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魔狩りのトガリ  作者: 吉四六
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三位合一!!

「ウッラアアアアアアアアアアアアアッ!!」

 ピンク色の閃光が戦場を駆け巡る。

 縦横無尽に駆け巡り、敵竜騎士の間をすり抜けていく。

 蒼白い火花を散らせながら、人間の感覚では無軌道としか言いようのない軌跡を描いて駆け抜ける。

 まったく違った軌跡を描いて緑の閃光が駆け巡る。

「ウッシャアアアアアアアアアアッ!!」

 まったく違った無軌道な軌跡を描きながら、ピンクの閃光が振るった斧槍、その斧槍が当たった箇所に剣の刃が振るわれる。

 同じF型マイクロマシンがぶつかり合い、F型マイクロマシンが削り取られた装甲、その僅かな隙間、F型マイクロマシンとF型マイクロマシンとの間に出来上がった僅かな隙間に寸分の狂いもなく剣の刃が潜り込む。

 斬れる。

 F型マイクロマシンの削り取られた、その装甲にF型マイクロマシン製の刃が滑り込む。

 ピンクの軌跡、トンナの駆るダイダロスが通った後を緑の軌跡、アヌヤの駆るヨルムンガンドNが奔り抜ける。

 ちなみにヨルムンガンドNのNは、殴るのNね。ま、どうでもいいか。

 その後に残るのは竜騎士と呼ばれていた物の残骸。

 霊子ジェネレーターをキッチリと破壊され、満足に飛行することができなくなった竜騎士だけが残る。

 オルラとコルナが同じ様にペアを組み、次々と敵竜騎士を稼働不能の状態へと陥らせている。

 ヒャクヤはチビヒャクヤを使っている。

 チビヒャクヤは、ヒャクヤ専用竜騎士、ルビーちゃんの付随アイテムである小型戦闘機を操縦している。

 この小型戦闘機、機首から翼にかけてF型マイクロマシンの刃でできている。しかも高周波ブレードだ。

 このブレードファイター二十八機が、自由に飛び回って敵竜騎士を切り刻み、ルビーちゃん本体は両手にブレードファイターを持って暴れ回っている。

 五機の王族竜騎士部隊が笊から漏れ出た敵竜騎士の悉くを稼働不能の状態に陥れ、空中でただ浮かんでいるだけの物体に変えている。

 そんな中、王族の中で苦戦しているのはテルナドをチームリーダーとしたヴァルキューレ三機だ。

『なんしか!?斬れんしっ!!』

『ふ、二人とも速いのです!もうちょっと私に合わせて欲しいのです!』

『二人とも!好き勝手に攻撃するんじゃないよ!一機に的を絞るんだよ!』

 まあ、的を絞っても無理だろ。

 トンナ達は、一度、斬りつけ、F型マイクロマシンを剥がしてから、その剥がした箇所に、もう一度、斬りつけているのだ。

 ハッキリ言って、そんな真似、不可能だ。

 俺だって吃驚したもん。

 あの高速移動の最中、敵に一合もさせず、剣を振るわせることもなく、先に斬りつけた箇所に寸分の違いなく斬りつけるって、どんな技術だよ。

 俺でも高速ゾーンの中に入らなきゃできねぇわ。

 オルラ、コルナペアは、コルナが斬りつけ、オルラが止めを刺している。

 うん、これはまだ納得。

 いや、まあ、その技術って言うか根本的に納得できない部分はあるけど納得だわ。

 でもトンナ、アヌヤペアは、マジで信じられん。

 トンナが先に斬りつけた後、アヌヤが斬りつけると思うじゃん?と、思ってたらアヌヤは別の機体を斬りつけてたりするんだよね。

 で、追って来る竜騎士をまとめて二度斬りしてんだよ。

 俺、見てて混乱したもん。

 あれ?その敵竜騎士、いつ、斬った?ええ?って感じ。

 とにかく、どっちが一度目に刃を入れて、二度目はどっちが斬りつけてるのかサッパリわからん状態だ。それでも、確実に墜としてんだから、大したもんだよ。

 そんな真似、子供三人にできる筈がない。

『ドネちん!近いんし!』

『し、仕方がないのです!トンナ姉さんみたいにしないと!敵竜騎士を斬れないのです!』

『二人とも!離れ過ぎだよ!もっとコッチに!コッチにお出で!!』

 もうバラバラ。

「テルナド。」

『な、なに?!ちょっと!今!忙しいんだけど!』

 うん、ちょっと傷付いた。娘に邪魔者扱いされるのは想像以上に堪える。

「テルナド、メタトーンモードに切り替えろ。」

『はあ?!』

 うん、そんな面倒臭そうに返事しないでくれる?

「メインコントロールパネルの左上にメタトーンと書かれたスイッチがあるだろ。それを押せ。」

『わ、わかった!クソッ!』

 これ、そんな汚い言葉、女の子が使っちゃいけません。

 テルナドが俺の指示に従い、メタトーンモードへと切り替える。

『な!なんしか!ヴァルがいきなり言うことを聞かなくなったんし!』

『こ!コッチもなのです!』

 テルナドの機体を中心にサクヤとトドネのヴァルキューレが集結する。

 三機の機鎧が変形する。

 テルナドのヴァルキューレのフレームが伸長し、腕と足を折り畳む。

 サクヤのヴァルキューレは頭部が胸部背面に折り畳まれ、腕が伸長、脚部は短く折り畳まれる。

 トドネは足が伸長して腕と頭部が折り畳まれ、胴体その物が後ろへと九十度回転する。

「三位合一!メタトーン合体!!」

 思わず言っちゃったよ…

 俺の声に合わせて、じゃなくって、合体に合わせて俺が言ったんだけど、とにかく、三機のヴァルキューレが合体した。

『コレ、コレ、これを作りたかったんだよね!』

 カナデラ、嬉しそうだな。

『マサトは嬉しくないの?』

 思わず口走っちまうぐらいに格好いいよ。

『まあ、俺達の世代なら変形合体は定番だからな。』

『でしょ?でしょ?』

『確かにねぇ、やっぱ、ロボットは合体しなくっちゃねぇ。』

『合体して強くなるならそれで良し!』

『まあ、可愛い三人の娘が、美人のお姉さん一人になるってのは好みの分かれるところだね。』

 ま、まあ、とにかく、三機のヴァルキューレが合体した。

 戦乙女が、三対の翼を持った大天使へと変貌したのだ。

 このメタトーンモード、実は戦力的にかなりアップする。特に対竜騎士戦においては段違いの性能を発揮…

『な!なんしかコレ!!操縦ができなくなったんし!いかれたポンコツなんし!!』

『こ、こ、困ったのです!どうすればいいのですか?!』

『なななな、な、なんなのよ!コレは!父さん!ふざけてんの?!』

 うん、娘たちには不評のようで、父さん、悲しいよ。

「いいか、三人ともよく聞け。」

 俺の言葉に三人が黙…

『父さん!一体なんなんしか!この竜騎士は!ポンコツなんし!!』

『そうなのです!この竜騎士!チェンジなのです!』

『父さん!やっぱりふざけてんの?!』

 全然、黙んないわ。

「いいから聞きなさい!!」

 怒鳴って、やっと黙る。

「いいか?三人には三人のそれぞれの役割がある。」

『役割?』

『なんしか?それ?』

『皆、黙って聞くのです。』

 うん、トドネがフォローに入ってくれる。

「テルナドがメインのパイロット、竜騎士の基本操作はテルナドだ。」

『う、うん、わかった。』

「で、トドネが背中に生えてる翼を操作する。上の二対はトドネの腕に連動してるが、下の一対は足に連動してるからな、そのつもりで操作しろ。」

『わかったのです!』

「サクヤ、お前がメタトーンの要だ。」

『か、かなめ…か、かなめって…なんしか?』

『一番大事な、重要な役どころなのです!』

『そ、そうなんしか?テル姉よりも大事なんしか?』

「そうだ。お前には父さんと同じ霊子回路が入ってる。」

 全員が黙ったまま、俺の言葉に聞き入っている。

「父さんと同じ霊子周波数変換コンバーターもだ。」

 サクヤの眉根がモニター越しに顰められる。

「敵竜騎士と接触すれば、相手の霊子周波数を検知特定できる。つまり、サクヤが相手の霊子の周波数を特定するんだ。」

 サクヤの顔が明らかに歪む。

「特定した周波数にお前の霊子の周波数を合わせて、分解命令を出しながら霊子を放出しろ。」

 サクヤが泣きそうな顔になる。

「テルナド、トドネ、そうすれば、メタトーンの翼から相手の暗黒精霊を分解する霊子が放出される。その翼で敵竜騎士を斬れ。」

『わかった。』

 テルナドが牙を剥いて笑う。

『わかったのです!』

 トドネがニッコリ笑って返事する。

 サクヤだけが泣きそうな顔だ。

「サクヤ、自信がないのか?」

 サクヤが口を窄めて俯く。

『違うのです!』

 トドネの言葉に俺が驚く。

「な、なにが?」

『サクちんはトガ兄ちゃんの言ったことがよくわかっていないのです!』

 ああ…

 ああ、そういうこと。

 そういうことね、そりゃそうだ。五歳だもんな。

 霊子の周波数とか検知特定とかよくわかんないよな。

 クシナハラ。

『はいは~い、了解だよ。サクヤとは、一応、精神体が繋げてあるからね、俺がフォローに入って誘導するよ。それでいい?』

 頼む。

 サクヤとの専用回線を開く。

「サクヤ」

『…』

 拗ねてる。

「今から、父さんの中のクシナハラって奴がお前と接触する。ソイツがサクヤに霊子回路の使い方を教えてくれるから、ソイツの言うことをよく聞いて使ってみろ。」

 サクヤが上目遣いでチラリと俺を見る。

『…わかったんし。』

 もう、困ったなぁ、何が不満なんだよ。

「サクヤ、なにを怒ってる?」

『別に、なんも怒ってんし。』

 俺は溜息を吐く。

「とにかく、気を付けろ。無理しなくて良いからな?母さんたちが頑張ってるから。」

 サクヤが俺を睨む。

『わかったんしっ!!』

 サクヤが通信回線を切る。

 もう、テンション下がるわぁ。娘の反抗期?第一次反抗期って五歳だっけ?

『第一次反抗期は終わっている、特徴から言えば中間反抗期だな。』

 そんなのあるんだぁ。

『サクヤは失敗することが少なかったからな、最近、自分の思い通りにならないことが起こり過ぎて気持ちをコントロールできないんだろう。』

 もう、しょうがねえなぁ、だからって、俺が戦場に行くわけにもいかねえし。

『そうだな、俺達はこっちがメインだ。』

 そう、俺達は戦場ではなく、ジェルメノム帝国の上空にいた。

 目の前に浮かぶ超巨大質量物体。

 ジェルメノム帝国の帝城どころか、その帝都さえも載せて浮かんでいる、国体母艦に匹敵する巨大な物体。

 ジェルメノム帝国国体母艦。

 俺達の目の前に浮かんでいる物体はそう呼ぶ以外にない物だった。

「まったく、なんて物を創りやがんだ。」

『まあ、人のことは言えんがな。』

『まったくだねぇ。』

『ホント、でも意匠がいい加減だよね。デカけりゃイイってもんでもないのに。』

『強けりゃイイんだ!!』

 でも、俺達とは基本的に違う。

『そうだ。』

『そうだねぇ。』

『違うねぇ。』

『当たり前だ!』

 獣が唸るような轟音を響かせながらジェルメノム帝国の国体母艦が前進を開始する。

 岩に覆われた船底から、ゴミ屑のように巨大な岩石が落ちていく。

 地盤が抉り取られたまま、空に浮かんでいる国体母艦。

 その地面が割れて国体母艦の中から砲塔が現れる。

 帝城からも異様な外観を持った砲塔が出現し、全ての砲塔がオロチに向けられる。

 一体、どれだけのエネルギーを喰っているのか。

 そのエネルギーは何処から来るのか。

 各砲塔の霊子ホイールが蒼白い発光と共に高速回転する。

『約三百三十九万人。』

 ジェルメノム帝国の人口は約三百四十万人だ。

『ほとんどの国民がこの国体母艦を稼働させるために使われているんだろう。』

 大きさは俺達の国体母艦よりも小さい、しかし、パワーは桁違いにでかい。

 コノエ、サエリ、手伝え。

『え?えええ?』

『そ、そんなぁ!マスター!今は無理ですぅ!』

 喧しい!泣き言ぬかすな!リンクする!手伝え!

『ひっ!り、了解です!』

『り、了解ですぅ!』

 音速を超えた初弾が撃ち出される。

 百を超える実弾だ。

 超高速ゾーンに突入。

 オロチの幽子集束ホイールが高速回転し、同時に俺の霊子を吸い上げる。

「インドラモードっ!!」

 後頭部から伸びる、太く長い尻尾の各関節が一直線に後方へと固定。

 尻尾の上下に収納していた刃を展開、更にその刃が裂けたように二つに割れる。

 翼との接合点でテールが折れるようにしてオロチの頭上へと回転。

 二つに裂けた刃の間には霊子の蒼白い発光。

「霊子障壁充足率百で展開!粒子障壁充足率三百で展開!」

 オロチの前方二百メートルで霊子障壁を展開し、その内側、前方百九十メートルで空気の分厚い層を展開する。

 霊子障壁は斥力力場である。したがって、実弾と外圧となる霊子を弾き、空気の層は荷電粒子を拡散させる。

『レーザーも来るぞ。』

「副椀展開、拡散屈曲障壁照準照合。」

 オロチの翼がオロチの全身を包み込むように回り込み、各副椀に設置されているアルミナガラスが展開、オロチの全身を覆い尽くし、虹色の蓑虫のようになる。

 副椀に取付けたアルミナガラスは微細な組み合わせで構造色と呼ばれる虹色を発っしている。

 演算シミュレートによって、光学兵器の照準を読み取り、そのアルミナガラスで着光座標を覆うのだ。

 光子は質量を持たない。つまり質量方向を変換することで斥力を発生させる霊子障壁は役に立たない。

 だが、このアルミナガラス装甲によって、光は屈曲、誘導されて、オロチ本体の装甲に当たることはない。

「霊子ジェット全開!インドラストライク!」

 頭上に掲げた巨大な刃が前に向くように姿勢制御。

 一気に霊子ジェットを全開にする。

 霊子障壁と粒子障壁を前面に押し出しながら、敵国体母艦に霊子の刃を向けたオロチが超高速で発進する。

 霊子障壁に実弾が着弾。

 その悉くを障壁に沿って弾く。

 荷電粒子砲から射出された太い光は、霊子障壁内側に展開させた粒子障壁によって減衰拡散する。

 レーザーだけがオロチに届くが、その光学兵器も屈曲拡散されて空へ地上へと分散誘導される。

「霊子ソード!展開!!」

 ただでさえ巨大な刃が、更に輝きを増し、極大の刃へと変容する。

 接触。

 F型マイクロマシンを一瞬で無力化。

 分解命令を載せた霊子の刃が一気に敵国体母艦へと潜り込んで行く。

 粒子と化した岩石が光りながら散っていく。

「回転!」

 脇の霊子ジェットの射出ノズルが微妙に角度を変えて、オロチに回転力を与える。

 霊子の刃に刃毀れは関係ない。

 分解命令を載せた霊子の刃は、触れる物、全てを分解してしまう。

「イッケエエエエエエエエエエエッ!!」

 分解だ。

 爆発は伴わない。

 分解消去されるなら音も出ない。

 静かに。

 静かに破壊が進むだけだ。

 響き渡るのはオロチの霊子ジェットの音だけだ。

 国体母艦の霊子ジェネレーターに到達。

 圧縮された霊子が俺の霊子によって命令を書き換えられる。

 分解命令を受けた圧縮された霊子、その霊子が巨大な奔流となって敵国体母艦の内部に溢れ出す。

 物質を構成していた元素が、本来、引き寄せ合う力場を展開する霊子によって分解される。

 敵国体母艦の中心部で巨大な空間を形成した霊子はそれでも飽き足らずに周囲へと拡散し、国体母艦の構造体を次々と分解し続ける。

 敵国体母艦のケツからオロチが抜ける。

 空中に出ると同時にオロチの翼を広げ、インドラモードを解除し、俺はオロチを適当な座標に固定させ、敵国体母艦の成り行きを見守った。

 敵国体母艦の崩壊が始まる。

 甲板中央の帝城の底が抜け、国体母艦へと埋没を始める。

 街が帝城を中心に国体母艦へと落ち込んで行く。

「サエリ!コノエ!手伝えっ!!」

『は、はいっ!』

『はい~っ!』

 瞬時にジェルメノム帝国の国民全員をマーキング。

 分厚い空気の層で包み込む。

 その中にはキドラと、キバナリのカウンディもいる。

「イデア!キバナリのカウンディを回収!保存液にて回復させろ!」

『了解いたしました。』

 粒子化光速移動でカウンディが回収される。

「サエリ!コノエ!人間の方は任せる!地上に着地させろ!死なせるな!」

『り、了解しました!』

『了解ですぅ!』

 俺は見つける。

 国体母艦から飛び立つ黒い影を。

 黒い影は四つ。

 その影がオロチに向かって飛翔する。

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