魔女からの最高の置き土産 ③
「悪いものは確かに目立ちますけど、八千代先輩や神崎先生のような術者がいるなら、私は術者は悪い種ではないと思います。私自身は、術者をじっくり見たことがありませんし、あんな事が長らく平気で行われていたと思うと、やっぱり辛いです。こんなこと、言える立場ではないのは分かってますけど…」
「上出来だ。お前みたいな人間がいること、先生は嬉しい。だから後で美人になれる薬を作ってやるからな」
「いえいらないです」
「…じゃあ大塚、お前はどう思う」
「ええ…俺は別に」
「ここでちゃんと俺の話に乗ってくれれば、前に引いた点数を元に戻してやるって言ったら?」
「え!!ガチで!!」
「ちゃんとした自分の言葉を言えたらな」
「えーマジか…うーん俺は…正直術者は怖いと思う、かなー。だって神崎…先生も今みたいなことが簡単にできるんだろ。俺とか仲間内では話したこともねーし、ちゃんと考えたことも無かったからよく分かんねーけど。親父も言ってたけど、今の人間の限界の知識と技術を使っても絶対に太刀打ちできねえから、俺たち人間はああいうことをしてでも自分の身を守らなきゃやってられないと思う。だから、あの映像を見せられても…これだけで済ますのはどうかとも思うけど、しょうがねえんじゃねえかなー…なんて。これまで自分たちの力を見せてきてればこんなことにはならなかったのかも知れないのに、そんなこともしないで被害ばっか受けてきてるし、図に乗られても仕方無いんじゃない?」
「良い答えだ」
初めは成績欲しさに媚びる回答をすると予想したが、何も考えていない馬鹿に見えてこちらもきちんとした意見を持つようだ。偶然だろうが、良い話を続いて聞けるとは思わなかった。これはいい機会かも知れない。
「ああでも、怖いけどすげえなって思うよ俺。何かかっけーし。人間にできない力を生まれつき持ってるんだろ?先生も頭いいし、俺今一瞬憧れたもん。そんでも、襲われたらって思うとやっぱ怖いけど。ニュースでもよく術者に襲われた人の話とか出るし」
「充分だ、ありがとう。お前にしては一番良い回答だと思う」
「マジで?!じゃあ…」
「悪い、成績はもう提出したんだった」
「はあ!?即答かよ!?」
「ちゃんと考えれば時期的にも何となく分かるだろ…遅刻した自分を恨むんだな」
「そりゃねえよ…」
「何言ってんだ、相手はお前の怖がる魔女だぞ?良かったな、これで一つ賢くなったぞ」
「へっ」と鼻で一つ笑ってやると、彼の酷く落胆した姿が横目に見えた。少々可哀想なことをしたかと一瞬考えたが、自分がただの人間だったとしても彼が遅刻した事実は覆らないため、あの減点も当然の結果である。慈悲はない。
彼の後も何度か話を聞いても全く同じ意見がなぜか出てこなかった。それでも、予想通り否定派の意見は多かったが、癇に障るようなものや酷く差別的なものは無かった。
「…というわけで、俺たち術者に対する意見っていうのは千差万別、逆に多すぎるんだ。だから、長い事人間との間でめんどくさい絡まり方をして今現在にまで至っているわけだけど…残念ながら意見が分かれているのはお前たちの世代が多く、さらに上の世代に行くほど偏りが出てくる。前に来た高官のおっさんたちなんかまるきりそうだっただろ?」
先ほどの宇佐美は、首がもげるかというほど縦に振って全力で意思表明をしていた。ここまで来たらむしろ彼女の思考が少々心配になってしまう。
「ちなみにこの学校の先生の中にも例外じゃない奴は居る。だから昔からあんな講演にもGOサインが出るんだ。な、清水せんせ!」
孔はにっこりしながら清水の顔を見た。彼女はいないふりでもしていたのか、声を掛けられるとビクッと肩を震わせた。




