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子曰く  作者: 神秋路
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陰鬱な光明 ⑧

「俺だけで何とかならないか?」


 目前の少女はつり目を丸くさせた。


「それならそれで構いませんが……失礼ですが、あなたは今満足に魔法が使えないでしょう?」

「何があるか分からないことに同胞を巻き込むことの方が嫌だ。それに、俺と無関係でも無いことだと話したばかりだし……そうだ、前に薬ができて研究が進んでさ、一回の服用につき一日喪失症を抑えることができるようになったんだ。できない話では無いだろう?」

「ですが……」

「以前の俺ならできるかも知れないんだろ?」

「ええと……」

星流(ほしながれ)。一度信じてみると良い。孔の自信は、一度波に乗ればそれ以上にいい結果を生むんだ。僕らは、それに何度も導かれてきたんだ」

「……? そこまで御大層なことはまだしたことがないな」

「あったんだよ。たまには、神様も魔女や人間を信じてみるのも良いんじゃない?」

「……分かりました。ヨミ様にも聞いてみましょう。許可が下り次第、お迎えに上がります」


 星流はそう言って一度脱いだ下駄を手にすると、洗面台に足をかけた。下駄を履くのを我慢してくれたので、先ほどの地団駄も許すことにした。


 今にも鏡の中に飛び込む、という瞬間になって、女神は「あっ」と思い出したかのようにこちらを振り返った。


「実は、ヨミさまがこの鏡に月光の神力を送ってくださっているんです。とても丁度いいし、使い勝手もいいので、またこちらからお伺いしますね」

「頼むから玄関から入ってきてくれ……」


 孔の心からの懇願を聞いてか否か、一度ニコッと笑って鏡の中へ沈む彼女。その外見に相応した笑顔が印象的であった。


「……ここに神棚でも置こうか? お札か何か置いておけばいつでも連絡取れると思うし、向こうがそんなに鏡にこだわるなら神鏡を置いておけば違うかも。確か、倉に余ってたのがあったような」

「どうせ屋内に来るなら同じことだろ……」

「残念。お金が入るかと思ったのに」


 そうして凪も機嫌よく笑った。


 凪が帰宅して、地下室に降りてみると少し前まで見ていた縁起の悪い光景が目に入った。しかし成長は見られない。薬の研究を進めた事で魔力が向上、そうして魔法を成功させる事も増えたのだ。


「しかし、この前見たのはもっとゴツい感じだったような」


 見れば見る程、以前持っていたものとは違うことが分かる。つまり、これはヨミの落とし物などではないのだ。


 この石にも、誰かの命が宿っている。しかしこちらは人数が圧倒的に少ない。たった一人なのか。


「お前も大変だな」


 そんなつもりも無かったのに、何となく同情して声をかけた。


 『うん。大変』と答えるかのように、石が微かにちかちかと光った……ような気がした。

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