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子曰く  作者: 神秋路
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巫女双子 ①

 驚くことに孔の教員生活は長く続き、早くも半年近くの時間が流れた。暑い季節が過ぎ、あっという間に世界は真っ白になってしまった。そうなってしまうと、森の奥に住んでいる孔は朝起きたらまず雪の処理に追われなければいけない。魔法があるので大して苦労はしないが、寒い朝に外に出なければいけないのが億劫で仕方がなかった。

 ずぼらで薬以外の事に関しては面倒くさがりな彼は、寒いのが嫌なくせに防寒をするのも嫌がった。そのくせ寒いだのなんだのと悪態ばかり吐く。その日もそんな調子で、家の周辺と森を出るための道に積もった雪を溶かし、暖かい家の中へ逃げ込んだ。


「……出たくねえなああ…」


 出勤する準備をしながらそんな事をぼやく。もちろん変わらず電車を使うので、あまりにも雪が深いと遅延したり最悪動かないことも考えられる。学生の頃はそれを理由にすれば出席停止扱いで欠席できる!と喜んだものだが、社会人になった今はそんな学生時代の自分にこの辛さを味わわせてやりたいと強く思った。車を使うという手もあるのだが、免許を取って以来一度も乗ったことがない。そんな金もないし、車を置いておくスペースも取れないからだ。

 防寒も今度はちゃんとして、仕方なく家を出て駅へ向かう。


(今日ほどの雪なら遅延することも無いだろ)


 辺りの景色を見て判断する。その日はたまたま風が吹いておらず、森の音もなかった。更に耳を澄ますと、森全体の音が全く無い事に気づいた。雪は音を吸収するというが、こういう事か、と孔は感心した。半年前就職するまでは、暖かい季節の時も寒い雪の日も、食糧調達などの用事が無い限りは自分から外に出る事は無かったので、冬の外の世界がちょっぴり珍しかった。


 街中まで出ると、早めに家を出た人々や激しくなった車の通りが見えてくる。その中に混じって歩いて行くと、前方から所謂リムジンが走って来るのが見えた。半年間毎日この道を通ってきたが、そんな物が通ることは一切無かった。


(珍しいな、この町にもあんな金持ちいるもんなんだな)


 などと他人事のように思っていると、それが孔のすぐ脇で止まった。それには孔を始め、その場に居合わせていた全員が目を丸くさせた。


「な……」


 驚いた孔は、何かの間違いだと思ってその場を立ち去ろうとした。しかし、それは阻止された。


「何無視しようとしてるんですの?」


 甲高いような、そんな声で後ろから声を掛けられる。孔は観念して振り向いた。


「別に……関係無いかと思って」

「関係無くないですわ。とにかく早くこっちに近づいてくださらない?」


 車から顔を出したのは、小柄な少女だった。孔の勤める学校の制服を着ているが、孔には見覚えが無かった。少女の言う通りに近づくと、周りが少しざわついた。


「…なんだよ」

「あら、このわたくしにそんな口を利くなんて良い度胸してるんですのね」

「大人にそういう態度取るなんて良い度胸してんだなお前」

「わたくしは良いんですわ。…って、そんな事はどうでも良いんですのよ!いい加減寒いですし、まずは乗りなさい」

「何でだよ。嫌だよ、俺出勤しなきゃいけないし」


 これ以上騒ぎの中心になるのも嫌だった孔は、適当に嘘ではない嘘を吐く。しかし、相手は既に孔の正体を知っているのだろう。そんな事はさせまいと丸め込んできた。

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