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子曰く  作者: 神秋路
18/117

小説家のお言葉 ②

「……」

「………」

「まだ残ってたのか。もう遅いんだから帰りなさい」

「……」

「黙ってないで早く…」

「先生は人気者なんだね。思ってたのと違う」

「…は?」

「もっと根暗で、一人を好むと思ってた」

「いや、根暗で一人の方が好きだけど」


 その前にこいつ失礼じゃねえか。

 そんな気持ちでいっぱいで、手に持っていた試験官を思いっきり投げつけそうになった。


「じゃあどうしてあんなに人に囲まれて、それでもって嫌な顔一つしないのかな?」

「…『一人が好き』と『人が嫌い』なのは違う」

「そんなの詭弁(きべん)に過ぎないよ。本当はちやほやされるのが好きだったり?」

「だーーーーーーーーーーっっっっうるせえなお前は!帰れって言ってんのが聞こえね―――のかよ!」

「ほら。本性が出てきたね」


 その一人の生徒は次から次へと揚げ足を取っていく。それがさらに孔の機嫌を逆撫でし、状況は悪化していくばかりだった。

 制服を見るからに女子生徒のようだが、髪の毛はベリーショートになっているし、話し方からもあまりそのような雰囲気は感じられなかった。しかし、ただの生徒ではなさそうなことは見て取れ、孔は発狂しながらも彼女の様子をうかがっていた。


「わたしは、先生がこうして一人になるのをずっと待っていた。だけど、皆全然帰らないものだからイライラしているんだ。そこは許してくれないかな」

「イライラしてんのはこっちだっつーの…しかも先生相手にタメ口とはいい度胸じゃねーか」

「そんなこと言って。本当はわたしたちとは五つの差もないくせに」

「五つは大きいだろ」

「では厳密に言うけれど、先生はわたしとは二つしか違わないんだよね?」

「っ…なんで本当の年齢知ってんだよ……」

「わたしが先生を知っているから」

「……!!」


 衝撃だった。


 年齢も詐称したし、何なら彼を知っている彼と同じ世代の人間たちは、もうこの学校のある土地すらからも離れているはずで、校長や教頭から聞かない限りその情報は出てこないはずなのに。まさかこの早い段階から……。


 目眩がしそうだった。


「大丈夫。誰からも聞いていないよ。元々興味があったものだから、個人的に調べていたんだ。先生や、神官と道士の橘のことも良く知ってるよ。わたし自身術者ではないんだけどね」

「…名前は?」

「うーん、先生なら柳原と言ったら分かるんじゃないかな」

「柳原…ってあの??」

「そうそう。いやあ、ああいうタイプの本を出すのは初めてだったから、何か不備が無いかずっと気になっていたんだ。もう読んでくれたかな?」

「いや、金が無くてまだ買ってないけど。友人が見つけたようで俺にその話をしてくれたよ」

「ああそう。じゃあ、読んだら感想聞かせてね。役に立てたら嬉しいから」

「…お前、何者なの???」

「何者って…ただの学生だけど…ああ、訳あっていくつか本を出させてもらっているよ。先生も見たことあるんじゃないかな」


 それはただの学生といえるのだろうか…というツッコミは置いておいた。

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