表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
子曰く  作者: 神秋路
42/117

天才と天災 ⑤

「お前さ、長谷川っていう巫女の一族知ってるか?この辺の土着の巫女らしいんだけど」

「ああ、幸代(ゆきよ)さんとこの事かな?そこのお子さんが君の職場の学生さんらしいね?」

「おう、随分気に入られたよ。昨日も不法侵入された」

「あはは、良い素質を持ってるね。そうやって『いつの間にかそこにいた』っていう神様に近いことをすんなりできるなら、消えた力もそのうち戻るんじゃないかな。巫女っていうのは、体に神様を降ろしてその言葉を伝えるのが起源だから。つまり僕は巫女体質という事だね」

「どうでも良いしこじつけにしか聞こえねーな…俺が留守にしてる間に入ってきたんだぞ?」

「神様はただの人間に感づかれたらおしまいだからね。実際、ここにはウチの結界と君の結界があるのに一切気づかなかったんだろ?」

「あ…まあ、うん」

「それで、長谷川さんがどうしたって?」

「雇えば?お前の事も知ってたよ」

「至極光栄な事だけど、ウチと向こうは違うから迷惑はかけられないな。結局してもらう事は普通の巫女さんとあまり変わらないだろうし。…来てくれるなら喜んでお願いするけれど」

「じゃあ今度聞いてみることにしよう。それでいいだろ?就職のお礼だ。」

「それは良いけど…どうして向こうは僕の事を知ってるの?顔を合わせることはあったけど、本当に顔を見せるだけの関係なんだよ?」

「子供の片割れが柳原三珠だったんだよ。お前がこの間言ってた奴。それで、色々術者の人間を調べ上げてたみたいでな、俺の事も既に知ってた」


 事の流れを説明すると、凪は突然大きな声を出して驚いたような様子を見せた。


「ええええ?!え??柳原先生???あの??」

「お、おう。この間魔法書出したあの柳原…」

「良いなあ…僕あの人の本好きなんだ。古風で、それとなく現実的なところが良い」

「俺も読んでたけど、確かにあれは女子高生が書くもんじゃないよな。」

「やっぱり幸代さんの教育の賜物なんだろうなあ…」


 凪はなぜか憧れかのように呟いた。孔は「その妹はめちゃくちゃな女だぞ」とでも言ってやりたかったが、水を差すのは可愛そうなのでやめておいた。


「顔を合わせるって、家同士で連絡でも取ってるのか?血は繋がって無いって聞いたぞ?」

「ほぼ同業者だからね。さっきも言ったけど僕の力も巫女に近いものだし、うちの御祭神(ごさいじん)も似たようなことしてしまうから。そもそも長谷川さんちはこのあたりでも小さい村を治めていた巫女に過ぎないんだ。その点うちの月占(つきうら)神社はこのあたり一帯を治めていたから、長谷川さんち以外の巫女や神官の血統の末裔がよく挨拶に来るんだ」

「あ…ああ、そういう背景が…」

「きっとその時をきっかけに僕を知って調べたんだろうね。今思えば、何だか双子っぽい女の子がいたのを見たことがある気がするよ」

「おう、その娘さんが双子だ」

「そうかあ、柳原先生に覚えられていたんだねえ」


 凪は嬉しそうにそう繰り返していた。


 結局それからは何気ない会話だけを長々と続け、凪は満足したのか昼前には帰っていった。傍から見れば何をしに来たのか分からないが、本当にただ孔と話に来ただけなのだろう。凪は、ストレスなどが極限までに達すると時々こういう行動に出ることがある。今回も何かあったのだろうと察した孔は、そのまま素直に凪を送り出した。こういうときの彼に対しては、何も触れてやらないのが一番だと心得ていた。


 そうしてその後の週末は、少ない客へ薬を売り、それ以外の時間は本を読むか薬を作るか魔法の検査をするかして過ごした。これ以上凪が訪ねて来る事も無かったし、危惧していた長谷川姉妹の突撃も無く静かに過ごせた。しかし、その次の月曜日にはとうとう長谷川家の黒い人が朝から玄関の戸を叩いて来たので、身に覚えのない借金でも抱えたのかと心配した。そのまま黒い人二人に引きずられ、あの高級車に放り込まれて学校までドナドナされてしまった。


「おはようございますですわ」

「あ…うん、おはよう…頼むから寝起きくらい普通にさせてくんないかな…」

「あなたをいちいち待ってるなんてできませんわ。この方が早くて良いんですの」

「……」

「そういえば、お姉さま…八千代の事、ありがとうございました。真夜中でしたけれど、家に戻ったと連絡がありましたの。こちらのお家の者も、八千代のことを探そうかとそわそわしていたので抑えるのに苦労しました」


 孔はそれを聞いてそっと黒い人の顔を見た。真っ黒なサングラスをかけていて表情がさらに重々しくなっているが、この人たちがそわそわ…と思うとなんだか気持ち悪くなった。固く忠誠を誓った主なので、血眼になって捜索するのも当然のことである。しかし、孔にとってこの黒い人たちは自分に対して酷いことしかしない人、という認識なのでどうも悪い方向にしか思考が向かなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ