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子曰く  作者: 神秋路
45/117

母曰く ①

 気づいたことがあった。

 自分には教師は向いていない。

 自分はただの魔女であり、ただのマッドサイエンティストであって、未来ある子供に人生とは何たるか、世の中は何たるかを教えられるような器ではない。

 自分は薬を作って売るだけの、ただの薬売りでしかない。免許を偽造してまでこの仕事をするメリットもない。


 贅沢を必要としない孔にとっては、必要な貯金額も大した数字にはならない。そのため半年働くだけでも彼にとっては十分な額になった。彼はもう今の職場から出て行ってしまおうと考えていた。


 校長にも話をしたところ、なんだか嬉しそうな顔をしていたので、これで良かったと逆にせいせいした。


「え、本当にやめるの?」


 当然、この話は武藤にもしたが、武藤は一瞬冗談だと思ったらしい。孔が本気だと知ると、案外本当に驚いた顔をした。


「もちろん。この仕事見つけてくれた凪にも、お前にも悪いとは思ってるけどさ。俺はやっぱりここにいるべきじゃないんだよ」

「そうか…まあ仕方ないよな。この仕事してるのもお金欲しいからって言ってたしな。…金欲しいだけでこの仕事やってけるのも随分とバケモンだと思うけど」

「子供の時から魔法の勉強をしていく中で他の術も覚えたんだよ。占い師、道士…って覚えていくうちに他の術者に術を教える機会もあった。その経験があっただけで別にガキにお勉強教えるような人格も資格も器も無いよ」

「そんなに卑下すること無いと思うけど…」

「卑下じゃなくて事実な。分野が同じでも、性質が違っていたらとんでもない事になるだろ」


 一方凪にこの話をすると、凪は顔色一つ変えずに「そっか」とだけ言った。

 武藤と比べると随分冷め切ったような反応だ。しかし、彼自身はほとんど何も考えていなかった。


「孔がそれでいいならいいんじゃないかな」

「でも武藤が結構驚いててさ…」

「ああ、あいつはそういうところあるから大丈夫大丈夫」

「どういうところだよ」

「でも孔は今はちゃんと家賃だって払ってるし、今のところ仕事辞めても困ることは無いんだろ?」

「まあ。使える魔法も普段生きてる分には問題なかったしな。作れる薬には限界ができちまったけど…ま、カチコミとか無かったら生きていける」

「ふうん…じゃあ僕と手合わせでもしてみようよ」

「嫌に決まってんだろ…お前が本気出したら何があるか分かったもんじゃない」


 孔があれから半年間自分自身で調べた結果によると、今のところ中級程度の魔法であれば魔法書が無くても何とか使うことができるとの事だった。レベルの低い術者や普通の人間相手ならばそれで十分事足りるが、凪などのベテラン相手だと負けるのは目に見えている。加えて、彼の使う力は神様の使う神力そのものなので、本当の本当に本気を出されてしまっては手も足も出せるはずがない。


「そもそもお前はずるいんだよ、何でもかんでも神様降ろしやがって」

「何でもかんでも降ろす訳ないだろ。こっちにだって負担が凄いんだから」

「つうかなんでわざわざお前の体を貸さなきゃいけないの?」

「直接地上に降りてきたら地上は無傷じゃいられないからね。須佐之男命(すさのをのみこと)の話知らないの?ああいう感じだよ」

「あーーそういうところだよな」


 呆れた孔が思い切り体を伸ばした時、玄関の扉が控えめにノックされる音が聞こえた。客だと思った孔は「はいはーい」とやる気も迎える気もない返事をして扉を開けた。


 そこには、いつぞやの少女が泣きそうな顔をしながら立っていた。

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