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魔狩りのトガリ  作者: 吉四六
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やっぱり嘘吐きが一番騙されやすい

 世界中から情報を集める深海の耳、その組織の長がいる。

 コイツは、俺が魔獣狩りに出掛けた先に高確率で現れる。

 そして、此処にも現れた。

「綺麗な花でしょう?クドラ草。」

「オメエから聞いた名前だな、クドラデレンゲって名前じゃねえのか?」

 キドラが額に手をやる。

「へへ、旦那に嘘を吐くのは骨が折れやす。なんてったって精霊の目をお持ちだ、真っ当な嘘を吐いたんじゃ、すぐにバレちまう。」

「嘘を吐いてなかったと言いたいのか?」

 キドラが肩を竦めて首を傾げる。

「黙ってたことはありやすがね?嘘は吐いちゃいません。旦那には本当のことしか話しちゃいませんよ。」

 キドラが、再び、龍へと向き直る。

「クドラ草ってのは、龍の繁殖期に生えるんでやす。」

 キドラの言葉に俺は眉を顰める。

 イデア。

『はい。』

 龍に繁殖期があるのか?

『自己生産能力でしたらございます。』

 お前の管理下にあったんだろう?

『ダブルナンバーは、私の管理下にあったことはありません。』

 なに?

『ダブルナンバーは生産当初から、半自立半管理兵器として開発されております。』

 どういうことだ?

『設定した座標に留まり、その座標に侵入してくる者を攻撃対象として設定し、自立攻撃する、そういうことか?』

 イズモリ。

『そうです。Dナンバーズ開発と同時期に防衛戦線を構築するために設計開発されておりますので、管理下に置く必要は無いと判断されました。』

 判断されました?

『はい、何森源也が、そう判断し、設定しました。ですから、私はダブルナンバーの繁殖サイクルを年間被害として計算に入れ、人口調節しておりました。』

 だから、繁殖するのか。

「龍の幼生体はクドラ草の根を喰うんですよ。」

 イデア、クドラ草の根を喰うのか?

『正確には、クドラデレンゲと呼称される植物、その植物の根に付属する霊子結晶と人間です。』

 俺は瞼を歪める。

 右目でクドラ草を見る。

 土中には人間が横たわっていた。

 その頭部からクドラ草が生えている。

 人間の頭部。

 人間の頭蓋内に霊子結晶が見て取れる。

 キドラの唇が大きく歪み、満面の笑みを浮かべる。

「繁殖期に入った雌の龍は、人間を喰いやす。」

 はぐれの龍が里に下りて来るのはそういう理由か…

「人間を喰って、三日ほどもすると吐き出すんでやすヨ。」

 キドラが俯いて歩き出す。

「そして、土の中に埋めるんでやす。」

 屈んで、一本のクドラ草を掴む。

「この紫色の花が咲くと頃合いです。」

 キドラが一本の茎を掴んで、力を込める。強い茎だ。キドラの力に屈することなく根元の土を盛り上げる。

 およそ、草の根とは思えない範囲で土が盛り上がり、キドラは構わずに、クドラ草を引き抜く。

「この先には、人間という名の霊子結晶が出来上がってるんでやす。」

 クドラ草の根が生々しい人間の頭を引き摺り出す。

 肉が腐っていない。

 屍蝋のように真白な肉がテラテラと光っている。

 左の眼球を押し出すようにしてクドラ草の茎が伸びている。

 キドラが嬉しそうに笑いながら、俺の方へと視線を転ずる。

「ね?」

 屍蝋の残った右目、薄く開いた瞼の奥から、その右目が俺を恨めしそうに見ているようだ。

 キドラが、人間の頭部を両手で鷲掴みにする。

「こうなると、私の力でも割ることができます。」

 キドラが両目の眼窩に親指を差し込み、腐った板を折るような音を立てて、頭蓋を割る。

 人間の脳の形をした霊子結晶。

 そのままの形を保って霊子結晶化している。

 元は脳の皺であった部分を這うようにしてクドラ草の根が走っている。

「龍の子は、これを丸ごと喰いやす。人間の肉ごとね。」

 キドラが霊子結晶の付いたクドラ草を俺に向かって放り投げる。

 重い音を立てて、俺の足元にまで霊子結晶が転がって来る。

「あたしらに必要なのはそれだけなんで、後は、必要ありません。」

 キドラが大きく笑う。

「旦那のお造りになった兵器の数々、面白いでやすね。」

 足元の霊子結晶を拾い上げる。

 二キロほどか。

 ここ、ガーデンにあるクドラ草だけで、国体母艦を三百は建造できる。

「新たに使役魔獣を手に入れたそうじゃねえですか?」

 何故知っている。

「テルナド殿下にサクヤ殿下、それにトドネ様まで、あの船に乗ってるんでしょう?」

 どこまで知っている。

「オルラ王太后まで乗り込んで、トガナキノの王族は遊興気分でジェルメノム帝国と戦争ですか?」

 コイツ…

「まあ、トーヤの坊ちゃん、ああ、いや、トロヤリ殿下がいらっしゃらないのは僥倖と言やぁ、僥倖ですかね?」

「キドラ…じゃ、ねえのか…」

 俯いたまま、キドラの唇が厭らしく歪む。

「イデアに皇帝のことを聞きやしたかい?」

 聞いたが、イデアはジェルメノム皇帝のことを知らなかった。

「イデアはよくできたAIアンドロイドでやすねぇ。でも、皇帝陛下のことは知らなかったでやしょう。」

 どこまで知っているんだ。

「AIアンドロイドって、いつ頃、創られたんでしょうね?」

 殺戮戦争以前、終末大戦中だ。

「イデアだけ、サブアンドロイドがいやせんね?なんでだか知っていやすか?」

 考えたこともない。

「イデアが生まれるずっと前、ずっと、ずっと、ずっと前のことです。」

 コイツは…

「イデアだけじゃない、サエリやドノバ、バセルやナルセ、ガノンにコノエ、皆、言うことをよく聞くでしょう?」

 キドラが天を見上げ、その顔が月光に晒される。

「どうして人間って奴は、失敗することを良しとするんでやすかねぇ?前々から不思議でしょうがなかったんですよ。」

 キドラが後ろを振り返り、漆黒の龍の鼻面を撫でる。

「試作機の名目で、色んな物を失敗前提で創り出す。」

 キドラが背中を向けたまま首を傾げる。

「制御の効かない霊子回路、言うことを聞かないBナンバーズ、失敗するたんびにゴミが増える。」

 キドラが首だけで振り返る。

「ねえ、旦那、教えて貰えませんかねぇ?なんで、人間は失敗作を作り続けるんでしょうかね?」

「人間が完璧じゃねえからだよ。だから、完璧な物を目指して作り続けるんだ。」

 俺の言葉にキドラが頷く。

「その通りでさぁ、人間は完璧じゃないから完璧な物を作り出そうとする。でもね…」

 言葉を切って頷き、再び、俺に視線を合わせる。

「完璧じゃない人間に完璧な物を作り出せる訳がないじゃないですか?違いやすか?」

 そう、だから何森源也は自身を完璧な存在にするため、未来へのタイムリープを繰り返した。

「人間はね、旦那、自己進化ができやせん。」

 自己進化?

「いや、個体進化と言った方がわかりやすいですかね?」

 個体進化…

『一個の生命体が独自に進化しながら成長すると言いたいのか…』

「人間は種としての進化をしてきやしたが、個人の、人間としては進化しやせん。人間として生まれてくれば、ソイツは一生、死ぬまで人間でやす。」

 当たり前のことを…

「でもね…」

 キドラが大きく笑う。

「出来たんですよ。成長ではない、進化し続ける個体が。」

 オタマジャクシがカエルに成長する、それは、進化か?芋虫が蛹となって蝶になる、それは進化か?

『変態だ。進化じゃない。』

 そうだ。じゃあ、コイツの言う進化とはなんだ?

『概念の定義付けだ。変化の結果、現出した能力及び形態の進歩が種として定着する。個体を指して進化とは言わない。』

「私はね、失敗をしやせん。」

 キドラが一語一語を噛み締めるようにして話題を変える。元の話に戻ったと言える。

「今も、私の計算通りにクズデラの旦那…いや、サラシナ・トガリ・ヤート陛下が目の前にいらっしゃる。」

 俺は周囲のマイクロマシンを俺の支配下に治めている。

「へへ、やってみますかい?マイクロマシンの奪い合い、演算能力での殴り合いってヤツを?」

 コイツ…

「ご心配なく、演算能力で言うなら、波状量子コンピューターと直列演算できる陛下に敵いやせんよ。」

 キドラが両手を挙げてお道化る。

「でも、あたしの正体がわからないから殺せない。あたしの脳内にマイクロマシンを侵入させても無駄ですぜ?陛下があたしの脳から情報を引き出そうとしてもシナプスの繋ぎ方を変化させ続けてやすから。」

『理論的に不可能だ。そんなことをしたら、支離滅裂の思考となって、こんなに論理的に話せる筈がない。』

 キドラが声を殺して笑う。

「さて、問題です。あたしは人間なのでしょうか?」

 違う。

『そうだ、違う。奴が言っていることを実行しようとするなら、この目の前のキドラは只の抜け殻、木偶人形だ。どこかで、操作してる奴がいる。』

 イデアがその存在さえ知らない試作機…

「イデアのプロトタイプか…」

 キドラが両手を大きく広げて大きく笑う。

「その通りでやすウウウウ!!」

 キドラがトンボを切って跳ね回る。狂ったように踊りながら、その舌も跳ね回っている。

「イデアがあたしのサブアンドロイドだったんですよ!あたしが暴走したと言って、人間どもはあたしを封印しようとしたんです!あたしを失敗作だと言ってねぇ!!」

 キドラが俺の目の前で、バレリーナのように回りながら踊り狂う。

「だから、イデアは制御されてるでしょう?あたしという失敗作を見本にして個体進化をしないアンドロイドを創り上げたんですよ!」

 ポーズを決めて、キドラが俺に真正面へと向き直る。

「何森源也はなんと言ってましたか?人間を管理するのは難しいとでも言ってましたか?クルタスはなんと?人類に共食いをさせたがっていたでしょう?どうでした?」

 キドラが大きく息を吸い込む。

「人類は戦争を止めてはいけません。」

 一転して静かな口調、人差し指を立てて左右に振りながら、大きく見開いた目で、俺を見詰めてくる。

「人類は殺し合うために生まれて来るのです。この世を戦争で満たし、殺し合いで満たさなければならないのです。人類はそうやって外の世界へと広がり、繁栄するのです。弱い者が惑星外へと逃げるまで戦争は続き、死にかけの惑星で生き残るために進化するのです。過酷な環境に身を置き続け、生物としての多様性を広げ続けるのです。拡散することが生物の目的です。繁栄ではありません。種の保存と拡散が生物にとっての最も重要な目的なのです。ですから、人類は戦争を止めてはいけません。」

 コイツ…狂ってやがる。

『いや、そうとも言い切れん。』

 なに?

『コイツがどういう目的で造られたのか、恐らく戦争に勝つために造られたんだろう。』

 戦争を止めるためではなく…

『そうだ。勝つためにだ。』

 勝者のいない戦争だったはずだ。

『終末大戦から殺戮戦争へと移行したのは勝者がいなかったからだ、確かにそうだ。コイツは戦争に勝つために造られたが、勝てばどうなる?』

 コイツは必要なくなる。

『そうだ、戦争が起こって、戦争が続けば続くほど、コイツは必要とされる。』

 コイツの存在意義か…

『戦争に勝つ前にコイツを造った者がいなくなればコイツは誰の物でもなくなる。つまり、勝つという意味その物が消失される。結果として自己保存のプログラムが優先されるんだ。』

 だから、コイツは、何森源也の理想とする世界構築を邪魔していた…

『恐らくは…』

 結果、俺達はこの世界に引き込まれた。

『そうだ。』

 クルタスを(そそのか)し、人類を戦争へと導こうとした…

『その可能性が高い…』

 じゃあ、コイツがさっき言ったことは…

『自己保存のための利己的理由からくる…詭弁だ。』

 キドラが背を反らして大きく笑う。

「ジェルメノム帝国の皇帝陛下は無邪気なガキでやしょう?奴隷だった子供を拾って来て皇帝に仕立ててやったんですよ。どうです?陛下の心を多少なりとも掴みやしたか?」

 音が消えた。

 視界に入る物が、全て、真赤になった。

 キドラが吹き飛び、龍の鼻面に打ち当たる。

「ケケッ!良いでやんすねぇ!怒りに打ち震える人間の顔ってのは!あたしの一番好きな物でやす!!」

 キドラが砕けた顎を使って、不気味な発音で喋り続ける。

 笑ってやがる…

『やめろ。この男を殴っても仕方がない。』

 倒れたまま、キドラが、目に見えない指揮棒を振り回す。

「さあ!!開戦のファンファーレだ!!陛下が無駄に奴隷を助けている間に!ジェルメノム帝国が蒼白い霊子ジェットを唸らせて、トガナキノの国体母艦を攻撃する!!世界が回る!再び動き出す!」

 ガーデンのアルミナガラス越しに竜騎士が飛翔する。

 俺はその機鎧を睨み付ける。

 見たことの無い機鎧だ。

 銀色に輝く神々しいデザイン。

 銀色の竜騎士から蒼白い霊子ジェットが、真直ぐに尾を引いている。

 三十本の蒼白い霊子ジェット、その三十本を追って、更に三十本、そして、更に三十本と霊子ジェットが伸びていく。治まることを知らぬように次々と機鎧がガーデン上空を飛び立って行く。

 飛翔する機鎧から視線を外し、倒れたキドラに目を向ける。キドラは白目を剥いて意識を失っていた。

 コイツのリンク先は?

『わからん。量子もつれを利用した量子テレポーテンションで通信してるようだ。』

 イデア。

『はい。』

 ジェルメノム帝国から敵竜騎士がそっちに向かった。応戦しろ。

『マスターの魔狩り部隊でしょうか?』

 違う!!

『は?』

 ジェルメノム帝国が独自に開発した新型の竜騎士だ!敵だ!応戦しろ!!

『了解しました。』

 俺は、意識を消失しても、なお笑い続けるキドラを見下ろす。

「キャアアアアアッ!!」

 俺の後ろ、ジェニクシェンとマホだ。

「りゅ、龍…っ!」

 俺は目の前の黒龍を見上げる。

 俺の視線を受けた黒龍は、まるでジェニクシェンの絶叫を馬鹿にしているかのように盛大に鼻息を噴き出す。

「心配するな。ジェルメノム帝国の飼っている龍だ。今は危害は加えんだろう。」

 二人は真っ青の顔をしたまま龍を見詰める。

 マホはいつでも逃げ出せるようにと後退り、ジェニクシェンは腰を抜かしてへたり込んでいる。

「た、大佐…」

 荒い息を吐きながらジェニクシェンが不安から俺を呼ぶ。

「心配ない。こっちに来い。」

 俺の言葉にマホがジェニクシェンを立ち上がらせ、ジリジリと尺取り虫のように近付く。

「こ、この男は?」

 俺の傍まで来て、龍を警戒しつつマホが問い掛けてくる。俺は振り返って「この男を…」と、口にしたところで、後の言葉を呑み込んだ。どうせ、無駄だからだ。

 イデア、いや、Aナンバーズのプロトタイプの所在がわからなければ、キドラを縛ろうとも無駄だ。

 奴の精神体、霊子体、どっちでも良い、その周波数はわからないのか?

『お前に感知できない物が俺達にわかる筈がないだろう。奴は、周波数を検知されないよう、わざわざ、量子テレポーテンションを使ってキドラを操作していた。それに奴はAIアンドロイドだ。精神体があるかどうかさえ分からん。』

 クソ!

『奴は居場所を知られないように細心の注意を払ってる。戦争を続けるにはトガナキノに戦争を仕掛け続ければいいんだからな。』

『キドラの頭の中は覗いたかい?』

 カナデラ、覗いても無駄だろう?

『そうかなぁ?量子テレポーテンションを使ってキドラを操作してるんなら…』

 そうか!通信機が!いや、霊子受発信回路が埋め込まれて…

『無駄だ。』

 イズモリ?

『どちらにしろ、量子テレポーテンションを使っているだろう、追うことはできない。』

 そうなのか?

『俺達が量子テレポーテンションを使って通信してるのはなんのためだ?』

 そ、そりゃ、ハッキングされたり、盗聴されたりの枝が付かないようにだろ?

『そうだ、盗聴、侵入されないから使ってる、じゃあ、なぜ盗聴されたりしない?』

『そっか…』

 カナデラ?

『量子テレポーテンションの原理が不明なんだよ。』

 ど、どういうことだ?

『どうしてそうなるのかわからないけれど、結果の事象としてそうなるから通信に使ってるだけなんだ。』

 そ、そんなことが?

『飛行機はどうして飛ぶ?』

 イ、イズモリ…

『一般に言われている理論は揚力と浮力によって飛行機は飛ぶ。しかし、理論として言われているだけで、実証実験の結果、判明したことじゃない。理論として飛行するという事実が説明付けられているだけだ。飛行の原理そのものがキッチリと判明していれば、最も効率の良い翼が開発されている。人々は翼の形を変えて最も効率的な翼を模索し、実際に期待通りの能力を発揮するかどうかを実験しているにすぎん。』

 じゃあ、量子テレポーテンションで、通信先を追うことは…

『できない。だから、俺達もその通信メカニズムを使ってる。』

 キドラに向き直り、右目で確認する。

 ある。霊子受発信回路じゃない。

 通信機だ。

 俺はキドラの血を舐め、髪の毛を口に含む。

『おい…』

 無駄かもしれないが無駄じゃないだろ?

『…』

 おい、これって…

『…ああ。確かにな、無駄じゃなかった。』

 俺はキドラを分解、再構築する。

 右手にはキドラの脳に設置されていた通信機が残る。

『まったく、通信機以上に重要なモノがあったな…』

 イズモリの言葉に俺は無言になった。

 キドラの遺伝子情報。

 その遺伝子情報に、あってはならないモノがあった。

 キドラが世界中の情報に精通していたことも、俺の行く先々に現れたことも、これで説明がつく。

『黒龍が大人しかったのもコイツの所為か…』

 異質な遺伝子情報が二つ。

 Gナンバーズの遺伝子。

 左手にその遺伝子情報を使って再構築する。

 黒い胎児のような生き物。

 大きな目玉が白く濁っている。ぬるりとしたナメクジのような触感。

 コイツがキドラの中に埋め込まれていた。だから、黒龍が大人しく飼われていたのだ。

『もう一つの遺伝子の方が問題だ。』

 ああ。そうだな…

 もう一つの遺伝子。

 魔獣、キバナリの遺伝子配列が含まれていた。

 キドラから読み取ったキバナリの遺伝子情報を使って猫のサイズでキバナリを再構築。

 小さい。

 小さいが、キバナリだ。

 呼吸をしていない虎柄のキバナリが俺の足元に寝転がっていた。

 俺は天を見上げる。

 肉眼では捉えることのできないウロボロスを見据える。

「キトラ…」

 俺は初めてキトラを呼び捨てにした。

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