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魔狩りのトガリ  作者: 吉四六
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戦時下においても俺は怒られる。でも、正座することはなかったのでホッとした

『マスター!!』

 サエリ?どうした?

『国体母艦を高速移動させてますか?!』

 させてるみたいだけど、それが、どうかした?

『どうかした?じゃないですよ!』

 えらく怒ってるな?

『国体母艦が霊子障壁を展開しながら高速移動してるでしょう!』

 う、うん。

『うん、じゃないです!!このままほっといたら!今後七年間は異常気象が発生しますよ!』

 え、ええ?!

『半径三十キロ!直径にして六十キロメートルの霊子障壁を!七隻全部の国体母艦が展開して高速移動してるんですよ!惑星の気象に異常が出ない訳ないじゃないですかっ!』

 あ、ああ、うん、すまん、なんとかしてくれ。

『なんとかしてくれじゃないですよ!新神母艦なんか、海底にまで霊子障壁を展開してるでしょっ!そうなってくると深層海流にまで影響を及ぼしてますよ!きっと!』

 ナ、ナルセ。

『…はい…』

 お、思いっきり、機嫌、悪そうだな。

『そうでもないですよ。ただ、忙しいので後にしていただけませんか?』

 そ、そうか。一生懸命、海流を調整してくれてるんだな、うん、察するよ。ゴメン。

『マスター!深層海流に異常があれば!異常な気温上昇や低下を招くんです!こんなことをするなら事前に報せてください!!』

 サ、サエリ…す、すまん…今後は気を付けます。

『まったく!今回だけですよ!』

 は、はい。

 お、思いっきり怒られてしまった…クソッ!ヘルザースめ!もっと酷い目に遭えばいいのに!


「クソッ!コロノアめ!私からの通信を無視しおって!」

 本来、戦闘に参加することの無い筈のヘルザースが肘掛けを容赦なく殴ってる。俺的には、ざまあ見ろって感じだね。でも、もっと酷い目に遭えばいいんだ。俺なんか自分の使役魔人に思いっきり怒られたんだからな!

「閣下、コロノア閣下は随分と譲歩して下さっておられますぞ。」

 スーガだ。

 スーガも此処にいるべき人間じゃないが、どうにもヘルザースの野郎を抑え込む人間が他にいなかったみたいだ。

「わかっておるわ!だからこうして!ここに大人しく座っておるのではないか!」

 現代日本で言うところの内閣総理大臣が、一航空母艦の指揮者席に座って、戦場に出ると喚いているのって想像できる?

 うん、今、そういう状況。ね?馬鹿でしょ?この国の人間って。

「聖天第一連隊が接敵、戦闘が開始されました。」

「ムグッ!」

 操艦員の言葉にヘルザースが悔し気に唇を噛み締める。

「クッ!クルタス事件での汚名を雪ぐ、絶好の機会だというのに!」

 まぁだ、あの時の事を気にしてんのかコイツは。

 前線と国体母艦までの距離は約六十キロメートル、空気中であれば、光学兵器でも届かない。

「クソッ!コロノア!早々に対竜騎士部隊を投入せよ!」

 画面の向こう側で、ウンザリした顔のコロノアが応える。

『まだ早うございます。敵の出方を確かめてからでございます。』

「し、しかしだなぁ…」

「コロノア閣下」

 スーガがコロノアとの通信に割り込む。

『おう、スーガ殿、ヘルザース閣下をなんとかお諫めできぬのか。』

 スーガが目を閉じて頭を振る。

「ヘルザース閣下は陛下がご出陣なさると聞いて、居ても立ってもいられないのです。」

 コロノアが顔を顰める。

『まあ、お気持ちはわからんでもないが…しかし、行政院第一席のヘルザース閣下が戦場に出ておること自体がなぁ…』

「な!何を言っておるか!あのガキのことなど!某はなんとも思っておらぬわ!」

「照れ隠しでこのようなことを申されておりますが、陛下が戦場にお出でになられれば、仕舞いには、勝手に編隊を離脱し前線に向かうと思われます。ここは諦めて、最初から独立、遊軍扱いになさっては如何ですか?」

「て、照れ隠しではない!だから!某はあのガキのことなどなんとも思っておらぬと申しておるではないか!!」

『うむ、そうじゃの、その方が敵の出方を図るにも丁度良いか。では、スーガ、編隊を離脱し、好きに暴れて参れ。』

「き、貴様ら!某を無視するでない!」

 コロノアとの通信を終了させたスーガがヘルザースを無視して操艦員に向き直る。

「ジンライにあっては編隊から離脱、現在時から独立遊軍部隊として敵ジェルメノム帝国の竜騎士殲滅戦に向かう。戦闘速度前進。」

「スーガ!某は本当にあのガキのことなどなんとも思っておらんのだからな!」

 ジジイのツンデレ、ここに極まれり、て感じだな、まあ、俺的にはゾッとするが。


「敵砲射撃開始しました。」

 操艦員の言葉にコロノアの眉が引き締められる。

 霊子ビーム、荷電粒子、レールガンの実弾、レーザーとあらゆる射出兵器がジェルメノム帝国軍の竜騎士から発射される。

「威力測定、各砲の連射速度及び規則性を観測せい。」

「敵兵器の観測を開始します。」

 コロノアの言葉に従い、操艦員がコントロールパネルに指を走らせる。

 霊子ビーム、荷電粒子、そして、実弾は、神虫の霊子障壁が弾く。光学兵器であるレーザーは質量を持たないため、霊子障壁では弾くことができない。

 各国体母艦でシミュレートしたレーザーの進光、着光箇所を神虫に送信し、神虫がその進光箇所に移動して光学兵器誘導装甲で受けるのだ。

 霊子障壁に接触した物体はその速度、衝撃を神虫が感知する。そのデータを国体母艦に送信するようにできている。

「精霊砲、威力十五、霊子砲、威力十二、実弾、威力五十四、高圧集光線、威力三十三。」

 操艦員の言葉にコロノアが眉を顰める。

「威力低いな…連射頻度はどうなっておる?」

 威力に対する数値は相対的なものだ。

 トガナキノでは、各兵装をわかりやすく数値として設定している。国体母艦の各兵装は百で設定し、その国体母艦の各兵装に対して駆逐艦の各砲撃の威力は七十という数値で設定されている。つまり、国体母艦の兵装の威力数値を基準として、各兵装の威力を相対的に数値化しているのだ。

「連射頻度、実弾を除く各砲撃は毎秒三秒から四秒、実弾にあっては毎秒三十二秒から三十六秒です。」

 コロノアが左の眉尻を親指の先で擦り上げる。

「ふむ、連射頻度に重きを置いて、威嚇射撃と言ったところか。」

「現在の攻撃ですと、脅威度三未満です。」

 コロノアの独り言を操艦員が拾う。

「よし、各砲撃はジェルメノム帝国軍の威力数値にまで落として反撃、敵、防衛兵装を確認せよ。」

 本来なら、全力でぶっ放せばいいんだけど、俺が、殺すなって言っちゃったからなぁ、コロノアの爺様も敵に気を遣わなくちゃいけない。

 まあ、すまんが、ちょっと堪えて貰おう。

 前線では竜騎士同士の戦い始まっている。

 トガナキノの艦砲射撃の射線上から外れて、トガナキノの艦船に取り付こうと回り込みながら、あるいは回り込ませないようにと各竜騎士と戦闘機がドックファイトを展開中だ。

 ジェルメノム帝国の竜騎士は全機が二本の副椀を備えた格闘戦向きの機鎧だ。その形態からF型マイクロマシンのことをよく理解していると判断できる。

 恐らく搭乗者は二人か三人、つまり、奴隷の脳を複数個積載している。主となる装着者が竜騎士の操縦を行い、補助プログラム的な役割を担う脳が一人分、その補助プログラムが副椀を操作している。で、もう一人は周波数の異なる霊子を放出する。

 うん、全部で一人と二人分の脳だな。

 ジェルメノム帝国の竜騎士が両手に持っている盾と剣、この二種の武器はF型マイクロマシンで出来たトガナキノと同じ兵装だ。

 違うのは副椀だ。

 細く長い副椀が背面から回り込んで、肩の上から、脇の下からと縦横無尽にトガナキノの竜騎士を攻撃している。

 副椀とは言っても物を持つための腕ではない。

 本来、手がある筈の位置に発泡スチロールカッターのような物が取り付けられている。

 発泡スチロールカッターはコの字型のフレームにニクロム線等を張って、その金属線に電流を流して、発泡スチロールを熱で切断する物だ。そのコの字型のフレームが副椀の先に取付けられており、その間に蒼白い霊子が放出されている。ニクロム線の代わりを霊子が担っているのだ。

『霊子カッターだな。』

 イズモリが名付けた霊子カッター、その霊子カッターが、接触した竜騎士の装甲を切っている。

 ただ単純に霊子を放出している訳ではない。

 副椀を構成する装甲、フレーム、その霊子を放出する放出口まで、恐らく、恐らくは装着者の霊子で覆われている。

 しかし、副椀から放出される霊子は違う。

 副椀から放出される霊子は相対する竜騎士と同じ霊子だ。

 相対する竜騎士と同一の周波数を持った霊子。

 戦っている相手と同じ周波数を持った霊子。

 その霊子に分解命令を走らせていれば、相対している竜騎士の装甲を斬ることが可能だ。しかし、分解命令を走らせている霊子はマイクロマシン全てに分解命令を走らせる。そうなるとその霊子を発信している竜騎士その物も分解される。だから、分解命令を走らせた霊子を発信する竜騎士は、自分の竜騎士を守るために別の周波数の霊子を装甲に走らせなければならない。

 二種類の周波数を同時に発信させることのできる者は、恐らく、俺以外にはいない。俺でも、特別な条件下でなければ、別々に霊子を発信することはできない。純粋に、一人で二種類の霊子を同時に発信できる奴はいない。

 つまり、装着者とは別の人間が霊子カッターを作り出していることになる。

 だから三人だ。

 ジェルメノム帝国の竜騎士は無傷なのに対し、トガナキノの竜騎士は装甲がズタズタにされている。

 装着者の熟練度はトガナキノの方が上だ。

 ジェルメノム帝国の竜騎士が振るう大剣はかすりもしていない。副椀の動きもよく見切って装甲の表面しか傷を付けられていない。

 しかし時間の問題だ。

 敵の副椀が触れれば、トガナキノの竜騎士が振るう剣さえも切断されるのだ。

『問題は、どうやって霊子の周波数を検知特定し、変換しているのかだな…』

 盾じゃないのか?

『うむ、検知特定に関しては、剣が盾に、もしくは各装甲に接触した時点で検知特定できるだろうが周波数の変換も竜騎士にやらせているのか?』

 イズモリにわかんねえのに俺にわかるわけねぇだろ?

『お前には聞いていない、自問自答だ。』

 あっそ。

 で、それって問題なの?

『問題じゃない。』

 問題は、って言ったじゃねぇか。

『敵の竜騎士を効率的に叩く問題は、って意味だ。』

 ああ、そうですか。

『複数機で相手の竜騎士に対応させてみろ。』

 え?

『そうだな、三対一ぐらいで丁度良かろう。三機で同時に斬りかかるように指示を出せ。』

 しょうがねえな。あんまり口出すとコロノアのオッサンがうるせぇんだよ。

『良いからやれ。』

 わかったよ。

 俺は安寧城の総指揮ブリッジの通信回線を開く。

「コロノア爺様」

 俺の呼び掛けにコロノアが目を見開き、驚きの表情を見せる。

『へ、陛下!』

 慌ててコロノアが跪こうとするが、俺がそれを止める。

「爺様、いいよ、戦時下にそんな儀礼的なことしなくても。」

 コロノアが笑いながら立ち上がる。

「こっちからも戦闘状況を見てるが、確認したいことがあってな、それで、やってもらいことがある。」

 俺の言葉にコロノアの表情が引き締まる。

『何かお考えあってのことですな?』

「ああ、敵の竜騎士一機に対して、こっちは三機で当たらせたい、できれば、敵の竜騎士が、あの副椀で斬りつけてくるタイミングを狙って他の二機で斬りつけて欲しいんだがな。」

 コロノアが頷く。

『承知しました。では、後発の部隊にはそのように指示を出します。』

「それと、三機一組のチームの内、一チームを俺に貸してくれ。」

 コロノアの眉が持ち上がる。

『と、言いますと?』

「敵の竜騎士の分析をしたいんでな、さっき言ったことをやってもらいたいんだ。」

『成程…』

 そう言ってコロノアが少しばかり俯きながら考える。

『うむ、では、適任がおります。その者たちを陛下直轄チームとして派遣いたします。』

「おお、頼むよ。」

 戦闘空域は膠着している。

 数で勝るトガナキノ軍は、相手の出方をじっくりと見るつもりだ。傷付いた竜騎士は即座に新規投入された竜騎士と交代している。

 ジェルメノム帝国の竜騎士を破壊することはできないが、それでも、トガナキノの物量の方が有利だ。

 ジェルメノム帝国の竜騎士が、トガナキノの竜騎士を傷付けることはできても撃墜するには至っていない。

 延々と戦い続けなければならないのだ。

 戦っているのはロボットではない。

 人間だ。

 疲弊が決着させる。

 通信機が着信音を発する。

 俺は通信機の回線を開く。

 あっ

『お目通り感謝いたします!通信機によるご無礼、平にご容赦ください!拙者は!栄えある神州トガナキノ国軍、第三連隊〇六四八小隊所属!第三十四席のカンザス・ライドニクス・ゴートと申します!此度は神州トガナキノ軍統合幕僚長!コロノア閣下直々に国王陛下直属部隊の長となるよう拝命いたしましたことを謹んでご報告するものであります!』

 あのバカだ…

 ウロボロスを盗み出すときにいたあのキメラノイドだ。

 一騎打ちなんてことを言い出しやがったから、ヘルザースに降格しとけと言ったんだが、二十三席の中尉だったのに、ホントに降格されてやんの。

「お前か…」

 ウンザリした表情を隠すことなく思わず呟いちまったヨ。

『はっ?!』

 ライドニクスが驚いた顔で聞き直してくるがスルーだ。

『ご尊顔を拝し、光栄の極み、私、ブロス・タウゼンと申します。』

 ああ、コイツも憶えてるわ。

『お初にお目にかかります。私めはティーラー・ドラウニクスと申します。』

 なんだ?この二人はセット販売か?

『この二人、憶えてるのか?』

 ああ、二人とも元連邦捜査局の特別捜査班第五班だろ。

『本当に、お前は…自分のことを悪く言う奴のことはよく憶えてるな。』

 憶えてるよ。

 ブロスって奴は俺のことを、おっとろしい暴君だって言いやがったし、ティーラーは俺のことを、まともな思考回路じゃない、って言いやがった。 

『器が小っさいんだよ。』

 イチイハラ、小っさい言うな。

「ライドニクスが隊長か?」

『はい!拙者が隊長であります!』

「降格なのに隊長か。」

『は?』

「まあいい、三人は、今から俺の言う指示に従って、戦闘してくれ。」

『はっ、陛下、その前に、私から進言致しき儀がございます。発言のご許可を頂戴できますでしょうか?』

 面倒臭えなぁ。

「なんだよ?言ってみろよ。」

『はい、進言のご許可を頂き、ありがとうございます。拙者が思いますに、三機で一機の竜騎士に相対するのは些か卑怯に…』

「オメエ、死刑にするぞ?」

『精一杯!頑張って戦います!!三機で一機をボッコボッコのフルボッコにしてみせます!!』

 よし。

「ライドニクス、まずはお前が正面から仕掛けろ、他の二機は敵竜騎士の後方に回り込め。」

『承知いたしました!!』

 ライドニクスの竜騎士が霊子ジェットを全開にしてターゲットの敵竜騎士に突っ込んで行く。

 小細工も何もなし、真正面からのタックルだ。

 敵竜騎士は盾でそのタックルを防ぎ、霊子ジェットを全開にさせて、その座標で踏ん張ろうとするが、ライドニクスの竜騎士の方が出力は高いようで、敵竜騎士が押されている。

 敵竜騎士が副椀を肩口から伸ばし、ライドニクスの竜騎士の頭を狙ってくる。

『姑息!!』

 ライドニクスが叫びながらその副椀を剣で弾いて、離脱する。

「ライドニクス」

『はい!』

「さっきの副椀に斬られろ。」

『は?』

「もう一回言わせるのか?」

『し、承知しました!!』

 ライドニクスが顔を真っ青にさせて、再び、同じ竜騎士に向かって突っ込む。

 今度は敵も、先に副椀を前面に回し込み、ライドニクスのタックルに備えている。

 ライドニクスが軌道を変化させ副椀を避けて、敵竜騎士を蹴り上げる。

「おい。」

『も、も、も、申し訳ありません!』

 反射的に動いたんだろうな。

「ちょっと切られるだけでイイ。次は切られろ。」

『は、は、は、はい!』

 三度、ライドニクスが敵竜騎士に突っ込む。

 肩口から伸びた副椀がライドニクスの竜騎士に襲い掛かる。

 ライドニクスの竜騎士、その肩の装甲に霊子カッターがスルリと食い込み、削られるようにして肩装甲の一角が斬り飛ばされる。

 ライドニクスが敵竜騎士を弾き飛ばす。

 よし。

「ライドニクス、今度は格闘戦だ。組付け。」

『は、はい!』

 弾き飛ばした敵竜騎士をライドニクスが追う。

 剣を納め、敵竜騎士の副椀を掴みながら、右膝を敵竜騎士の顔に叩き込む。

 敵竜騎士はライドニクスとの間に盾を割り込ませ、剣を振るう。

 剣がライドニクスの腹部に当たるが、弾き返している。

 剣に霊子放出機能はないか。

『単純に、霊子量の問題だろうな。』

 よし、確認できたな。じゃあ、次だ。

「ブロス、ティーラー。」

『はい!』

『はい。』

 俺の呼び掛けに二人が応える。

「ライドニクスに、もう一回、副椀で切られるように指示を出す。切られる直前に敵竜騎士に接触しろ。」

『承知しました。』

『了解いたしました。』

 相手を蹴ろうとするライドニクスと斬ろうとする敵竜騎士、もみくちゃになっているが、ライドニクスは必死だろう。

「ライドニクス、二人と呼吸を合わせて、もう一回、切られろ。」

『は、はい!精一杯切られます!』

 うん、頑張れ。

 ライドニクスが二人と呼吸を合わせて敵竜騎士の副椀から手を放す。

 副椀がライドニクスの肩口に振り下ろされる。

「そこだ。」

 俺の声に合わせて、その一瞬にブロスの竜騎士が剣を振り下ろし敵竜騎士の肩装甲に接触した。

 ライドニクスの肩装甲がさっきと同じように斬り飛ばされる。

 違ったか。

『今度は盾で試してみろ。』

 了解した。

「ティーラー、今のブロスと同じタイミングで今度は盾に接触しろ。ブロスは少し距離を取れ。」

『了解しました。』

『承知いたしました。』

「ライドニクス」

『はい!もう一度切られます!!』

 うん、流石は体育会系、呑み込みが早い。

 一旦、離脱していた三機が敵竜騎士に迫る。

 ライドニクスは正面から、ブロスが後ろ、ティーラーが左だ。

 ライドニクスが突っ込む前にブロスが後ろから囮となって牽制する。

 敵竜騎士が振り返り、ブロスが距離を取る。

 ライドニクスが加速する。

 敵竜騎士が振り返った勢いを殺すことなく一回転、撫で切るようにして副椀を振り回す。

 今だ。

 俺の思ったタイミングでティーラーが突っ込み、盾と接触。

 敵竜騎士の副椀が音を立ててライドニクスの装甲に弾かれる。

『やはり盾か。』

 そうだな。

 盾に接触することでトガナキノ竜騎士の霊子を検知し、周波数を特定する。

 その作業をするのは人間じゃない、竜騎士だ。

 俺はオロチの中でイデアに呼び掛ける。

 イデア。

『はい。』

 各竜騎士に霊子の周波数変換コンバーターとプログラムが必要だ。

『了解しました。随時、帰還する竜騎士に応急的に設置いたします。』

 剣の刃部分だけでイイ、設置しろ。

『了解しました。』

 コノエ。

『はい。』

 あ?

 コノエ?

『コノエは、現在、私の代わりに気象コントロール作業に従事しております。』

 サエリ?

『はい、サエリでございます。』

 じゃあ、サエリ、トガナキノ周辺の戦場は確認できるか?

『はい、確認できます。』

 トガナキノとジェルメノム帝国、それぞれの竜騎士の識別は?

『できます。』

 よし、じゃあ、ジェルメノム帝国の竜騎士が発している霊子の周波数は検知特定できるか?

『できます。』

 よし、ジェルメノム帝国各竜騎士の霊子周波数を検知特定したら、各竜騎士をマーキングして、その情報をイデアに随時送り続けてくれ。

『了解です?で、それだけですか?』

 そうだけど?

『そっちに行く必要は?』

 ないけど?

『…了解しました。』

 イデア。

『はい。』

 サエリからそっちにジェルメノム帝国竜騎士各機の霊子周波数がマーキングされた状態で送られる。

『はい、来ております。』

 サエリ、仕事が(はえ)えな。

『お褒め頂きありがとうございます。で、そっちに行っても良いですか?』

 なんで?

『…いえ、イイです…』

 イデア、各敵竜騎士の霊子に周波数を合わせて、さっきの霊子周波数変換器に、お前が直接プログラムを送れ。

『了解しました、では、タイムラグを失くすために量子コンピューター、もしくはサエリとの同期リンクを申請いたします。』

 ああ、なんなら両方とリンクすることを許可する。

『あの…』

 サエリ?どうした?

『私がそっちに行けば、結構、タイムラグはなくなると思うんですけど…』

 イデア、そうなのか?

『距離は関係ありません。』

 じゃあ、来る必要はないぞ?

『イデア、あたしがそっちに行った方がタイムラグはなくなるって!』

『その必要はありません。』

『…』

 ま、まあ、そういうことだから、サエリ、そっちの方で頑張ってくれ。

『…はい…』

 サエリとの、なんだかよくわからないやり取りが終わって、すぐにイデアが行動する。

『サエリ及び量子コンピューターとのリンク完了いたしました。』

 よし、これで、準備は整った。

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