小説家のお言葉 ④
「なあ――」
そう口を開いたとき、あることに気づいた。
「どうしたんだい?」
「いや……お前、入院とかしてる?」
もう夕方で、日も落ちていたので分かりづらかったが、彼女の顔色がかなり悪かったのだ。ただの風邪にしては様子がおかしいが彼女を見る限り重態というほどでもなさそうで、かなり奇妙だった。
「…入院というほどではないよ。少し病弱なだけなんだ」
「…へえ。なんていう病気?」
「だから、病気じゃないって言ってるだろう」
「病気じゃないって言葉、今初めてお前の口から聞いたんだけど」
「……揚げ足取りをされるのは嫌いなんだ」
「おねーさんブーメランが刺さってるよ。あ、何なら俺が薬で体調良くしてやろうか?二度と大きな病気にかからないと思うよ」
「神聖な巫女の血を引いているというのにどちらかというと真逆の存在である魔女の薬を飲むだなんて、前代未聞だよ。お断りするね」
「今の時前代未聞だらけだろ」
「一つ言わせてもらうけど、魔女の先生の気持ちをわたしが分からないように、先生も巫女の末裔のわたしの気持ちなんて絶対に分からない。だから余計なことはしようとしないでほしい」
「な…何ムキになってんだよ」
「……やっぱり外来の術者は野蛮なんだ。先生のおかげでよく分かったよ」
女子生徒は、くるりと身を翻してさっさと帰ってしまった。
「なんなんだよ……」
孔には、その理由は全く分からなかった。




