道心さんすごいねえ!こんな私でも、もう十個も魔法を使えるようになっちゃった。時間はかかっちゃったけど」

「魔法はニュアンスと本人の匙加減って言ったんだから、それは命ちゃんが凄いんじゃないかな」

「えへへ、そうなのかなあ」


 厳しい魔法の勉強の中で、まだ幼い命が必死に食らいついていくことができたのは、孔が紅茶やおやつのおかげでもあった。昼食の後に孔の元を訪れ、勉強を頑張れば三時には紅茶を出してくれ、あまりうまくいかなかったときはおかしを作って紅茶と共に出して休ませてくれた。そういう時の暖かくて綺麗なお茶は、自然と胸の内までも暖かくしてくれるので安心した。そういう時は、孔も本を読ませたり、自分も静かに本を読んだりと自由な時間も与えてくれる。スパルタと言っても、ゆとりのあるスパルタだった。


「俺も魔法を教わってた頃とか勉強してた頃とか、もちろん今でも研究してる時も、命ちゃんみたいにうまくいかなくてむしゃくしゃするときは、こうしてお茶にすることが多かったんだ。食べることは苦手だからこうして何か作るのは滅多になかったんだけどね。食べることも落ち着きを取り戻すきっかけになるかと思って」

「へえ…道心さんでもそんな風になることがあるんだね」

「もちろん。凪にも波美にもあった。誰にでもある事だよ。だから、こうして自分で自分を安心させてあげられるように何か用意しておくことと、それを素直に受け取れるように自分を保つことも大事だよ。」


 一度それに失敗して、自分で自分の首を絞めたからこそ言える事だった。一時の感情に流されることは良くないと言われるが、ただそれだけでは済まないことであると身に染みて理解した。自分の弟子くらいには、そのような失敗はしてほしくない。魔法以外にも、教えることはまだまだありそうだ。


 彼の元で勉強するようになってから、命は少しずつ小学校にも復帰し始めたそうで、学校での勉強も教えることも増えた。相変わらず学校での生活は良いものではないそうだが、勉強をすること自体は嫌いではないらしく、前よりも目に見えて生き生きとしてきた。


 同時に、魔法で管理していたあの縁起の悪そうな石にも少しずつ変化が見られた。通り過ぎに見るだけでは絶対に分からないが、じっと観察すると、石の中に何かの命が蠢いているように見えるようになったのである。実際に光ったりするわけでは無いのだが、確かにそこには何かが宿っている。衝撃を与えないよう、ほんの少しの力を加えて欠片を採取し、合間合間に調べてみると、確かに魔力の反応が見られる。しかし、どうしてもその正体が見えないため、なかなか進まなかった。


「…誰だろう」


 試しに声を掛けてみてももちろん返事は無い。言語を変えても同じである。危険なことに変わりはないため、命には一切地下には行かないように言い聞かせ、石の存在を認識させないように努めた。石は、そんな孔の苦労にも関係なく静かにそこに佇むばかりだった。




「…うん、神風章もだんだん覚えて来たね。次は煌耀(こうよう)章でも良いかもね。光は使えると便利だし」

「わあ、本当!?やったあ、また使える魔法が増えるんだ!」

「ただ、煌耀章は光を扱うだけあって失敗すると自分の目を潰すこともあり得るから、十分気をつけなきゃだめだよ」

「はあい!」

「それじゃあこの本読んで待っててもらえるかな、ちょっと地下に行って本を探してくるから」

「はい!この本ね!」


 命に一冊、光を扱う魔法についての本を与えると、地下室への扉を開けて階段をゆっくりと降りた。その先にある机の上には、相変わらず魔法で封印されている縁起の悪そうな石があり、何かがいるような様子を見せていた。

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