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子曰く  作者: 神秋路
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巫女双子 ③

 昼休みは、誰も来ない。

 

 半年前までは女子生徒を中心に、誰も彼もが飽きる事無く彼の元を訪れては彼の邪魔をしていたものだが、あの一件から誰も近づかなくなった。それは孔本人が何かをしたからでも、孔が魔女だというのがバレてしまったのでもなく、八千代が彼に近づいているのが原因だった。


 あの時騒ぎを起こした彼女は、元から近づきがたい人物であったのに拍車がかかり、更に誰も近づかなくなってしまった。その上、放課後に誰もいなくなった頃に孔の元を訪ね、孔も嫌がる事は無かったのを誰かに見られてしまった。悪い噂、それも女性の噂は幾つになっても広まるのが早いもので、八千代はあっという間に敬遠される存在になってしまった。しかし、彼女は小説が書ける事、興味がある事以外に関心は無いので、気にしなかったし、孔も薬を作るのに気兼ねをする必要は無くなったので、二人にとっては最高の状況だった。


 孔は朝の事を八千代に話すと、彼女はまたあの笑い方で笑った。


「それは間違いなくわたしの妹だね」

「マジで怖かった。俺今日で死ぬんだなって走馬灯見たもん」

「彼女の直属のボディーガードさんは皆そんな感じだよ。でも、とっても優しい人達ばかりなんだ。その代わり、長谷川家への忠誠が強過ぎるから、確かに先生のような人なら会って三秒でセメントの中かも知れなかったね。今回は妹のおかげだよ」

「…お前んちってそういううちなの?巫女の家なのに?」

「父がいくつか起業していてね、それが成功しているんだ。妹は父の自宅に住んでいて、私は母の実家に住まわせてもらってる。…あ、父と母の仲は酷く良好だよ。二人の教育方針でそうなっているんだ」

「ふーん…その千代も、お前みたいに巫女の力は無いのか?」

「いや、私はあると思っているよ。だから、母の実家にいるべきなのは妹だと思っているんだけれど……長女や長男というのはいつも大変だね」


 孔はそれには共感した。実家はもう出た身だが、国外にいる遠縁の親戚には実家に残ってお家を発展させろとお小言を言われたこともあった。その時は堪忍袋が切れた魔女こと孔が、親戚の魔女を魔法でねじ伏せるという面白い風景が見られたのだが。


「しかし、あの妹は見ての通りわがままで、自分勝手で、高飛車で高慢ちきで…とにかく甘やかされて育ってしまったから、もうこちらの手には負えないと思っているんだ」

「すっげえ悪口言うんだな」

「姉だからね。あの子も私の言う事なら聞いてくれる。だけれど、どこか甘く見ているところもあるから、誰かに言われないとあの性格は治らない」

「へー…で?」

「先生に妹をお願いするよ」

「嫌に決まってんだろ」

「彼女は私のように才能が偏っていないから、普通の人には対応できないんだ。屁理屈しかこねないからね」

「そんな奴と俺を同類にしないでくれ。第一、屁理屈をこねるのはお前もだろ」

「それは心外だなあ」

「……」


 このまま続けていても、どちらがより屁理屈を扱うのかというどうでも良い論争で昼休みはあっという間に終わってしまう。そっちの方が重大だった孔は、よく考えもせずに「分かったよ。やりゃあ良いんだろ」と返事をしてしまった。

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