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魔狩りのトガリ  作者: 吉四六
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ふざけんな!!(挿絵あり)

 オロチに霊子を流し込む。

 元は翼だった異形の腕にも霊子集束ホイールがある。

 そのホイールが高速で回転する。

 過剰な霊子は質量の増大を招く。

 そんなことに構わず、俺はオロチに霊子を注ぎ込む。

 一点を睨む。

 その座標に届けと、睨む。

 臨もうと臨むまいと、奴は倒さねばならない。入れ物となった少年は何も知らないままに、この宇宙空間にいるのだろう。

 聞いたこともない軋り音が耳鳴りのように聞こえる。

 その音に、俺自身が歯軋りしているのだと気付かされる。

「…行け…」

 爆発したかのような突然の加速。

 一瞬でオロチが金色の獅子に近接する。

 獅子が駆ける。

 疾駆する動きに連動して各足と腹部、そして、鬣の内側から霊子ジェットが吹き出す。

 俺の突進を易々と躱して、俺との距離を取る。

「焦るな。じっくりと楽しもうじゃないか。」

 奴の声が聞こえる。

 どうして、宇宙空間で奴の声が聞こえる?

『マイクロマシンだ。マイクロマシンで、奴は俺達のマイクロマシンに接触している。』

 上書きできてないのか?

『できていない。と、見るべきだな。俺達の演算能力と奴の演算能力は拮抗している証拠だ。』

 金色の獅子が首を回して吠えるような姿勢を見せる。

 口腔内に荷電粒子砲か、霊子砲の砲口が見える。

「キドラの時と違うな。」

 そう、キドラは自身の演算能力は俺には及ばないと言っていた。俺の言葉をきっかけにかどうかはわからないが、俺の言葉が終わると同時に金色の獅子が変形を始める。

 頭頂部の鬣がリフトアップし、側頭部の鬣が展開する。

 頭頂部から現れたのは人型の頭部。

 側頭部から現れたのは人の両腕だ。

 獅子の鬣がそのまま宝冠に見えるように立ち上がり、左前腕には、丸い盾を備えている。右腕には、やはり金色の棒を握っており、その棒の両端に粒子が収束し、金色の三叉矛を形成する。

 獅子型のケンタウロス。

 獅子部分の受け持ちは、キトラの本体か?

『恐らくな。』

 俺よりも高い位置から、奴が、俺を見下ろす。

「師匠の霊子量は尋常ではないな。何人分に相当する?一万か?十万人分か?」

 脇を絞め、折り畳んだ右腕で三叉矛を立てる姿は王を意識しているのだろう。

「皇帝の真似事はやめろ。胸糞が悪くなる。」

 左腕で自分自身の胸を指し示しながら奴が応える。

「真似事ではない。朕は、皇帝以外の何者でもないからな。」

 激高。

 俺の感情にオロチが応え、フェイスマスクが上がって、牙を剥き出しにしたオロチの口が出現する。

「ふざけんな!貴様は只のロボットだ!自己進化だと!?この勘違い野郎が!その子から離れろ!!」

 奴が首を傾げる。

「離れても良いが、朕が離れれば、この子は自我を保つことができんぞ?」

「なにっ?!」

 理解できない。どうして、奴が皇帝から離れれば、自我を保つことができなくなるんだ?

「朕がこやつの操作を始めたのは、こやつが二歳の頃からじゃ。その頃から、こやつは外界に接することなく、夢の中で赤子のまま、育ってきたのだ。」

『成程な。精神体が育っていないということか。』

 イズモリの言葉が終わると同時に、オロチを加速させる。

 奴が左前腕に装備した盾で、俺の、オロチの拳をガードする。

「クフッ」

 奴がマイクロマシンを使って、俺に聞こえるように笑う。

 獅子の竜騎士。

 キトラの本体が一緒に操作しているのは間違いない。

 獅子の頭頂部に人の頭を載せ、耳の部分から人の両腕が伸びている。

 俺のオロチも異形だが、皇帝の竜騎士も異形だ。

 獅子型のケンタウロス。

 俺の拳が二人を分ける。

 反作用によって互いに距離ができる。

「師匠、変わったデザインの竜騎士だな。」

 笑い声を含ませながら、奴が皇帝の声と口調で俺に呼び掛けて来る。

挿絵(By みてみん)

 加速。

 三叉矛の間合い直前で右に旋回。

 三叉矛は右手に握られている、奴の左へと回り込む。

 奴は微動だにしていない。

 突っ込む。

 弾かれる。

 盾だ。

 副椀が奴に殴り掛かる。

 躱される。

「クソッ!」

 タナハラが唸る。

 接触した瞬間に俺の霊子周波数を検知特定された。

 すぐに周波数を変換する。 

 獅子の腹部から霊子ジェットが噴出され、高速で移動する。

 獅子の足にも霊子ジェットがある。

 十二門の霊子ジェットがあり得ない加速を生み、オロチの射程外へと離脱し、急角度で再接近してくる。

 奴はフル演算で俺の予測を超えた軌道を生み出し、右前腕に備えられた霊子ジェットを点火する。

 突然、加速された右腕の動きは、俺の知らない、見たことの無い動きで三叉矛を撃ち出した。

「ちイイイイイッ!!」

 オロチの右腕を削られながら、俺もオロチを加速させる。

 奴は俺が変換した霊子の周波数を直ぐに合わせてきた。

 どういうことだ!?俺の演算能力を超えてきてるぞ!

『恐らく、奴の保有する波状量子コンピューターだ。直列演算してるぞ。』

 クソッ!

『こっちも直列演算する。』

 頼むぜ!

 オロチのコクピットが蒼白い光に満たされる。

 一気に加速。

 オロチと金色の獅子が絡まるように無軌道な軌跡を描き出す。

 既に、金色の獅子と接触した座標から星の裏側まで移動している。

 トガナキノの軌道エレベーターと月が見える。

「これだけの軌道エレベーターを造ったのだ。師匠も宇宙に出る気はあるのだろう?」

 打ち合った回数は百を下らない。

「月にも拠点となる施設を造った。ならば、次は火星か?太陽系から出るのはいつになる?」

 互いに相手の霊子周波数を検知特定し、変換し合っての打ち合いだ。装甲を削ることはあっても破壊にまでは至らない。

 どううことだ?やはり、キドラの時と全く違う。キドラと相対した時は、奴は自分で、波状量子コンピューターと直列演算できる俺には敵わないと言っていた。あれはハッタリだったのか?

『いや、奴の乗っている竜騎士だ。竜騎士に波状量子コンピューターを積載しているんだ。それに奴の霊子量が桁違いなのかもしれん。』

 どういうことだ?

 イズモリとの会話中にも、奴は三叉矛を打ち込んで来る。

 俺は三叉矛を躱すのに手一杯で、反撃することができない。

『奴の城にはクドラデレンゲが大量に栽培されていた。あれだけの量の霊子金属を稼働させるには、相当量の霊子が必要になってくる。』

 そうか、同じ性能のコンピューターでも出力を上げれば…

『そうだ、規格外の演算能力を引き出せる。』

 そのためには、それに見合った霊子量…奴隷かっ!?

 三叉矛の切先がオロチの顔を掠める。

「ちっ!!」

 オロチを加速させ、距離を取る。

『霊子金属を霊子タンクとして積んでいる可能性が高い。』

 クドラデレンゲで人間の脳をそのまま霊子金属にして、その霊子金属を霊子タンクとして積載してる?それでも、量的には俺達には届かんだろう?

『いや、そうとも限らん。それと、指向性だ。』

 奴が超加速で俺へと打ち込んで来る。

 俺は、オロチを回転させて、咄嗟に躱す。

 指向性?

『そうだ。生きている時に闘争本能を極大にまで肥大させ、その指向性を載せたまま霊子金属にする。それと、タンクと言っても本当にタンクの形状である必要はない。』

 奴の連撃、連続した突きを超加速で躱すが装甲が削られる。

 そうか。

 俺達みたいにアクチュエーターその物に使用しているのか!

『アクチュエーターだけじゃない、フレーム、装甲にだって使える。』

 換算すれば何人分だっ?!

『この質量…恐らくは数十万人規模だろう。』

「ちイイイッ!!」

 奴の三叉矛が軌道を変化させ、オロチの左脛を打ち抜く。

 その作用でオロチがバランスを崩し、左脛から先が捥げる。

「くおっ!!」

 俺は叫びながら、オロチの左脛から先を粒子化分解、再構築させて、オロチの左足を復元する。

「ははは、流石は師匠だ。復元再構築のスピードは半端ではないな。」

 俺と交差し、振り返った奴が、余裕のある声で話し掛けて来る。

「しかし、それだけの力を持っていても、朕との戦争には勝てぬな。」

 戦争…

 今、俺と奴は戦っている。そう、戦っているのだ。戦争という言葉をワザと使った?

 意識を戦場へと向ける。

 同期したイデアの情報がオロチのモニターの分割画面に映し出され、俺は戦慄する。

 ジェルメノム帝国の陣形が変化している。国体母艦の編隊を覆い尽くすように球状へと組み替えられようとしている。

「ちっ!」

 金色の獅子が加速して突っ込んで来る。

 避ける。

 すり抜けざまに獅子の前肢がオロチの腹部を掠めて装甲を削る。

「くくくく、戦場に気を取られていては、朕には勝てぬよ。」

 てめえ…ふざけんなっ!!

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