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子曰く  作者: 神秋路
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縁起の悪いもの ⑥

「そうだな…術者の末裔って言ったって、実際その力は無いに等しいんだから、何かあったりでもしたら成す術もないからなあ」

「それでは、途中まででしたらどうですか?」

「あの分かれ道からなら、わたしの家が近いから心配はないはずだから…」


 『あの分かれ道』というのは、以前孔が八千代を帰らせたときに分かれた道のことである。彼女が言うほど、彼女の家が近いことは無かったはずだが、そこで分かれて2人きりになった方が姉妹にとっては都合が良いのだろう。


「うーん…そのくらいならいいか…俺んちまで迂回するような道のりでもないし。分かった、俺が連れてくよ」

「あらあら、あれだけ嫌がってたのにやけに素直ね。…嬉しいの?」

「まさか、何言ってんだよやめてくれ」


 双子は、2人だけの間で密かにホッとした。2人だけになりたいという願望もあったとか、遅くなってしまったので、誰かと帰ったことによって面倒なことにならないかとか色んな心配はあったが、何よりも凪たちにこれ以上自分たちの世話をさせるという負担を最小限に減らすことに成功したからだった。


「良かったですわ…凪さんでも、波美さんでも良かったですけど、お二人はもうずうっと働き詰めでしたもの…」

「そうだね。孔なら多少迷惑かけても何も思わないし、どうせ途中までは一緒になるからね。」


「これ以上、私たちが迷惑をかけることにならなくて良かったよ……」




 それからは何事もなく時間は進んでいった。凪たちに分かれを告げると、孔は伊織たちを置いていってしまっていたことを思い出し、急いで2人を迎えに行った。


「道心さん!どこに行ったかと心配していました…」

「すみません…すぐに用事を済ませて戻るつもりだったんですが、長引いてしまって…」

「八千代、大人ってすぐ嘘をつくんですのね」

「そうだね」

「いいえ、戻ってきてくれたのでそれでいいです。もう帰りますか?」

「そうですね、もう遅いですから。こんなところを人間に見られでもしたら、また変な噂が回るでしょうし」

「八千代、どうせ平気なくせにどうしてそんなことを言うのでしょうね」

「つくべき嘘というものもあるんだよ」

「今日はこの双子も途中まで同行することになったんですけど、大丈夫ですか?ただの女子高生と変わらないので警戒する必要もないのですが」

「ええ、大丈夫ですよ。4人なら心細くないですしね。ところで、本当に途中まででよろしいのですか?危ないんじゃ…」

「八千代、どうしてそこまでして嘘をつく必要があるんですの?」

「この場合は、孔が人妻を好むという可能性が挙げられると思うよ」

「やっぱり置いていきましょうこのクソガキ共」

「ごめんなさいごめんなさい、余計なお喋りが過ぎたよ」

「せっかく波美さんが心配してくれたのに、無下にするようなことはできませんですわ…」

「お前らもこれに懲りたら大人様を馬鹿にすんじゃねえぞ」


 孔は、ようやくこの双子をねじ伏せられたことに、密かに万歳をした。


 町の夜は深い。それを分かっているからこそ、波美はどうしても双子を二人だけで返すことを拒んでいた。それに気づいた双子は、最終的には孔を敵に回さないでおいて正解だと心底安心した。


 2人の間だけの秘密だが、この双子は揃って暗闇が好きではなかった。八千代に言わせれば、暗くては本を書くことも読むことも満足にできないことと目が良くないために視界が余計に悪くなることが不満らしく、千代に至っては暗所恐怖症らしい。だから、千代は姉がいなければ夜は出歩けないためにいつも車で登下校している。この日の場合は二人だけでも大丈夫と虚勢を張ったは良いものの、八千代は自分の目だけが心配だった。二人はそれをひた隠しにしていたつもりだったが、孔は何となく察しはついたような言動をとった。


「…こんな優しい大人が周りにたくさんいてよかったな。お前ら本当ならすでにおいてぼりにされてもおかしくないんだぞ」

「…わたしたちもそんなことは分かっているよ。それも踏まえて二人でも大丈夫だと言ったんだ」

「虚勢張るなって。新設は素直に受け取るのが吉だぞ」

「お言葉を返すようですけれども、わたくしたちは虚勢を張ることで生き延びてきましたの。今更それを辞めてしまっては、私たちはこの社会のど真ん中で崩れていくしかなくなってしまうのですわ」

「そんなこと言われたら俺も返す言葉が無いな……確かに、それも一理あるな、悪い」


 孔も、この時は珍しくどこか萎れているような雰囲気を漂わせていた。それは、この町の暗さのせいなのか、先ほどのヨミの占いのせいなのかは誰も分からなかった。


「それじゃあ私たちはこっちだから」

「お二人とも、ありがとうございました。どうかお気をつけて」

「おう、お前らも気をつけろよ。なんなら明かりの魔法でも教えてやろうか?」

「丁重にお断りするよ。相性が悪くて腕が焼けでもしたら、わたしは二度と物語を終わりまで導けなくなってしまうからね」


 双子は最後に、馬鹿にしたように舌を出した。

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