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子曰く  作者: 神秋路
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巫女双子 ⑥

「次の小説の題材が決まった。この世にたった一人残された魔女が、人間と仲良くしようとするお話だ。けれど、魔女は恐れられる存在だから、魔女は上手く人間と接する事はできないんだ」

「……」

「それでもなお、魔女は人間と友達になりたいから、努力していくんだ。わたしはあまり、こういうタイプの感動モノは好きでは無いけれど」

「お前、それ…」

「それで、君が救われるのなら」


 八千代は微笑んでいた。何を考えているのやら、孔にはさっぱり分からなかったが、それで小説を書くと言うのなら口を出す権利はない。


「勝手に書いたらいいさ。お前の事だから、その本も売れるんじゃないの」

「君は…君の事は、人間に知らしめなければならない」

 

孔の掌からは、まだ赤い血が滝のように流れていた。




「…はあ、馬鹿みてえ」


 包帯をぐるぐる巻きにされた右手を見つめながら、孔は一人歩いていた。


 あの後、通りがかった体育科の教員の手により無理やり保健室に連行され、保健医の手によって応急処置をされ、容赦なくしっかりと包帯を巻かれてしまった。八千代はどさくさに紛れて下校し、孔は二人の教員から


「良いですか!絶対病院に行くんですよ!今からならまだ間に合いますから!」

「神崎先生は自分に疎いんですから、明日までに病院に行かなかったら無理やりにでも連れて行きますからね!」


 と、叱られた。体育科の方は、現役のスポーツ選手だという話を聞いていたので、その筋肉を見た時は大人しく頷いてその場をやり過ごす他無かった。


 自宅に着くと、荷物を放り出して薬品が並べられている棚を漁った。おびただしい数の薬の中から一つを取り出すと、右手の包帯とガーゼを無造作に剥がしてその勢いで薬を患部にかけた。床が濡れるのも構わず、新しいガーゼと包帯をつけると満足した。

 どうも人間の使う消毒液や傷薬は信用ができなかった。彼が唯一信じている薬は、彼自身の薬だったため、学校で処置を受けてから家に帰るまで気持ちが悪くて仕方がなかった。


(…念のため)


 棚からもう一つ別の薬を取り出すと、今度は勢いよく飲み込んだ。痛み止めだった。少々飲みすぎたような気もしたが、それで意識が鈍るならそれでも良いと思っていた。

 最高に最低な味を堪能した後、着替えもせずにそのままベッドに倒れこんだ。八千代の言葉が頭から離れない。


「次の小説の題材が決まった」

「それで君が救われるのなら」

「君の事は、人間に知らしめなければならない」


 話の脈絡が繋がっていないし、何について話しているのかも全く分からない。次の本は、彼を下敷きにして書いていくつもりだろう。そうして彼を人間の社会に解き放つことで彼を救えると思っているのならとんだ迷惑だ。しかし、いつかの凪が「君は本当は、愛されるべき存在なんだよ」と言っているのを思い出した。


「…どいつもこいつも、俺のことを何だと思ってんだ」


 そう愚痴をこぼすと、知らないうちに意識を手放していた。

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