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魔狩りのトガリ  作者: 吉四六
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Gナンバー?今度は速攻でとっちめてやる!

 街が倒壊する。

 その地盤を割って、巨大な影が蠢くように出現する。

 先に飛び立った漆黒の龍、その龍がオロチに襲い掛かる。

「舐めるな!!」

 オロチの両腕が龍の頭を鷲掴みにする。

「二頭!」

 五本の副椀が残った二頭の龍を捕らえる。

「四頭!!」

 オロチの手と副椀は霊子砲でもある。ゼロ距離で霊子砲を撃つ。

 黒龍の頭部が跡形もなく分解消失する。

 霊子を黒龍の体内から吸引。

 地上へと投げ捨てる。

 咆哮。

 物理現象を伴ったような巨大な咆哮を体全身で感じる。

 Gナンバーだ。

 核弾頭を次々と生み出し、射出するGナンバーだと、皇帝は言っていた。

 そのGナンバーが崩れる帝城から姿を現す。

 巨大な四足歩行の恐竜だ。

 ティラノザウルスのように狂暴な顔に似つかわしくない長い前脚。

 上空のオロチに向かって照準を合わせ、巨大な顎を開く。

 背中には歪な棘がビッシリと生えている。

 尻尾の先に巨大な塊が見える。

 岩を無理矢理接合させたような塊。

 その塊が、接合部分から割れる。

 展開する。

 隙間から蒼白い霊子の光が見える。霊子ホイールが高速回転する音が静かに響く。

 背中の棘が放電現象を見せる。

 上下に開いた太い牙、その牙を結ぶようにして稲妻が奔る。

『口腔内で磁界を形成している?』

 腹部が爆発音と共に巨大に膨張、一瞬で収縮する。

『避けろ!!』

 イズモリの声に反応して超高速ゾーンに入る。

 口から吐き出されたのは熱線だ。

 プラズマ砲。

 電磁界によって封じ込められたプラズマがオロチに向かって伸びる。

 防御する装備はない。

 オロチを大きく旋回させ、プラズマを避ける。

 ゾーンから出る。

「イデア!!」

『はい。このGナンバーは腹腔内にて強力な磁場を発生させ、その電磁界にて核爆発を爆縮、そのエネルギーを、電磁界を生成しながら吐き出します。』

『拙いな。マイクロマシンが電磁界によって無効化される。』

 関係ない!

『なに?』

 俺は即座に超高速ゾーンに入る。

 時間が止まったような錯覚。

 行くぞ!!

『ま、まさか!お、お前!!』

 オロチごと粒子化光速移動させる!!

『な、一瞬でオロチを再構築するっ…』

 イズモリの言葉が途切れる。

 オロチが光って粒子となって消える。

 一瞬で、Gナンバーに接触できる位置でオロチを再構築。

 Gナンバーはオロチのいなくなった空間を見詰めたままだ。

 俺の目の前が真っ赤に染まる。

 三百六十度全面モニターに血飛沫が飛ぶ。

「行けエエエエエエッ!!」

 オロチの両腕がGナンバーの腹部に接触、右腕が即座に霊子砲を撃ちこむ。

 分解。

 Gナンバーの腹部が分解、消失する。

 僅かに遅れて左腕の霊子砲を撃ちこむ。

 剥き出しになった電磁界に閉じ込められた核爆発。

 時間の止まった中、物体と化した核爆発に霊子が撃ち込まれ、圧縮される。

 霊子が作用する。

 圧縮された核爆発に上へと質量の方向を変換する。

 超高速ゾーンを解除。

 音とは認識できない轟音を発して、細く巨大なエネルギーが空を駆け抜ける。

 空気を引き裂き、成層圏を超えて、月の脇を抜けて、白く巨大なエネルギーが駆け抜けていく。

「…やった…」

『まったく、無茶をする。』

 自爆されたら厄介だ。そんな暇、与えてやるかってんだよ。

 オロチの両腕が分解されている。

 電磁界に接触した影響だ。マイクロマシンが停止して俺の霊子によって分解、圧縮されたのだ。

 赤い視界の中で、俺はオロチの両腕を再構築する。

『自分の体も修復しろ。』

 ああ、わかってる。

 飛び散った血を分解して、再び、俺の体の中に取り込み、破れた毛細血管を修復。

 俺は溜息を吐きながら視線を走らせる。

 ジェルメノム帝国の国体母艦は、ゆっくりと自壊しながら、地上へと墜ちて行った。


『サクヤ!どうなの?まだ霊子を同調できないの?』

 トガナキノのオープン回線からテルナドの声が聞こえる。

『焦らせるんじゃないんし!』

 そうだ、焦る必要はない。テルナドの操作はジェルメノム帝国竜騎士の搭乗者よりも上回っている。

 俺は、オロチに搭載してあるイデアの複製プログラムをメタトーンに繋げる。

「オロチ、メタトーンのコクピット内を出してくれ。」

『了解しました。』

 三百六十度全面モニターが分割されて、その一面にテルナド、サクヤ、トドネの顔が映し出される。

 サクヤの表情だけが暗い。

 サクヤの眉根が歪んでいる。

 俺はサクヤと精神体を同調させる。

『大丈夫、サクヤ、さっきの感覚でイイんだ。あとは、自分の霊子を相手の霊子に同調させるだけだよ。』

 精神体を同調させたことでクシナハラの声が聞こえるようになる。

「そ、そんなこと言ったって…」

 サクヤの声も通信回線からではなく、隣にいるような感覚で聞こえる。

『サクちん?さっきから誰と話してるのですか?』

 うん、独り言、全開だな。

 クシナハラ、チェンジしてくれ。

『了解。』

 サクヤに話し掛ける。

『サクヤ、俺と話してる時、声に出しちゃダメだ。トドネは父さんの中に複数の人格がいるってことを知らないからね。』

「と、父さん?!」

『だ、だからぁ、声に出すなって。』

 わ、わかったのし。

 でも、コツがわからんし、どうやったら、自分の霊子を相手の霊子に合わせられるんしか?

 サクヤが汗をかなり掻いている。焦燥の色が濃い。

『相手の霊子は掴んだんだな?』

 う、うん、多分、わかったんし。

『よし、じゃあ、その相手の霊子、それを自分の人差し指だと考えてごらん。』

 ひ、人差し指?

『そう、人差し指、そうだな、サクヤの利き腕は右だから、左手の人差し指だな。』

 わ、わかったのし。

『で、自分の霊子を右手の人差し指だと思うんだ。前にやったことがあるだろう?目を瞑って両手の人差し指をくっ付ける遊び。』

 うん、やったことあるんし。

 瞼を閉じて自分の顔の前で両人差し指の先を合わせる。

 これが中々に難しい。

 できる者にとっては簡単な仕草なのだが、できない者にとっては、難しいのだ。

『それと同じだよ。左手の人差し指と右手の人差し指をくっ付けるんだ。』

 くっ

 サクヤが心の中で悔し気な声を上げる。

『大丈夫、落ち着いてやればできる。感覚、イメージ力が大事なんだ。』

 くっうっく。む?っく。

 震えていたサクヤの瞼がピタリと止まる。

 色濃かった焦燥が見る間に引いて行く。

 サクヤが目を開く。

 紺碧の瞳に力がある。

「これ、なんしか?…これが、霊子の同調なんしか…?」

『できたの?』

『凄いのです!』

 サクヤの呟きをテルナドとトドネが拾う。

 よし。

「オロチ、外部マイクロマシンと魔虫から映像を拾え。」

『了解しました。』

 分割された全面モニターの一面に戦場の光景が映し出され、俺はメタトーンの動きを追うようにオロチに指示する。

「まだ、わからんし、キピタッとなったんし!試すんし!」

 なんだよ、キピタッて、もう、サクヤの言葉遣いがドンドン、変な方向に行ってるぞ。

 オロチの全面モニターの中でメタトーンが急激な旋回を見せる。メタトーンに追い縋っていた敵竜騎士がその旋回に振り切られ、目標を見失う。

 メタトーンが動きの鈍った敵竜騎士に襲い掛かる。

『今なのです!!』

「ムンッ!!」

 トドネの声に合わせて、サクヤが霊子を放出させる。

『ていっ!!』

 二枚の右の翼がトドネの右腕の動きをトレースし、敵竜騎士の肩から胸を撫で斬りにする。

『やったのです!!』

 トドネの声にサクヤの顔が驚きの表情を浮かべる。

『やっと一機だ!次!行くよ!』

「ま、任せるんし!!」

 テルナドの声にサクヤが応える。

『よし、じゃあ、もう大丈夫だな、後は何度も何度も繰り返すんだ。良いな?』

 うん!わかったんし!

 メタトーンが次々と敵竜騎士を墜とす。

『凄いじゃないか。』

 白い竜騎士がメタトーンに話し掛けながら近付く。

「兄ちゃん!」

『トロちんなのですか!?』

『トロヤリまで来ちゃったの?!』

 スサノヲを駆るトロヤリだ。

 複雑な軌跡を描くメタトーンにピッタリと寄り添うようにスサノヲが飛翔する。

『父さんにスサノヲを預けられたんだ、出ない訳にはいかないよ。』

『なにっ!?トロヤリ!お前まで出て来ちゃったのかい?!』

 トンナが絶叫してる。

 同時にダイダロスの刃筋が乱れて、敵竜騎士を討ちもらしてる。

『そうだよ。』

『そ、そうだよじゃないよ!お前は次期国王なんだよ!こんなとこにいちゃダメじゃないか!』

『だって、サクヤだって戦ってるのに、僕が戦わないなんておかしいよ。』

『な、なに言ってんのさ!お前は次期国王なんだよ!お前になにかあったら!母さん!父さんにどうやって謝ればイイんだよ!!すぐに帰るんだよ!』

 トンナの依怙贔屓も大概だな。

「母さん、じゃあ、アチシも帰った方がイイんしか?」

『お前はどっちでも良いよ。危ないからお前も帰るかい?』

 うっわああ、超適当な返事ィ、それじゃ、サクヤが可哀想だよ。

「トンナ、いい加減にしろ。」

 俺は通信回線に割り込んだ。

『ト、トガリ!』

「トロヤリにはスサノヲを渡したんだ。魔狩りの子だ。戦わせろ。」

『そ、そんなこと言ったって…』

「そんなことより、業を煮やした敵が霊子砲を撃ってくるぞ。」

 敵竜騎士はトガナキノの防衛戦線を抜けても霊子障壁に阻まれ、国体母艦の絶対防衛線に侵入することができない。そうなれば、霊子砲を撃つのは自明の理だ。

 霊子砲と霊子障壁、どちらが勝つのかと言われれば、エネルギー量の多い方、もしくは集束率の高い方ということになる。たとえ、エネルギー量が多くても集束率が低すぎれば、エネルギー量の少ない霊子でも集束率の高い霊子が勝つ、その逆もしかりだ。

 また、指向性の強さも関係するが、その場合は霊子の周波数帯が同じでなければならない。

 ジェルメノム帝国には霊子の周波数を変換する技術がある。

 しかし、マイクロマシンが拾ってくる情報から察するに、単純に、霊子エネルギーを高めて集束率を上げるだろう。

 敵駆逐艦の船首が左右に開き、霊子ジェネレーターに直結した砲口が顔を見せる。

 うん、トガナキノの霊子障壁、抜けるだけのエネルギーだ。

 トロヤリの駆るスサノヲが急激な旋回と共にスピードを上げる。

 スサノヲの背中には光背がある。

 中央にはレーザー射出口を備えた円盤、その周りを囲む形で二重の円環が設置してある。

 外側の円環は半分に割れて展開し、霊子ジェットを噴出させる。

 内側の円環は霊子を収集させる。

 霊子を収集する円環が左に回る。

 右に回れば霊子を収集集束させるが、左に回れば、拡散させる。

 霊子砲を撃とうとしている駆逐艦の真正面にスサノヲが回り込む。

『ト、トロヤリ!!』

 トンナが絶叫する。

 蒼白い閃光が放たれる。

 スサノヲが光に呑み込まれる。

『に、兄ちゃん!!』

 サクヤが叫び、テルナドが叫び、トドネは絶句した。

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