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魔狩りのトガリ  作者: 吉四六
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戦術を考えながら闘う、人は、それを泥縄を編むと言う

 モニターにコロノアを呼び出す。

「コロノア爺様!」

『へ、陛下!』

 金獅子の突進を躱しながら、俺はコロノアへと指示を出す。

(きざはし)陣形から橋立(はしだて)陣形へと移行!陣形を保ったまま高速上昇しろ!高度三千を超えた国体母艦から、陣形を維持したまま各個高速転回!転回と同時に霊子砲を連続射出!」

 獅子の前肢を躱せば、三叉矛がオロチの装甲を削り取る。

『了解しました!国体母艦の船底に敵を誘い込むのですな?!』

 コロノアの言葉が終わる瞬間に、奴がオロチに拳を打ち込んで来る。

 上昇して躱す。

 獅子の牙が打ち鳴らされ、オロチの足を食い千切る。

「ちイイイっ!」

 オロチの足を復元再構築。

『各部隊に伝達!シップウにあっては高高度から霊子砲を連続射撃!目標!前方!敵陣右翼!後方!竜騎士の部隊にあっても右翼から敵陣を攪乱!』

 良し、俺の意図した戦略を呑み込んだ。流石はコロノアの爺様だ。

 高い位置取りの国体母艦が、順に前に出ていた陣形を、トガナキノでは階陣形と呼ぶ。

 それに対して、橋立陣形とは、国体母艦が一直線に綺麗に並んだ状態、垂直に綺麗に整列した陣形のことを、そう呼ぶ。

 各国体母艦が、天に連なる梯子のように並び、そのままの姿勢を保って、垂直に上昇を始める。

 高高度で待機していたシップウが海上に向けて全砲門を開く。

 部分的にだが、雨のように霊子ビームとレーザーが降り注ぎ、質量弾が海面にクレーターつくり出す。

 ジェルメノム帝国は、シップウからの砲撃を避けるために左へと移動する。

 上空の国体母艦が高速転回を開始し、巨大な霊子砲を射出する。

 国体母艦の編隊を覆い尽くすために、球状に展開しようとしていたジェルメノム帝国の陣形が崩れる。

 上昇し、高度三千メートルに達した国体母艦が、その座標軸を維持しながら、次々と上空へと垂直移動、同時に、高速転回しつつ霊子砲を撃ち出す。

 ジェルメノム帝国は、編隊を崩されることを嫌い、その霊子砲を避けるために高度を落としながら国体母艦へと近付こうとする。

 高高度からの垂直下砲撃を右翼に受け、橋立陣形からの全周囲水平砲撃によって、頭を押さえ付けられた状態なのだ、当然、左旋回にて橋立陣形に近づこうとする。

『ヘルザース閣下!敵戦陣の後方から国体母艦の船底へと敵を追い込んでくだされ!』

『承知した!戦況は不利!一旦、退く腹積もりじゃな?殿(しんがり)は某に任されよ!』

 うん。ヘルザースがそう思ってるならこの戦術は成功だ。

 トガナキノの駆逐艦、航空母艦、八咫烏に竜騎士、各部隊が敵の右翼に回り込み交戦を始める。その戦場に、敵後方まで抜けていたヘルザースの大隊が加わり、さながら渦巻きを描くようにして戦場が集束している。

「くっくっくっくっく、師匠よ、帝国の軍に上昇させないように砲撃しながら、国体母艦は宇宙に逃げるか?それでよい。そうして、宇宙に逃げて、人類という種子を宇宙に拡散させるのだ。」

 金色の獅子がその口から霊子ビームを吐き出す。

 オロチの霊子障壁が弾く。

「ふざけんな!貴様如き人形に追い立てられる訳にいくか!!」

 タナハラの操る副椀が獅子の鬣を削る。

「口ではどうとでも言える。現実はどうだ?師匠の創った国は宇宙へと逃げ、そして、師匠は…」

 獅子の口が開きオロチの胸に喰らい付く。

「朕に殺されるのだっ!!」

「クソッ!!」

 蒼白い閃光が、オロチの胸部を撃ち抜く。

 破片が散らばることはない。

 高密度に圧縮された霊子の力は物質を圧縮する。

 オロチの胸にポッカリと空いた穴は物質が圧縮されてできた穴だ。したがって、破片が宇宙空間に飛び散ることはない。

 オロチの霊子ジェネレーターから蒼白い光が血飛沫のように飛び散るだけだ。

『いいぞ。上書きした。』

 おせぇぞっ!!

『良いからやれ。』

 オロチのコクピットが金色に染まる。

 俺が身に纏っている量子情報体が高速活動を開始、心拍数を上昇させて脳のクロック数を数十倍に引上げ、超高速ゾーンに突入。

 テメエら!力を貸せ!!

『わかってる。』

『わかってるよ。』

『当然。』

『行くぞっ!!』

『了解。』

 俺の副幹人格全員が意志を統一、リンクしている波状量子コンピューターの出力を引き上げる。

 各国体母艦に保存している俺の分体を起動させ、各分体の霊子回路もフル回転させる。

 オロチの幽子集束ホイールが高速回転し、宇宙空間では聞こえるはずのない高音を響き渡らせる。

 破損した霊子ジェネレーターの低音が、十二個設置されたキノコ型幽子吸入ベントの高音に掻き消され、ジェネレーターの回転がマックスに達したことを俺に報せる。

 オロチの胸に空いた穴。

 その穴から大量の霊子が溢れ出す。

「まだっ死なぬかっ!!」

 金色の獅子が三叉矛の切先でオロチのフェイスを突きにくる。

 オロチのフェイスマスクが上がり、出現したオロチのフェイス。

 龍の髑髏を模したフェイスが口を開いて三叉矛の切先を咥え込む。

「なにっ?!」

 奴の驚愕した声を聞きながら、胸から溢れ出す霊子がオロチを包み込む。

「ウオオオオオオッ!!」

 フル演算。

 超高速ゾーンの中にあって俺の脳が焼ける。

『戦え!』

 胸の中心でトガリが叫ぶ。

 蒼白い霊子が炎のように燃え上がる。

 オロチを粒子に分解。

 瞬時に六体のオロチを再構築。

「…なっ…」

 驚くのはこれからだ!!

 六体分の霊子を検知特定、変換できるならやってみやがれっ!!

 一体目のオロチが拳を振り下ろす。

 奴が霊子障壁を張り巡らせる。

 障壁の形状に添って一体目のオロチが滑る。が、周波数帯を一瞬で合わせて、二体目のオロチが拳を振り下ろす。分解命令を走らせた霊子を放出。

 霊子障壁を分解。

 三体目が拳を振り下ろし、金色の装甲を分解し、ヒトガタの顔面を砕く。

 飛び散る霊子。

 分解された部品は金色の粒子となって宇宙空間へと消えていく。

 四体目が獅子の顔に拳を突き込む。

 獅子の顔を分解消去。

 五体目が獅子の胴体を砕きながら霊子の放出を継続。

 六体目。

 俺が、俺自身がオロチの両掌から霊子を放出させる。

「消えろッ!!」

 真赤な霊子の奔流が金色の獅子を包み込む。

「き、貴様アアアアアアアッ!!」

 皇帝の声を使うんじゃねぇっ!!

 皇帝の体を使ってんじゃねぇよっ!!

 赤い霊子の中で、奴が再構築を繰り返す。

 粒子となって、再び、金色の獅子を再構築する。

「霊子の周波数を変えたって無駄だ!!」

 すぐさま、別のオロチが周波数を合わせて赤い霊子を吐き出す。

 何度だって分解してやるっ!!

 奴が、霊子の周波数を変えながら再構築する度に、俺は、俺達は、その周波数に合わせて霊子を放つ。

「無駄な…朕を分解しようとも、人類は旅立つのだ…それが、人類の種としての歩み…」

 放つ霊子量が増大する。

「ふざけんな!人類が旅立とうがどうしようが知ったこっちゃねぇっ!たとえ!テメエの言うとおりだったとしても!人類が旅立つのはテメエのお蔭じゃねえんだよっ!俺たちゃ!俺達のやりたいようにやるっ!!テメエの出る幕なんざっ!これっぽっちもねぇんだよ!!」

 金色の獅子が粒子となって消える。

 完全なる消滅だ。

 そう、ジェルメノム帝国初代皇帝メルヘッシェン・フォーギース・バーナマム皇帝も消えた。

 真暗な宇宙空間に残滓となった金色の粒だけが漂った。

「だから…消えちまえ…」

 最後に俺の言葉だけがポツリと残った。

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