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子曰く  作者: 神秋路
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陰鬱な光明 ⑦

「あ!あなたは……って、うわわわあっ」


 少女の片手が空を切り、洗面台から落下。顔で着地した。


 異音に駆け付けた男二人は、その始終をただ見つめているだけだった。


「いったぁ~い! 何なの、ここ、こんな段差があるなんて聞いてませんっ!」

「はあ。俺も自宅の洗面台の鏡から女の子が出てくるとは思わなかったよ」

「珍しいね。今時のホラーは鏡が最先端なの? 僕らの時はテレビとか小汚い井戸だったよね、孔」

「もうっ! 凪までそんな事言って! 私の事忘れたのですか!」

「あ! お前!」


 赤くなった少女の顔をまじまじと観察してみると、少し前の事を思い出した。


 玄関前に倒れていた少女。流れ星だと名乗り、息絶えて消えた少女。忘れもしない出来事だ。


 そして、この少女は偽物で……


「この間はよくも……」

「ち、ちょっと、何の話ですか!? 私、あなたとは初対面ですっ!」


 「も~、何なのですか~!」と、赤くなった顔を抑えながら少女は立ち上がる。


「偽物の話でしたら、それはとんだ勘違いですよ! 私は本物ですっ! 前にヨミさまからお聞きしましたけど、あんな汚くて(きたな)い偽物と同じにしないでくださいっ」


 そして、その場で地団太を踏む。


 底が厚い下駄に強く打たれて床は徐々にへこみがちになっていく様子が見えた。


「分かった、分かったから下駄は脱げ。俺んちだぞ」

「正確に言うと僕んちだけどね」


 凪の鋭いツッコミが入ると、少女はピタッと足を止めて素直に下駄を脱いだ。


 客間に通すと、彼女はちょこんと行儀よく正座をし、一礼して口を開いた。


星流命(ほしながれのみこと)と申します。約百年前にこの地に落ち、ヨミさまによって拾われたほんの小さな隕石だったんです。偶然神格化しました。次に流れるのは来年頃です」

「あーーー……なんつーーか……大変だな」

「あなた程ではありません」


 キラキラしたような外見や装飾とは裏腹に、自分に向けられた言葉を次々となぎ倒すような彼女の言動に密かにたじろぐ。通さな隕石のわりには、少々つり目の瞳には広大な宇宙が広がっている……ように見えた。人も神様も、見かけで判断してはいけないのだ。


「実は、もう少し早く来るつもりだったのですが、件の偽物に邪魔をされてしまいまして。あと一歩のところで逃げられてしまったんです」


 それでは、あの時の偽物の怪我は、本物の手によるものだったのか。だとしたらかなりの死闘を繰り広げられたのか、と勝手に想像してみた。それとも、この目の前の少女が一方的にやった可能性もある。


 どう話を繋げようか考えあぐねていた時、先に凪が口を開いた。


「その邪魔って、具体的に何だったの?」

「あの石から生まれたものでした。影……というか、靄のようなものが出ているのを見つけたんです。昼だったのでヨミさまを起こす訳にはいかず、私一人で追いかけて……」

「コテンパンにしたのか」

「失礼なっ、致命傷を負わせたと言ってくださいっ!」


 女神は憤慨した。




「今日は、あなたにお伝えしたいことがあって来ました、神崎孔」

「なんだよ」

「実は、もうこちらで石を抑え込むことが厳しくなってきたのです。しばらくは上手くいっていて、このまま消し去ることも可能かと思われていたのですが……」

「返却するって? もう興味は失せたのか」

「まあヨミさまの事ですから、そのようなことも考えられるでしょう。それもあってか無いのかは分かりませんが、夜の国で潰してしまおうとお考えのようです」

「ああそう。それならそれでもいいじゃないか」

「ですが、我々の神力では壊すことはできても、半端に終わってしまうでしょう。完全に消しさることはできないのです。魔力と神力は相性が良くありませんから。ですから、あなたの魔力を使ってはいただけないでしょうか。これは、我々にとっても大問題で、天津神々にも掛け合ったのです」

「それで、その神サマも魔女を使いなさいって? でも、健在な魔女は俺か命ちゃんくらいしかいないぞ。少なくとも俺はそれしか把握できていない」


 元々この国には魔女が少ない。当然、外から来た時の数人と比べれば増えたのだろうが、そのいずれのほとんどが自分や先祖たちの故郷へ戻ったと聞いている。今分かる中で残っているのは、孔と依織と命の一族だけだ。


 血眼になってでも探せば見つからないこともないだろうが、自分たちが巻き込まれた厄介ごとに突然巻き添えにしたくはない。


 答えは一つだった。

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